KSC マカロフ PM GBB レビュー
〈2017.06.10.PMG追加 加筆〉

レビュー

実銃についての簡単な説明

マカロフ・ピストル 旧ソ連での名称は「Pisutolet Makarova(ピストレート マカロバ)」省略して「PM」と呼ばれるオートピストルは、1933年に正式化されたトカレフTT33の後継ピストルとして戦後開発が行なわれ、1951年に制式化されたと言われています。

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開発に当たっては、トカレフTT33が7.62mm×25弾がドイツ軍の9mm×19弾よりもストッピングパワーが低い事に対する対策と、将校用ピストルとしてさらなる軽量コンパクト化、合わせて高い命中精度が要求されたと言われています。

その結果として、第二次大戦中にドイツで開発されたワルサー ウルトラ用9mmウルトラ弾(9mm×18)をベースに開発された9mmマカロフ弾を使用する中型のストレート ブローバック オート ピストル(命中精度を上げるためにバレル固定式を採用)として完成されました。

分解方法などワルサーPPやPPKの影響を受けている部分も多いですが、内部構造を見る限り過去に言われていたように単なるデッドコピーでは無く、独自設計によるものです。

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当時のソ連製兵器に共通する部品数の削減や軽量化を重視し、ハンマーやトリガーに独立したピンを備えていません。その分個々のパーツそれぞれの形状が複雑化して製造に手間が掛かるものとなっています(後にロストワックス工法の導入で製造も簡略化されています)。

マカロフ・ピストルは旧ソ連以外にも旧東ドイツ、ブルガリア、中国で生産され、旧ソ連崩壊後もロシアのイズメック社やブルガリアのアーセナルCO,中国の中国北方工業公社(ノリンコ)で現在も民間市場向けに生産されています。

KSC マカロフ PMについて

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(左より、CAW ワルサーPPK、KSC マカロフ PM、KSC トカレフTT33)

KSCがモデルアップしたのは75年製の旧ソ連製のマカロフ・ピストル後期型で、小型指掛けのセフティレバーと大きくなったスライド上のセフティ用の溝が、後期型の中でも初期モデルの特徴となっています。

サイズ的には参考にしたと言われるワルサーPPKと、旧制式拳銃トカレフTT33との中間の大きさで、サイズ自体にマカロフ・ピストルの目指したポジションが表れていると思います。

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製品パッケージはトカレフTT33と同じデザインの色違い。これを見る限り商品名は「PM」なんですね。

KSCが表示している「マカロフ PM」は「PM」だけだと分かり難いので敢えて使っているようですね。今回のレビューの中では二重表記っぽく感じるので,以降「マカロフ・ピストル」で統一します。

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パッケージ内部は、こんな感じで発泡スチロールの緩衝材もマカロフ・ピストル専用のようです。スライド前部に若干余裕があるので、サイレンサーバレル付きモデルとかのバリエを期待してしまいます。

HK45あたりから、スライドに貼られている「MANUFACTURED BY KSC JAPAN」シールの糊が綺麗に剥がせるようになったのは、隠れた嬉しい改良点ですね。以前はシールが剥がれたり糊が残ったりで、些細な事ながら超面倒でした。

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刻印については、スライド上の「ЛТ(ペーテー)1285」は製造番号で、KSC マカロフ・ピストルでは共通になっているようです。

フレームの「ХШ(ハーシャー)0028**」はKSCのマカロフ・ピストルの製造番号で個体ごとに異なっています。当然、実銃ではフレームとスライドの製造番号は同じものになります。

「マルに△」マークと「1975」の刻印は、旧ソ連のツーラ造兵廠1975年製造を表しています。

折角キリル文字の刻印を入れるならアルファベットっぽくない文字を選んで欲しかったと思いますが、フレーム文字はアルファベット書体をそのまま使った感じなのは、連番にする際のコストダウンかな?

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セフティレバーは上に上げてセフティON、下げてOFFとなるのはPPK等とは逆で最初は戸惑いますが、セフティOFFにする際は、慣れてくるとガバメント等と同じ動きなのでやり易い気がします。

ハンマーコック時にセフティをONにすると、ハンマーがハーフコック位置までデコッキングされます。マカロフ・ピストルはリアルライブオペレーション機構のはずですが、この時スライドを引いていなくてもダブルアクションでトリガーを引くと発射されるので注意が必要です。

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また、ハンマーダウンした後に指でハンマーをハーフコック位置にして、セフティを一旦ONにした後にOFFにすると、何故かハンマーダウン状態にデコッキングします。この時ダブルアクションでトリガーを引いても発射はされません。

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コックしたハンマーを、セフティレバーを使ってデコッキングすると、スライドのハンマーブロックの出っ張りが下がり、ハンマーに当たって前進を止めます。

