タナカ S&W PERFORMANCE CENTER M&P R8 5inch HW ver.2
実銃についての簡単な説明
オートピストルの多弾数化に伴い、軍や警察関係の最前線で使用されなくなったリボルバー。そのリボルバーをリボルバー競技用にリロードの不利を補うために、使用弾の38口径より一回り大型のNフレームを使い太いシリンダー径を活用して装弾数を増やす事が考えられ、開発されたのがステンレス素材のM627 8連発リボルバーです。
その後、S&W社が2000年に357マグナムを発射できる強度を持つスカンジウムとアルミを組み合わせた、軽量のスカンジウム合金フレームを持つAir Lite SC シリーズボルンバーを発売すると、次に「M627」を土台にスカンジウム合金合金フレームを組み合わせカスタム部門であるパフォーマンスセンターが開発したのが、8連発357マグナムリボルバー「 M327 TRR8」 タクティカルレイルリボルバーです。
「M327 TTR8」は独自の軽量素材や8連発の多弾数リボルバーとしての特徴以外に、バレル上下に付けられたアクセサリーレイルによって光学サイトやライト等を追加装備できる拡張性に注目が集まりました。タクティカルオートに匹敵するタクティカルリボルバーの誕生です。
実際、TRR8の開発には、SWATオペレーターが防弾シールド越しに射撃をしても、シールドの影響でジャムする心配の無いタクティカルユースに向いた多弾数リボルバーを要求したとも言われています。
2008年には「TRR8」にそっくりな「M&P R8」が発表されました。「TRR8」と「M&P R8」の違いは前者がステンレスシリンダーなのに対して、後者がチタン合金製。前者がバレル下のレイルが着脱式でバレルシュラウドが穴あきで軽量化されているのに対し、前者がバレル一体型のレイルとバレルシュラウド側面が塞がっている程度の違いです。
TRR8」と「M&P R8」の違いはシリンダー強度の高い「TRR8」は、より357マグナム向け。シリンダー重量が軽く(結果としてトリガーも軽い)「M&P R8」はより競技向けという程度。どちらもユーザーのニーズに広く合わせられるように作られているため、両者ともカタログモデルとして現在も販売が続いています。
大型フレームリボルバーに伝統の「M&P」の名称を付けたのは、一つで多目的に利用できるリボルバーを目指したからだと言われていますが、ベストセラーだったM10のブランド力を借りたとも言えそうです。
タナカ S&W PERFORMANCE CENTER M&P R8 5inch HW ver.2について
タナカがS&W PERFORMANCE CENTER M&P R8(以下M&P R8)のトイガンを発売したのは2009年。実銃が発売されて直ぐにペガサス式のガスガンとして発売されました。当時からモデルガン化を望む声は多かったと思われますが13年経ってようやくモデルガンの新製品として発売されました。
パッケージは「M29」用に作られた大型のパッケージ、蓋部分はブラックの細かい凹凸のある紙に「Sumith & Wesson」「Performance Center」の文字とロゴマークをエンボス加工した新デザインのもの。側面にホワイト一色で製造者名を印刷するなど、高級感のある作りになっています。
パッケージの身の部分は通常通りの発泡スチロール。サイズ的に5inchバレルの「M&P R8」には大きすぎる作りです。バリエーションで2inchモデルの生産はありそうですが、それ以外にもPerformance Centerモデルのバリエーションを出す予定もあるのかもしれません。
本体フレームはHW樹脂製。金属製のサイドプレートと純正のウェイト入りHOGUEタイプグリップと合わせると重量は915gになります。5inchバレルのバランスの良さが影響しているのか、それ程大きく感じません。
カートリッジ関係の付属品は357MAGUUMカート8発とローダー。フルムーンタイプのカートクリップ一つとカートクリップにカートを嵌め込む金属製のローダーも付属します。
フレーム上面用のピカティニーレイルは金属製。レイル固定用のヘキサゴンスクリュー4本とレンチ。取り付け用のネジ穴を保護するスクリュー用のレンチとインターナルロックキーも付属します。
タナカリボルバーの取説は従来Kフレーム用にはM19ベース、Nフレーム用にはM29ベースで共用化が図られていましたが、「M&P R8」では取説も「M&P R8」専用のA5・4つ折りのものが新たに作られました。別途「修理依頼書」なる書類が付属しているのは時代なのでしょうね。
