タナカ H&K P8(Evolution HP)
レビュー

レビュー

実銃についての簡単な説明

H&K P8は1993年に開発された「USP(Universal Self-loading Pistol)」の派生モデルで、1995年にドイツ連邦軍に正式採用された9mm×19カートリッジを使用するポリマーフレーム&ハイキャパシティオートです。

ベースとなった「USP」はグロック17が先鞭を付けたポリマーフレームを採用した以外は、ブローニングタイプのショートリコイル方式やハンマー式ダブルアクション機構を採用するなど、従来のH&K製ハンドガントは異なるコンベンショナルな設計になっています。

フレームのダストカバー部には、独自企画ながらアタッチメント用のレイルが世界で初めて標準装備されています。コンバットシューティングを意識したコック&ロックが可能なセフティ機能を標準に9種類の操作バリエーションが存在します。

P8ではセフティ(コントロールレバー)の動きが前制式拳銃のP1に準じたものとなっていて、レバーを下げてセフティオン、もう一段下げてデコッキングとなっているのも特徴です。

ドイツ連邦軍では現在も制式拳銃となっていますが、コマーシャル市場では後継のP30、VP9等が登場しているので、2世代近く古いモデルとなっています。

タナカ H&K USP系のトイガンについて


▲ 左から:USPステンレスGBB、USP 初期HW、USP初期ABS

タナカが1994年にモデルガンのSIG&SAUER P226を発売し、翌95年にはモデルガンのグロック17の発売と前後してウェスタンアームズとマグナブローバックの提携を行っています。その第1弾としてP226のマグナブローバック化が図られました。

そのことでモデルガンからエアガンへのシフトがあったようで、当初モデルガン化が発表されていたH&K USPは立ち消えになり、95年末にマグナブローバック第2弾としてH&K P8としてエアガン化されました。これがタナカのUSP系のベースとなります。


▲タナカ USPモデルガン初期ABSモデル

実際にUSPがモデルガン化されたのは99年の末頃で、当初はABSモデルとして発売されました。バリエーションとしてHWモデルが追加され、小改良を経てエボリューションモデルとなるなど断続的に生産が続けられていました。

2017年に更に改良されたエボリューション2モデルとしてリニューアルされたのが、初モデルアップとなったH&K P8です。

タナカ H&K P8(Evolution2 HP)について

先に述べたようにタナカのUSP系トイガンの基本設計は95年頃とかなり古く、その間小改良を繰り返してきたものの、今回エボリューション2としてリニューアルされた箇所は簡単に言うと、素材の変更、刻印の全面変更、乳白色のマガジンの採用、カートリッジの改良といったところです。

特に刻印に関しては旧モデルでは型で入れられていたため、金型修正等のコストがかかっていると思われます。その為、第1弾がインパクトのあるP8になったのではと、推測されます。

インパクトと言えば、P8からパッケージが新しいデザインのものに変更されました。過去のP8エアガンの迷彩柄や、USPシリーズのデザインの流れとは全く異なる「HK」ロゴを前面に出したデザインです。

最近はローコスト化が見え見えの味気ないパッケージの製品が多い中で、タナカはパッケージへの拘りを捨てていないメーカーの一つだと思います。

まずは新しいHP樹脂の重量について、見てみます

新しいHP樹脂でスライド&フレームが作られたP8のマガジン込みの重量は、約630g。

最初期のABSモデルの重量が約470gなので、3割以上の重量UPになっています。

オールHWモデルでは約640gなので、HP樹脂のP8とほぼ変わりません。HW樹脂をフレームに使ったときの最大の課題が握ったときのヒンヤリ感で、ポリマーフレームのオートの場合は逆にリアルさが失われます。

実際の強度やブルーイングの可否など現状不明な点もありますが、個人的にはHP樹脂の採用を好意的に考えています。

 

次に細部を見て行きます

スライド左側には「HK」(H&Kロゴ)「P8」(モデルナンバー)「四角マーク」(恐らくブンデスヴェーア(ドイツ連邦軍)受領マーク)「97」(受領年度)「Bw 20164」(個体ナンバー)「9mm×19」(口径)が入っています。

