SIG AIRSOFT(VFC)SIG M17 GBB レビュー

レビュー

実銃メーカーのSIG社がトレーニング製品の位置づけで展開を始めたのがSIG AIRSOFTラインです。そのAIRSOFTラインの第一弾が、アメリカ軍に制式採用されたSIG M17 GBBです。そのSIG M17 GBBを、模型としの再現性とエアソフトガンとしての作動性の両方を見ていきたいと思います。

実銃についての簡単な説明

2015年に始まったアメリカ陸・空軍による「XM17 MHS:Modular Handgun System(モジュラー ハンドガン システム)トライアル」の結果が出たのは、2年後の2017年。選ばれたのはSIG社のP320MHSで、市販のP320にアンビサムセフティやドットサイト用のカットアウト、ローデットチャンバーインジケーター、21連マガジンなどの改良を施したものでした。

P320の特徴は、金属シャーシで一体化されたトリガーアッセンブリーをフレームとした構造で、仕様の異なるフレーム状のポリマー製グリップパーツやスライドユニットを組み合わせることが可能になっています。

言い換えれば、一つのトリガーアッセンブリー(フレーム)をベースに、用途に合わせてコンパクトタイプやフルサイズにする事が可能な仕組みを持ったハンドガンということになります。

最終的にP320MHSをベースにM17として正式化され、アメリカ陸軍が20万丁、空軍が13万丁、海軍がコンパクトモデルのM18を6万丁、海兵隊が3.5万丁をオーダーしたと言われています。

採用から1年経って市販モデル P320-M17が発売されると同時に、暴発問題が起きましたがシアーの一部改良によって現在はこの問題は解決したとされています。

SIG AIRSOFT ラインについて

海外ではエアソフトガンがサバイバルゲーム等のホビー需要の他に、実銃の練習用等の新しいニーズが広がってきたのを受けてフランスのCybergun社やドイツのUMAREX社が実銃メーカーのエアガン用ライセンスを取得して全世界に販売する動きが加速しています。

その中で2019年に発売されたSIG M17 のエアソフトガンの発売元は 実銃メーカーのSIG社。そのラインナップの中のプロ用トレーニング製品の位置づけです。

実銃メーカーの作ったエアソフトガン(開発・生産は台湾のVFC社とされています。)が手に入るのということ自体、正式ライセンスモデル以上にワクワク感があります。

国内でのSIG社(SIG AIRSOFT ライン)とのライセンスはライラックス社が取得したようなので、今後はライラックス版として国内販売されるモノに一本化されていく事でしょう。

SIG AIRSOFT(VFC)SIG M17 GBBについて

パッケージはN式と呼ばれる一枚紙から組み立てるローコストタイプのもの。サイズも本体が収まるギリギリのサイズ。マットブラック地にM17の画像と商品名が印刷されています。全世界共通パッケージのようですね。

パッケージ内には本体(実際はビニールに包まれています)と、左下のブラインドボックスの下に、マガジン、取説とHOP調製ツールが入っています。

同じVFC製のグロックシリーズのパッケージと同じデザインです。

左のパーツがHOP調製ツール。右の取説は英語、スペイン語、仏語、独語の4カ国語バージョンが一冊になったもの。内容は図入りで、最初のページに大きく注意書きがあるのは、訴訟対策でしょうね。

後は各部の名称と基本操作(マガジンへの給弾、サイティング、セフティ等)と簡単なメンテと注意書き程度。日本のエアガンのようにパーツ表などはありません。

それでは本体細部を見ていきます

本体カラーはサンドやタンというよりも黄茶色系のコヨーテタンカラー。本家が監修しているだけあって、画層や写真で見る実銃のカラーと比べても違和感の無い色目です。

21連タイプマガジンを外すと、スライドに対してグリップが短くバランスが悪く感じます。

スライド刻印は「SIG SAUER」のブランド名(現在の社名はSWISS ARMS Neuhausen)モデル名の「M17」。P320の刻印が入っていないのは、アメリカ軍に納品されたミリタリーモデルを再現しているということでしょう。

トリガーやテイクダウンレバー等の操作系パーツは、M17の初期納品分では本体と同系色のコヨーテタンカラーでしたが、2019年あたりから仕上げの仕様変更によってコマーシャルモデルと同じブラック仕上げになっているので、間違いではありません。

