タナカ SIG SAUER P228 frame HW レビュー

レビュー

タナカ SIG SAUER P228は1998年にGBBが発売されてから四半世紀近くたって、ようやくモデルガン化が実現しました。同社のモデルガンのブローバック技術が一つの完成形となった事や、モデルガンに少数ながら確実な需要が見込めることが分かった事がモデルガン化の理由だと思われます。今回はそんなタナカのSIG SAUER P228を見ていきます。

実銃についての簡単な説明

1976年に開催された西ドイツ警察トライアル用に、スイス軍用ピストルとして採用されたP75(SIG SAUER P220)を切り詰めたモデルとして開発されたのが SIG SAUER P225で、トライアル後P6として西ドイツ各州の警察組織に採用されました。

左:タナカ製SIG SAUER P228、右:タナカ製SIG SAUER P226 HW

また1981年に開催されたアメリカ軍次期制式拳銃トライアル(XM9ハンドガントライアル)において最終選考にまで残ったのがベレッタM92SBFとSIG SAUER P220改良型の2挺で、不採用となったP220改良型を1983年に一般市場用に販売したものがP226です。

P226はアメリカ軍制式ピストルに採用されなかったものの、F.B.I.が1988年にP採用を決定するなど高い評価を得ました。

1989年にコンパクト化したP225にP226のダブルカラムマガジンを組み合わせる形で開発されたのがSIG SAUER P228です。

P220から続くシートメタルをプレスして作られたスライドとアルミフレーム。手動セフティを廃したダブルアクションメカ。コンパクトな3.9inchバレルと装弾数13発の大容量マガジン等の特性は好評で、F.B.I.を含む政府機関に採用されています。

コンシールドキャリーガンを必要とするアメリカ陸軍がM11として採用し、その後海空軍等にも支給されています。

1992年に.40S&W口径に対応した強化スライド(ステンレス鋼の削り出し)を持つP229が開発され、96年に9mm×19口径のP229が発売されると、シートメタルをプレスしたスライド製法のP228は存在意義を失い、製造が中止されました。

タナカ SIG SAUER P220系のトイガンの歴史

タナカが最初にSIG SAUER P220系のトイガンをを発売したのは1994年のP226 ABSモデルガンが最初。

左:タナカ製シグ P229 GBB、右:タナカ製 シグ P228 M11 GBB

翌95年にはP226のGBBとP226ステンレスモデル、P226HWモデルガンが発売になっています。96年にはP220のGBBとP228 M11のGBBが発売されます。翌1997年にはP228のHWモデル、P229が同じくGBBで発売されています。

この頃モデルアップされたタナカのGBBは殆どモデルガン化されています(P226とグロック17は、モデルガンからGBB化)が、P220シリーズの中でもP228・P229のコンパクトモデルだけはモデルガン化されず、GBBもいつの間にか生産中止状態になっていました。

GBB発売から四半世紀たった2020年、ようやくくP228がモデルガンとして発売されました。これは2017年のH&K P8から続く、発火性能を高めたブローバックモデルガンのリニューアル&再生(EVO2化)の流れに沿ったものでしょうがが、前作のデザートイーグルが市場で高評価を得たことが後押ししていると思われます。

タナカSIG SAUER P228 EVO2 Frame HWについて

パッケージは実銃のSIG SAUER P220系シリーズと同じデザインで、ベースカラーをレッドにして製品名をP228として新規に製作しています(現在実銃のP228は生産終了になっているため、タナカオリジナルの意匠だと思われます)。

今後のバリエ展開があるにしても、シール対応などにせず新規でパッケージを作ってくれるのには好感が持てます。

身の部分の発泡スチロールは、SIG SAUER P220シリーズ等と共用のもの。その割に収まりが良いのには感心します。ローコストも大事ですけど、パッケージを開けたときの第一印象は大事ですよね。

ちょっと嬉しかったのが取説で、P226の流用では無くP228専用のものになっていました。感覚的にP226のバリエ的に受け止めていましたが、完全新規モデルの位置づけですね。