トリガーを引ききったときはハンマーブロックの位置は変わらないので、ハンマーの凹部にハンマーブロックの出っ張りが入って、ハンマーがバルブを叩く事が可能になります。

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スライドを引いた感じでは、ほぼフルストロークのようです。GBBに関しては作動重視なのでアレンジもありだと思っていますが、きちんと作動するフルストロークなら歓迎です。

この状態でバレルとダストカバー部に栓を挟めば、栓抜き代わりになると最新の専門誌の記事で読みましたが、予想外すぎますね。本来はスチール製だから出来ない事も無いでしょうけど。

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銃口部から見ると、スライドの左右と下側がかなり肉厚になって,下ぶくれ状態なのがわかります。ワルサーPPK等が使用する9mmショートよりも9mmマカロフの反動が強い分、スライドを肉厚にして重くする必要があるんでしょうね。

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実用性重視の旧ソ連製銃器にしては珍しく、スライド上面にワルサーPPKと同じような波形のセレーションが刻まれていますが、装飾製のある意匠は元々将校用のピストルとして開発された名残なんでしょうね。

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スライド右側は刻印一つ無いのでシンプルすぎる感じです。小さめのエジェクションポーから見えるチャンバー部は分割されているように見えますが,これは実銃も同じ仕様です。

エジェクターは別部品となっているので、かなりリアル。バリエでエジェクターの形状が異なる中国製マカロフ(59式)が作れますね。

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(右側は実銃用グリップ)

右側の実銃用グリップのように、旧ソ連製のグリップは星マークの周りの円が二重線になっていますが、KSCのマカロフ・ピストルでは一重線なので、立体感がありません。色目はよいのですが、実銃のようなベークライトっぽくないので、ちょっと残念なデキです。

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グリップは後ろからスクリュー1本で止めるマカロフ・ピストル特有のもの。KSCはこのグリップを止める、頭が星形の特殊なグリップスクリューの形状まできちんと再現しています。

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マガジンキャッチはボトムタイプですが、一般的なマガジン底部を抑えるのではなく、マガジン後部の凸部を抑える形式です。実物のプレスマガジンで考えると加工が無駄に増える気がしますが、何かメリットがあるんですかね。

ちなみに、マガジンキャッチが固くてマガジンが抜けない事例が挙がっているようですが、この個体は最初から問題ありませんでした。

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(左:KSC トカレフTT33マガジン、右:マカロフ・ピストル マガジン)

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(上下ともマカロフ・ピストルのマガジン)

マカロフ・ピストルのマガジンは想像していた以上に小さく、薄くてGBBには不利と言われていた、同社のトカレフTT33マガジンよりも縦横とも小さく、BB弾は1列10発しか入りません。

KSC得意のマガジンフォロアを下げて固定する機能が付いているので装弾自体は楽ですが、フル装弾10発したときのマガジンフォロアの位置が固定位置と近いので、フル装弾で予備マグを持ち歩くときは1発少なくした方が無難そうです。

次は簡単に内部構造をみてみます

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マカロフ・ピストルの分解はワルサー PPKのようにトリガーガードをフレームから浮かして、スライドを後方に引いてスライド後端をフレームレイルから上方に外し、前方に抜き出します。

実銃も同じ分解方法なので、ワルサーPPKに最も影響を受けているところでしょうね。

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固定バレルの基部は、亜鉛ダイキャスト製でかなりの剛性感があります。内部構造は実銃を良くコピーしていますが、スライドストップの形状が大きく異なっています。

実銃はスライドストップの軸がフレーム後方にあって、スライドストップの前部が上に上がるようになっていますが、KSCでは軸に前方に変更して、スライドストップ後部が上がってスライドを止めるようになっています。

これはBB弾用フォロアで、確実にスライドストップを作動させるためのアレンジだと思われます。

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マカロフ・ピストルには金属パーツを使った、スライドノッチの削れ対策は施されていませんが、⑴スライドストップをノッチの広い面で受けるような構造になっている事、⑵スライドストップの角の部分が丸められている事で、削れ対策になっているようです。

もっともノッチ自体がスライドの内側にあって目立たないという事が、一番の対策になっているのかもしれません。

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スライド後部のブリーチ部分はブローバック用シリンダーが入っている所ですが、セフティレバーがあるため、約28mmの長さしかありません。このスペースでスライドを約36mmも後退させる事が出来るのか不思議です。

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余談ですが、今回KSCロゴはスライド内部のエジェクションポートの反対側にあります。スライドオープンしているときにエジェクションポートから見えるようになっています。

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グリップは後部のグリップスクリューを外して、フレームから後ろに抜き出しますが、かなりキツく嵌まっています。グリップ内側に引っかかる突起等はありませんが指だけで外すのはほぼ不可能なので、木片などを使って、前方から少しずつ叩きながら外していくしかないようです。

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フレーム形状は心配なほど細く肉抜きされて、かなりリアルに作られています。HW樹脂なので強度的には不安です。最近ではABSよりも強度があるHW樹脂もあるそうなので、大丈夫と思う事にします。