次にM&P R8の細部をみていきます
左側バレルには「S&W 357 MAGNUM」の社名と口径表示が刻印されています。実銃通りですが書体がかなり細いので、かなりイメージが異なって見えます。
バレル上面の4つの銀の出っ張りはアクセサリーレイルを固定するバレル上面のネジ穴を保護するスクリュー。実銃の保護スクリューは確認できませんでしたが、ネジ穴の保護が目的なのでタナカのようにスクリューが出っ張るのが正しい気がします。
バレル下面には「M&P R8」の特徴の一つであるピカティニー規格のレイルが装備されています。「M&P R8」のレイルはバレルと一体型なので、当然樹脂製。キツ目のサイズのアクセはキズが付くので装着しづらいです。「M327 TRR8」ならレイルが別パーツなので金属製で再現できたのに。少し残念です。
実銃のバレルがスカンジウム合金製のアウターバレルとステンレス製のインナーバレルの二重構造で、マズル部のバレルナットで固定している構造を、マズル部分に金属製一体型ののマズルナットとバレルを付けることでで再現しています。
バレル周りに金属製パーツを使用することで安全性を充分に配慮したらしく、バレルとはOリングで嵌め込んでいるだけで固定されていません(金属製バレルとは呼べないという事でしょう)。そのため発火するとバレルナットパーツが前方に外れるケースが多いようで、ネット上でそのような情報が散見されています。
右側バレルのバレルシュラウド部分は、スリットの入っている「M327 TRR8」とは異なり塞がれていて、「M&P R8」の製品名のロゴマークが大きく刻印されています。マズル付近には8連発(R8)を表す8と円形に並んだ8個の点のマークが刻印されています。どちらの刻印も実銃よりも細いようです。
フロントサイト基部にあるマズル側の穴を細い棒で押し込むと、実銃同様にフロントサイトを取り外すことが出来ます。フロントサイト単体を後方に引っ張れば道具が無くてもサイトを外すことが出来るのは、反動が無いトイガンならではの仕様?なのかもしれません。
フロントサイトは樹脂製のホワイトドット入り。実銃のフロントサイトも樹脂製なのかは確認できませんでした。
リアサイトベースは見慣れないV字ノッチ。素早いサイティングには向いているのかもしれませんが、慣れていないので多少の違和感があります。付属のレイルマウントを付けても、ドットサイトの予備として使えるように設計されています。
リアサイトは現行モデルのサイトリーフ前方が丸くなったタイプをしっかり再現しています、レイルマウント固定用のネジ穴も実銃通りバレル上に4カ所設けられています。上から見ると、バレルの形状は中々複雑な面取りをしているのが分かります。
付属のピカティニーレイルを取り付けると、このような感じになります。固定用のネジ穴はバレルの樹脂部分に切られているので、強く締め付けるのは厳禁です。またフレーム側にはマウントの固定部分は無いので、アクセサリー類の重量は結果的にバレル基部にかかることになります。
樹脂製のトイガンならではですが強度的な強さは無いので、大型のサイト等を取り付ける際は注意が必要な部分です。
往年のS&Wリボルバーと異なり現行モデルのハンマーにはハンマーノーズが無くなり、パイソンなどと同様フレームにフリー フローティング タイプのファイアリングピンが設けられています。ハンマースパーの形状と共にもっとも現行モデルらしさを感じる部分です。
付属のインターナルセフティキーをサムピース上のキーホールに差し込んで左に回すと、インターナルセフティがONになってトリガーが引けなくなります。実際に使用する頻度は低いと思いますが、外見上ロックバーが露出したりするので、キチンと再現してくれるのは嬉しいですね。
トリガーは実銃通り、前面がスムースのセミワイドタイプで裏側に固定式のトリガーストップが付いています。画像では薄くて見にくいですが、サムピース下の刻印は「S&W Performance Center」のロゴマーク。
実銃ではフレーム3本のピンが撃ち込まれているのが、素材が違うのでハッキリ分かるのですが、トイガンでは再現されていません。ピン位置のモールドも無いので、自分で再現するのも難しいところなので残念です。
グリップはS&W純正のHOGUEモノグリップを上手くコピーしています。内部にウェイトを仕込んでいるので、グリップ単体で約240gもあります。そのためかバックストラップ部のアール部分が角張っていて、イマイチ手にフィットしない気がします。