次にSIG SAUER P228本体を見ていきます

P228は一連のタナカEVO2シリーズ同様、快調な発火と耐久性を前提としているので、主要パーツごとに特性の異なるパーツを使用しています。

スライドは衝撃に強く軽量なABS系の素材。バレルは割れや衝撃に強いポリカーボネート系(ナイロン系?)の素材です。フレームは重量を稼ぐためのHW樹脂製となっています。

主要パーツだけでも3素材を使い分けしているので、若干色目にバラツキがあるのが残念。

左側スライド刻印は「SIG SAUER」のメーカー名(というよりブランド名、商標ですね)、それとは別に社名「SIG ARMS INC.」(1985年設立)が入っているのが興味深いです。

次の「EXETER NH」は「SIG ARMS」の製造元所在地でニューハンプシャー州のエクセター町を表しています。

トリガー上部には分解用のテイクダウンレバー、その後方・グリップ部にはデコッキングレバーとスライドキャッチレバーが並んでいます。誤作動防止のためかグリップ上部に膨らみが付けられていますが、操作性は抜群です。

今でこそ見慣れたレバー類ですが、P220シリーズが取り上げられるようになった80年代では、セフティレバーが無くデコッキングレバーの付いたメカに衝撃を覚えました。

フレーム後方のハンマー基部にある別パーツが、エストラマー素材のハンマーストップです。弾性がある素材なのでブローバック作動時のハンマーの衝撃を、直接フレームに伝えないようになっています。

スライド右側にはシリアルNO「B190 731」モデルMWI「P228」、製造国表記「MADE IN W.GERMANY」が入れられています。P220シリーズは西ドイツのSAUER&SOHN社が担当していたということでしょう。

ドイツの再統一は1990年ですから、それ以前に製造されたモデルをモデルアップしたということになりますね。チャンバーには「9mm Para」の口径表示が。フレームにはスライドと同じシリアルNOと、ニトロプルーフマークが入っています。

スライドはP228の特徴のプレススライドの形状をキチンと再現しています。若干チャンバー前部のフラット加工の形状が気になりますけど、エジェクションポート周りの再現は良くできています。

プレススライドの特徴でもあるブリーチブロックは別パーツでしっかりと再現されています。内蔵式のエキストラクターやエジェクター、ファイアリングピンが覗くブリーチ部分はリアルです。

トリガーガードはP226の角張った形状から、角を落とした なだらか形状に変更されていますがホールド用の滑り止めは残されています。グリップ前面にも滑り止めの横溝が入れられています。

トリガーはP226と同型の縦グルーブが入ったものが使われています。

P228のグリップは、フレームよりも長いオーバーサイズ。マガジン挿入口にはマガジンを入れやすいように面取加工されているのも再現されています。グリップエンドにはランヤード用の加工が施されています。

マガジンは新規開発された13連マガジンで、P226MK25のマガジンと異なりマガジンSPがしなやかなので、問題なくカートリッジを13発込めることができます。

マガジン側面に「SIG SAUER」の文字が入っていますが、1990年頃のマガジンにはP226とマガジンの混同を防ぐために「SIG SAUER」の他に「P228」と刻印されていたはずです。細かいことですけど気になりました。

カートリッジはアルミ製のEVO2カート。付属が5発のみなのは残念ですが、カート単価が高いので(1発換算450円)仕方ないですね。タナカの9mm用BLKカートリッジは似たようなカートが過去に数種類生産されているので、予備カートを購入するときは注意が必要です。

タナカの9mmカートの変遷は以下のページを参照

ナカ H&K P8(Evolution HP)レビュー

簡単に分解してみます

日常分解はスライドを引いてスライドをホールドオープンさせてから、テイクダウンレバーを時計回りに90度回転させます。次にスライドストップを下げて、スライドユニットを前方に抜き出します。