小型のセフティレバーは小さくて使いにくいかと思ったら、それ程でもありません。動きが若干硬い気もしますが、使っているうちに軽くなりそうです。

グリップにも「SIG SAUER」のブランドロゴが入っています。やっぱり個々にロゴが無いとデザイン的に締まりません。グリップはフィンガーレストもないので握りやすく、滑り止めテクスチャーも良い感じに手にフィットします。

グリップ後部にはグリップサイズの「M」の印が入っています。モジュラーフレーム構造なので、グリップサイズを変えるにはフレームごと変える必要があります。当然別パーツのグリップ(フレーム)は付属しません。

軍用銃らしくランヤード用の穴もしっかり再現されています。

トリガーガード下には等のエアガンオリジナルの注意書きと生産国「MADE IN TAIWAN」のプリントが入っています。内容は以下の通りですが、無論、実銃のM17にはこのようなプリントはありません。

「MISUSE OR CARELESS USE MAY CAUSE SERIOUS INJURY OR DEATH.(誤用または不注意な使用は、重傷または死亡の原因となる可能性があります)」

「BEFORE USING READ OWNER’S MANUAL AVAILABLE FREE FROM SIG SAUER.(使用前に、SIG SAUERから無料で入手できるオーナーズマニュアルを読んでください)」

マガジンベースには「SIG」のロゴマーク。個人的には「SIG SAUER」と「SIG」ブランドのロゴの違いが分かっていません。以前は「SIG」社とブランド名の「SIG SAUER」の違いだと思っていたんですが、現在はブランド自体を使い分けているようです。

チャンバー部には「9mm×19」の口径表示が。フレームのトリガーアッセンブリーの金属シャーシ部分には実銃と同様「19FV0621」のシリアルNOが入っています。この「19FV0621」は生産ロットごとに違っているようで、2019年6月21日生産という意味かもしれません。

セフティレバー、スライドストップレバーはアンビ対応です。

マガジンは21連タイプのロングタイプが付属します。ダイキャスト製のボディには左面に「9mm」の口径表示や右面(反対側に)残弾確認孔がモールドで入れられています。

BB弾給弾レイルはマルイ同様、レイル溝の下側からBB弾を流し込めるタイプですが、フォロアーの出っ張りが少ないのでフォロアーを爪で押さえるのに苦労します。

マガジン後方を見ると、マガジンボトム部分で延長された作りになっているので、将来的に17連マガジンや、それを使用したセミコンパクトタイプのM18の展開が考えられている用です。

次に簡単に分解してみます

通常分解は、スライドを引いてスライドオープンをさせてから、マガジンを抜いテイクダウンレバーを回せば、前方にスライドが外せます。

通常のメンテナンスでは、ここまでの分解で充分だと思います。

トリガーアッセンブリーの取り外しは、テイクダウンレバーをフレーム左側から抜き出して、トリガーアッセンブリーを前方から上方に持ち上げるようにずらしていきます。

トリガーアッセンブリーの後方がフレームの出っ張りから外れたら、上方に抜き出せばトリガーアッセンブリーが外せます。普段それ程必要な分解ではありませんが、実銃のM17の構造を上手に再現している部分だと思います。

抜き出したトリガーアッセンブリーは、こんな感じ。実銃同様、エアソフトガンの発射機構が、この中に納められています。グロックの登場以来のエポックメイキングなメカだと思います。生産中止になったP250で開発されたメカの改良ですけれど、モジュラーシステムという新しい発想で新たに脚光を浴びました。

実銃はストライカー式ですが、エアガンはバルブを叩く必要から、ハンマー式に変更されています。後方(右端)部分が実銃と全く異なりますけど、雰囲気は良く出ています。

次にスライド&バレルを見ていきます

スライドからリコイルSPユニットを外せば、バレルユニットが取り出せます。この時リコイルSPユニットをバレル基部の軸から外すのに若干コツが必要です。

後端の3つのスクリューを外すとドットサイト用のスライドカバープレートが外せます。

リコイルSPガイド基部のギア部分とバレル基部のHOPアップ調整用のギアが噛み合っていて、リコイルSPガイドを回すとHOP調製ができる仕組みになっています。最近のVFC製品は分解しないでHOP調製をする設計になってきてますね。

M17の場合は、スライドをホールドオープンしてから、付属のHOP調製ツールをリコイルSPガイドにかぶせて回すことで、HOPの調製ができます。調製ツールに書かれているように時計回り(右)に回すと、HOPが強くなります。