グリップを外すと取付方法もHOGUEに準じているのが分かります。最近のタナカリボルバーは重量を増やすためにグリップフレーム内のウェイトをギリギリまで大きくしているので、スクリューで左右から固定するタイプの実銃用グリップはS&W純正以外、取付に何らかの加工が必要となっています。
グリップ下からスクリューで固定するHOGUE製モノグリップならラバー製木製問わず、ほぼ加工無しで取り付けすることが可能です。
シリンダーのロックは往年のS&Wリボルバーのようにエジェクターロッド先端とセンターピン後部の2カ所でロックする方式では無く、ヨーク部分のボールディテントとセンターピン後部を使ってロックする方式になっています。
ボールディテントはヨークを閉じたときにバレルシュラウド後部にある凹部に嵌まってロックするので、従来のS&W方式のロックよりもヨークの固定確実になるメリットがあるようです。
のフレームトップのバレルエンド部分にはステンレス製のブラストシールドが実銃通り再現されています。スカンジウム合金がスチールほどの強度が無いため、シリンダーギャップから漏れるブラスト対策として付けられたパーツです。
モデルガンとしての機能は殆どありませんが、シリンダーオープンしたとき目に付く部分なので、キチンと再現してくれたのは嬉しいですね。
残念なのはバレルエンド。実銃ではステンレス製のインナーバレルがフレームから飛び出している部分なので、ステンレス風の仕上げになっていたら良かったのに。
8発装弾できるシリンダーは「M&P R8」の最大の魅力。バラバラのカートリッジでも付属のフルムーンクリップを使用しても装弾は可能。クリップに付けてもスピードローダーほどカートが固定できずに弾頭部が動くので、カートを入れやすくするためにエキストラクター部分が面取りされています。
付属の金属製ローダーにカートリッジを入れて、クリップにセットします。
クリップ自体は0.4mm程の厚さしか無いスチール製なので、簡単に曲がってしまいます。カートをセットする際はクリップの外周を持たず、クリップの内側に指を入れるか同径の棒などを入れて、カートリッジに近い部分に力が加わるような持ち方をする必要があります。
クリップにカートをセットした状態。かなり嵩張る割りにはクリップ自体の強度は低いので、スピードローダーのような使い方をするにはクリップは消耗品と割り切る必要があります。カートのリム部分を固定しているだけなのでカート先端はかなりガタつく上に重量は95g程あるので、見た目は良いけど扱いは面倒です。
最後に(サマリー)
新製品でも古い機種の再現が多いモデルガンで、現行モデル(開発場10年以上前ですが)のリボルバーを発売してくれたことは素直に嬉しいです。
モデルガン初の6連発+αのリボルバー(以前7連カスタムシリンダーを発売したショップ?はありましたが)はインパクト抜群で、スイングアウトしたシリンダーのチェンバー部を見たりカートを込めるだけでも新鮮な気分が味わえます。
今回も発火はしていませんが、プルーフされたメカとカートリッジなので発火性能は問題無さそうです。アクションは元々軽めですが、多弾数化でシリンダーの回転角が浅くなっているのでダブルアクション時のトリガーにかかる力が少なくなっています。
またシリンダーが回転してからロックされるまでのタイミングも早まっているので、速射しやすくなっています。シングルアクションで撃つよりもダブルでの連射が似合いそうなリボルバーです。
アクセサリーレイルが付いているので、簡単にサイトやライトを交換して外見カスタムで楽しめるのもポイントの一つ。エアガンに比べてレイル付きモデルガンは少ないだけに遊びの幅が広がりそうです。
やっぱり現行モデルがモデルガン化されるのは嬉しいですね。「M&P R8」のバリエーションは2inchモデルぐらいしかないですが、カスタム扱いで刻印と仕上げ等を変えた「M327 TRR8」を期待したいですね。
他にもNフレームの5inchモデルはバランスが良いので、M629クラッシックとか発売してくれるのを期待しますが、新パッケージを作ったパフォーマンスセンターモデルのバリエが出る方が現実的な気がします。何にせよモデルガンを出し続けてくれるタナカには、頑張ってほしいものです
参考資料
・月刊GUN 2008年12月号(S&W M327 M&P R8 by L.A.支局)
・月刊Gun Professionals 2022年5月号(S&W パフォーマンスセンター M&P R8 by Yasunari Akita)
・月刊Gun Professionals 2022年5月号(タナカ S&W M&P R8 by くろがねゆう)
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