フレームには薄く旧ニトロブルーフマークが入っています。


▲タナカ H&K P8 GBBのスライド

GBBのP8のスライドは「HK」「P8」「9mm×19」の表記は同じながらプルーフマーク、ウルム検査場の合格印、シリアルはUSPと同じようになっています。わざわざ新しく刻印を作り直したところにP8にかけるタナカの意気込みを感じますね。

スライド右側には刻印がありませんが、チャンバー部に「HK」(H&Kロゴ)「9mm×19」(口径)「Bw 20164」(個体ナンバー)「四角マーク」(受領マーク)が2行で入っています。

フレームには「Heckler & Koch Gmbh」の社名と「Made in Gemany」の生産国表記の刻印が入っていますが、何故か国名が本来の「Germany」のスペルと異なっています。

新規の刻印なので今更スペルミスとは考えにくいので、トイガン本来の製造国表記と模型としての再現との妥協策として、わざと変えたように思えます。もっとも専門誌が全く触れてないので、逆にスペルミスの可能性もありますね。

グリップ刻印は当然ながら「HK P8」になっています。刻印自体は型で入れられているようですがバリエのUSPを考えると、恐らくこの部分だけ製造時に型を交換できるようになっているんでしょうね。

ダストカバー部の金属プレートの個体ナンバーも「Bw 20164」になっています。USPではトリガーガード下にある「WARNING〜」から始まる注意書きの刻印は、ミリタリーモデルにはありません。

操作面でUSPと異なるのがコントロールレバーの動きです。P8では下げてセフティONとなりますが、USPと同様コック&ロックで保持できます。

気になる点はセフティONはスムーズですが、OFFにするときは固くて片手では操作できない事。暫く使って当たりが付けば、スムーズになるんでしょうか。

もう一段下げるとハンマーデコッキングができます。前制式拳銃のP1と同じ操作感覚を残したというのが理解できます。

見た目でもっともインパクトがあったのが、この乳白色のマガジン。ミリタリーユースだけではなくヨーロッパでは民間市場でもオプション扱いになっているらしい。

当初は残弾確認しやすくするスケルトン仕様かと思っていたら、全く透けないので何でこの色を採用したのかは不明。実銃ではもう少し透過性のある素材なのかもしれません。

ダミーカートリッジを使用する限りマガジン後面の残弾視認穴は、しっかり機能しています。なので、穴のバリ取りをしておく必要がありますね。

初期モデルと比べてマガジンスプリングが非常に柔らかくなっているので、15発フル装弾も非常に簡単。これは発火のパワーを弱めたと言われる、前作エボリューションモデルの時からの改良なのかもしれません。

次は簡単に内部を見ていきます

分解はマガジンを抜いて、スライドのノッチ部分をスライドストップの軸部分まで下げて、スライドストップを抜き出してからスライドアッセンブリーを前方に抜き出します。

この方法だとチャンバー内の残弾確認は一応出来ますが、分解前に、スライドを引ききって強制的にチャンバーをクリアすることが出来ないので、最近は安全性に問題がある方式と言われたりします。

ここまでの通常分解は非常に簡単ですが、逆にこれ以上の分解は非常に面倒そうで、特にフレームの分解は行った事がありません。実銃でも個人で、これ以上の分解は進めていないようです。

特に分解が大変そうなのが、コントロールレバーとディテントプレート回り。未だにこの辺りの構造がよく分かっていないので、尚更手が出せない部分です。

USPと比べるとディテントプレートの形状自体は同じで、コントロールレバーでディテントプレートの動きを変えて、作動自体を変えているようです。

スライド裏側を見てみると、AFPB(オートマチック ファイアリングピン ブロック)がライブで再現されています。同じようにブリーチとエキストラクターを留めるロールピンもライブで再現されています。