後はスライドユニットからリコイルSPユニットとバレルを外します。グリップはスクリューを外せば左右に取り外せます。

スライドアッセンブリーからリコイルSPユニットを抜き出してから、バレルを外します。組み立ては本来逆の手順なのですが、リコイルSPが邪魔をしてリコイルSPガイドが入らない事が多いので、以下のような違う手順で組み立てています。

最初にリコイルSPユニットをスライドに取付てからリコイルSPガイドを縮めて、ガイドをスライド前方から掴んで固定します。その状態でバレルをスライド内に入れて、最後に押さえたリコイルSPガイドを緩めて所定の位置にセットします。若干面倒ですが、慣れれば普通に組み込むよりも早くできます。

バレルは新規製作のポリカーボネート素材(ナイロン素材?)のもの。EVO2シリーズでお馴染みの金属製の補強プレートがチャンバー下部に取り付けられています。

上:タナカ製P228 モデルガンのバレル、下:同P228 HW GBBのバレル

モデルガンとガスガンではバレルの基本構造が異なるので、金型どころか両者は完全な別物で、当然互換性は無し。

実銃のバレル先端は段差の無いストレートな形状で、チャンバーブロック前方のバレルの段差はもっとハッキリしています。両者とも形状にトイガン的アレンジがあるのは仕方ないですね。

リコイルSPガードは金属製で、チャンバー側のガイド基部にSP式のバッファーが付いています。ブローバック時のスライドの後退力を直接バレル基部に伝えない為にバッファーSPはかなり強めです。

上:タナカ製P228 HW GBBのスライド、下:同P228モデルガンのスライド

過去に作られたP228 GBBのスライドとモデルガンのスライドを比較してみると金型分割線の後や、ブリーチ部分を除く各部の形状は全く同じでした。モデルガンのスライドは、過去のGBBのスライドを同じ金型を使っていると思われます。

ブリーチはP226とは微妙にサイズが異なるP228専用のもの。ファイアリングピンブロックは実銃の形状を良く再現しています。

ブリーチ後端をよく見るとブリーチの両肩の部分の角が取れていて、スライドと隙間が空いているのが分かります。もしかすると別スライド(P229?)にも対応させたデザインなのかもしれません。

P226等と同様、スライド内にスライドストップレバーを実際に受ける金属パーツが装備されているので、最終弾発射後、スライドがホールドオープンしてもスライドのスライドストップ用の溝が削れたり破損する心配が無くなっています。

上:タナカ製P228 HW GBBのフレーム、下:同P228モデルガンのフレーム

金属シャーシが入っていてわかりにくいですが、フレームもGBBのものとモデルガンを比べてみると、金型分割線の位置や細部の形状が同じにみえるので、ことらも同じ金型を使って作られているようです。

フレーム内の金属パーツは、一見普通のガンブラック処理のようですが、発火を前提とした防錆処理が施されているそうです。ハンマーはリバウンド機能が再現されているので、ハンマーダウン時(デコッキング時も含む)にはこの位置に戻ります。

フレーム右側のトリガーバーSPはP226同様、輪の付いた現行型SPに変更されています。グリップフレームにSP用の穴が開いたままになっているのも、P226と同じです。また、フレームの切り欠きに収まる金属製のウェイトが新たに加わりました。

この金属ウェイト2つで22gの重量増加になります。思ったほどの効果が無いのは残念ですが、ウェイト上に「228]「229」の文字があるのは、バリエーションを期待させてくれますね。

左:タナカ製P228 HW GBBのグリップ 右:同P228モデルガンのグリップ

P228GBBのグリップと比べてみると、素材の違いはあるものの、滑り止めのテクスチャーや金型のライン等が全く同じなので、同じ金型を元にして作られているのが分かります。

左:タナカ製P228 HW GBBのグリップ 右:同P228モデルガンのグリップ

裏側から見るとモデルガン用グリップには新たに加わったウェイト用の凹み加工が入っています。またグリップ後方に固定用のピンが新設されているので、GBB時代にあったグリップの左右のガタが解消されています。