スライド後端のスクリューを3本ともを取ると、リササイトと一体となったスライドのカバープレートとダミーのローディングインジケーターが外せます。外すとブリーチ内のシリンダーがむき出しになるので、そのままでは実銃のようにドットサイトを乗せることはできません。

むき出しのシリンダー上面は平面になっていてスライドサイズに対して比較的短めです。シリンダー断面は一般的な丸形では無く5角形のようなホームベース型をしているのは、短いシリンダーの容積確保のためだと思われます。

それを裏付けるのが、シリンダーが収まるブリーチ部分の上下幅。一般的なGBBと異なり、スライドを横から見るとスライドの上下幅からブリーチがはみ出しているのが分かります。

はみ出た分はフレーム後部のカバープレートを短くして(その分スライド後部のプレートを伸ばして)スライドの後退に影響が無いようにしています。そこまでしないと作動するためのシリンダー容積が稼げなかったんですね。

試射後の簡単なコメント

手動でスライドを引いてみると、リコイルSPがやや強めで、内蔵ハンマーをコックする位置で再度抵抗が増すような感じなので、フロンの作動に不安を感じます。

空撃ちしてみると、シャープな動きでスライドがホールドオープンするので、作動は一見問題なさそうな雰囲気でした。

早速マガジンに21発(実際には24発入りますが、スペアマガジンには21発表示)装弾して撃ってみると、残念ながら最終弾を撃ちきってスライドがホールドオープンするまでには至りませんでした。

試射時の室温は23℃だったのでGBBにとって、そこまで悪い条件では無かったので、少々残念です。

マガジンへのガスの注入量が把握しづらいという問題はありますが、ノーマルのままで快調に作動させるには、もう少し気温が高くなる必要がありそうです。

海外製トイガンで気になる初速は、室温23℃ 東京マルイ製0.2gBB弾を使用時で76m/s前後。

これなら真夏でも規制内に収まるレベルなので、一安心。

初速を見る限り、ブローバックの作動にガスを使わないようなセッティングでは無いようなので、シリンダー容積の少なさが影響しているのかもしれません。

素材自体は悪く無さそうなので、ハンマーSP等軽いモノに交換した状態で再度試してみたいと思います。

SIG AIRSOFT(VFC)SIG M17 試射動画はこちら

最後に(サマリー)

実銃メーカーのシグ社が発売したエアガンと言うことで、注目を集めた「SIG M17」ですが、製品自体の再現度は非常に高く(実銃の図面の提供や、メーカーによる監修があったと思われます)、写真で見た雰囲気そのままです。

コマーシャル仕様の「M320-M17」と異なり、完全なミリタリー仕様になっていることも評価できる部分です。反面、現状では日本の低圧ガス仕様で作られていないので、作動性に若干問題が生じています。

国内正式代理店のライラックス社から、日本専用バーションが発売される事を期待します。

個人的には実銃メーカーがエアソフトガンの発売を行った(実際の製品開発・生産は台湾のVFC社とされていますけど)影響は非常に大きいと思われます。なぜなら、今後他のトイガンメーカーはSIG社のトイガンが作れなくなる可能性がああるからです。

日本国内では、過去のトイガンのライセンスに関わる裁判で、長年実銃メーカーの社名表示を行ってきた慣行と合わせて、日本では実銃の販売が行われていない事から、実銃メーカーの商標侵害・不当競争が認められなかった経緯がありました。

今回のM17のようにSIG社がトイガンをモデルアップした場合、新たにトイガンとしての形状面での類似性と、トイガンそのものとしての商標侵害を問われる可能性が発生します。

そうなると訴訟のリスクが発生するので、SIG社と契約をしていないメーカーは、M17のトイガン製作は難しいでしょうね(東京マルイがM17では無く、P320をモデルアップするのは、訴訟リスクを避けるためか、M17のライセンス取得ができなかったため?)。

実銃メーカーがエアガンを発売する流れが加速していくと、許可無くモデルアップできる機種が無くなるという、国内メーカーにとって益々厳しい時代を迎えることになりそうです。

● SIG AIRSOFT(VFC)SIG M17 GBB(並行輸入品)・・・・・25,000円〜(税抜き)

参考資料

・月刊 GUN Professionals 2018年12月号

・月刊 GUN Professionals 2019年 2月号

・月刊 GUN Professionals 2020年 4月号

・世界の傑作ハンドガン

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