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ハンマーSP(スプリング)を外してみたら、何とも複雑な形状です。板バネを使っているのも驚きですが、これ一つでハンマーSP、トリガーSP、マガジンキャッチを兼ねています(KSCのマカロフ・ピストルの場合はもう一つ機能がありそうです)。

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左:実銃用グリップ、右:KSCグリップ)

実銃用グリップが装着できそうか確認してみたところ、内側の形状が全く異なる事が分かりました。ここまで形状が異なると無加工で装着するのは不可能ですね。

フレームに強度を持たせた結果、グリップの内部の出っ張りが少なくなっているようなので、実銃用グリップの内側を加工して取り付けるしか方法は無さそうです。

実射についての簡単なコメント

150発ほど撃ってみた限りでは、マガジンが小さくスライド内のシリンダー容量が取れない形状の割に作動は良好です。一部で言われているような「シアの動きが悪くトリガーを二度引きしないとハンマーが落ちない」というような不具合はこの個体では発生しませんでした。

マガジンが冷えるとスライドの動きが悪くなりますが、室温程度に暖まっていれば最終弾発射後にほぼホールドオープンします。これは装弾数を10発と少なめにしていることが、良い方に影響していると思います。

最近のKSC製品らしいフラットな弾道なので、集弾性も悪くは無さそうです。

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弾速は0.2gBB弾使用時で61m/s前後なので、多少低いものの他社のGBBと同レベルです。(室温21℃ フロン134a&東京マルイ0,2g BB弾使用)

▼KSC マカロフ・ピストルの実射動画はこちら

バリエーションモデル マカロフPMG
(2017.06.10.加筆〉

2017年 マカロフPMの発売から2年経って、初のバリエーションモデルが発売されました。

バリエーションと言ってもモデルバリエーションでは無く、イスラエルのアクセサリーメーカー「FABディフェンス」社が発売している実銃用グリップを付けた、メーカー製外装カスタムといったところです。

特徴的なのがポリマー製のグリップで、人間工学的に握りやすい立体形状になっている上にテール部分が延長されてハンマーバイトを防ぐ仕様になっています。

また、グリップ左側上部にマガジンキャッチレバーが新設され、片手でマガジンキャッチが可能になっています。後付けなのでレバー自体がマガジンボトムのマガジンキャッチの延長レバーになっていて操作に力がいる上に、グリップをずらさないと操作しにくい位置にあるのが残念です。

またトリガーガードが後期タイプによく見られる直線的なものになっているのも、PMGの特徴です。

ベースとなった「マカロフPM」自体が後期生産タイプだったので、更に後のモデルということになりますが、フレームにある(a)の「旧ソ連のツーラ造兵廠1975年製造」刻印と、スライドにある(b)の製造番号「ЛТ(ペーテー)1285」が変わっていません。

PMG単体で考えると間違った刻印では無いのですが、配慮して欲しかった部分です。もっともバリエーションでは無く少数生産カスタム品と考えれば妥当なところかもしれません。

実際にグリップしてみるとオリジナルモデルよりも遙かに握りやすくなっています。作動面もプルーフされているので、快調なBLKを楽しめるモデルになっています。

反面「FABグリップ」の取付にかなりの調整が必要だったようで、グリップ部分が分解不可になっています。普段のメンテに分解が必要な部分ではありませんが、構造的に気になりますね。

マカロフPMGの実射性能は、基本マカロフPMと変わりありませんが、スライドオープン時にBB弾を装填済みのマガジンを入れると、ほぼ100%スライドがクローズします。

スライドキャッチレバーのかかりが弱いためと思われますが、スライド閉鎖とともに自動でチャンバーに装弾されるので、リアルじゃないけどマガジンを交換しながら連射するのには向いています。

マカロフPMGの実射動画はこちらをクリック
(2017.06.10.加筆〉

最後に(サマリー)

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マカロフ・ピストルを初めて詳しく知ったのは、1982年4月号の月刊GUN誌の記事だったので、今から30年以上も前でしたね。最近までトイガンとしてモデルアップされる事は無かったので、長い間、幻のモデルみたいなものでした。

国内トイガンとしては初の量産モデル(GUNくつ王さんのモデルガンもありましたが)ということで、久しぶりに興味津々のモデルでした。外見や作動も及第点だったので、無加工で実銃グリップさえ付けば文句なしでしたね。

最近のトイガンは現代ポリマーオートばかりなので、オールドモデルや旧東側モデルに魅力を感じますね。現在の合理性とかローコストとは関係ない時代の銃の方が、未知の興味をそそるってことでしょうか。

参考資料

・月刊GUN誌 1982年4月号
・月刊GUN誌 1992年7月号
・月刊GUN誌 1998年7月号
・月刊GUN誌 1998年8月号
・月刊GUN誌 2001年3月号
・月刊GUN誌 2003年4月号
・GUN Professionals 2015年 3月号