フレームからグリップウェイトを外せば、GBB用グリップをモデルガンに取り付ける事も可能です(当然逆も可能です)。

フレームを下側から見るとグリップ部やシアー周りに切り欠きが多く、HW樹脂の素材を考えると強度的に心配な部分です。実銃と材質が異なるので、余計華奢に感じます。

左:タナカ製SIG SAUER P228 GBB、右:タナカ製 SIG SAUER P228 モデルガン

ハンマーSPを受けるフレームのグリップエンド部をGBBのP228と比べると、GBBのフレームと全く同じのように見えます。GBBよりも強いハンマーSPを受けるモデルガンとしては、この部分の強度も気になるところです。

気になる点を書きましたが、発売から1ヶ月過ぎてもフレームの破損についての情報が無いので、形状から感じる強度不足の不安は、杞憂のようです。

94年に発売されたタナカ製・初代SIG SAUER P226ABSモデルの自壊が、トラウマだっただけに取り越し苦労をしてしまうようです。

社外アクセサリー

SIGSAUER P226に比べて種類の少ない実銃用アクセサリーを一部ですが紹介します。

HOGUE グリップ

HOGUE P228・P229用 2ピースラバーグリップ(28010)

国内で市販されているP228用のHOGUE ラバーグリップ(2ピースタイプ・フィンガーチャネルタイプ)は一部を加工することで,タナカ P228に取り付けが可能です。

加工部分は左右グリップ共に同じで以下の3点です。
(1)グリップスクリュー穴を広げる
(2)バックストラップ部のハンマーストラットに接触する部分を削る
(3)バックストラップ下部のフレームと接触する部分を削る
現物合わせで、リューターを使って加工すれば20分程度で、加工できます。

今回はウェイト部分の加工はしなかったので、フレームからグリップウェイトは外してHOGUEグリップを取り付けます。

バックストラップ部分に若干のスキマはありますが、問題なく取り付けることができます。握った感じは若干太く感じますが、ストレート感が増して手にフィットします。

サファリランドホルスター 6361-278

KSC製 SIG SAUER SP2022とタナカ製 SIG SAUER P228を比べてみたら、意外なことにほぼ同じサイズでした。

そこで、手持ちのSP2022用ホルスター(SAFARILAND 6361-278)をタナカ P228に試してみると、若干のキツ目感はありますがピッタリ入りました(SP2022用ホルスターの市場在庫が、ほぼ無いようなので参考程度に)。

最後に(サマリー)

残念ながら今回も肝心の発火テストは行えなかったので、外見を中心としたレビューになりました。

ネット上の記事や動画を見る限り、ブローバックの調子は大変良さそうです。手動で行った限りでは、1マガジン13発の装弾・排莢はスムーズで全く問題はありませんでした。

タナカ製P228 GBBモデルと比較したところ、それぞれの特徴からスライド、フレーム、グリップについては同じ金型を流用しているように思われます。新規のパーツはバレルとマガジンぐらいかもしれません。

主要パーツが四半世紀前の金型の流用ではありますが、恐らくモデルガン化も考慮していたであろうGBBがベースになっているだけあって、外見の再現性は実銃の画像と比較しても違和感はありません。

90年代後半はエアガンの隆盛によって、モデルガン自体は衰退していった時期ですが、モデルガンの再現性に関しては絶頂期だったようです。

過去の資産を有効活用して、モデルガンの新製品が開発できるのならコストも低く抑えられるし、製作期間も短縮できるので言うこと無しですね。

発売後、直ぐにバリエーションモデルのM11の発売も予告されているし、今後同様の手法でP229(現行モデルではありませんが)も期待したいところです。

・タナカワークス SIG SAUER P228 EVO2・・・・・・・・・26,800円(税抜)

・タナカワークスEvo2カートリッジ9mm(10発)・・・ ・4,500円(税抜)

参考資料

・月刊 GUN誌 1990年 1月号(SIG/SAUER・P228 byヨーロッパ支局)

・月刊Gun Professionals 2019年2月号(SIG SAUER P228 by Terry Yano)

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