ここまでリアルなモデルガンが20年も前の設計だった事は、ある意味驚きですね。

バレルは実銃どおりリコイルSPユニット基部とロックするようになっています。モデルガン的にショートリコイル用のSPが入っている以外はほぼ実銃どおり。

リコイルユニットのバッファーSP(リコイル リダクション システム)も実銃どおり作動します。初期の実銃ではユニット化されていなかったリコイルSPも、改良後に合わせてユニット化されているので組立が非常に簡単になっています。

バレル素材はポリカーボネート系と思われます。耐久性面での変更でしょうが、USPに関しては初期モデルもバレルの自然崩壊はありませんでしたので、主に発火対策でしょうね。

チャンバーカバーはイモネジで外せるので、同社P226と違ってバレル単体のパーツ交換が可能です。

カートリッジは新型Evo2カートリッジで、弾頭部・ケース部がアルミ製になって大幅に軽量化しています。従来カートが1発約10gなのに対し、Evo2カートリッジは約5.5gとなっています。

カートの軽さは排莢の調子に直結するだけに期待できますが、反面単価があがり1発あたり450円になってしまったのは残念ですね。

【参考資料】 タナカのBLKカートリッジの変遷


(1)パラカート
タナカ最初のBLK用カートで、スリープを使った5mmキャップ仕様なのは現行のエボリューションカートと同じ。樹脂を多用した一種の使い捨てカートでした。

30発・1950円(1発・65円)初期P226、グロック17共用


(2)メタルカート
金属カートリッジに対する要望によって開発されたカートリッジ。パラカートの金属(高級)版。アルミ弾頭部と真鍮ケース以外のパーツはパラカートと共通。

15発・3,500円(1発・233円)初期P226、グロック17、USP共用


(3)Evoカートリッジ
本体の破損を防ぐためにパワーを押さえた仕様のカートリッジ。メタルカートリッジのファイアリングピンとインナースリーブが変更されています。

15発・4,500円(1発・300円)2016年以前のEvoモデル(P226、グロック17、USP)専用

 

【参考資料2】H&K USP実銃射撃動画

この時は2マガジン撃ちましたが、反動も少なめで撃ちやすく感じました。サイトも見やすく、近距離でしたがよく当たりました。

 

タナカ USP(Evolution HP)

1ヶ月遅れで発売された、P8のバリエーションモデル。従来製品とも改良点はP8と同じ。付属マガジンは黒色となっています。

スライド左側のメイン刻印は「HK」(H&Kロゴ)「USP」(製品名)「9mm×19」(口径表示)。中央下側は「鷲」(ニトロプルーフマーク)「KD」(93年製造の記号)「鹿角マーク」(ウルム検査場の合格印)「24-006991」(シリアルナンバー)となっています。フレームのニトロプルーフマークはP8と同じです。

刻印がP8に比べてシャープじゃ無いのと、過去のタナカ製USPステンレスモデルと同じ刻印なのが気になりますね。

チャンバー部の刻印は「HK」(H&Kロゴ)「9mm×19」(口径)「24-006991」(個体ナンバー)「鷲」(ニトロプルーフマーク)が2行で入っています。

フレームには「Heckler & Koch Gmbh」の社名と「Made in Gemany」の生産国表記の刻印が入っていますが、「Germany」のスペル違いはP8と同じ。

最後に(サマリー)

タナカ製 H&K P8はUSPのバリエーションにもかかわらず、初モデルアップだった事と、Evolution2としてリニューアルされたことによって、全くの新製品のような印象を受けました。

基本設計は20年も前のものですが、再現性の高さは今日でも充分通用するモデルだと再認識できました。新規採用されたHP樹脂についても、重量感とポリマーフレームらしい触感が気に入りました。

発火はしていませんが、かなり満足度の高いモデルガンの新製品だと思います。

今後順次既存モデルガンのEvolution2化が進むと思いますが、gen4タイプのグロックや、グロック18C+ロングマガジンをEvolution2化をきっかけに開発してくれると嬉しいですね。

タナカ P8(Evolution2 HP) 24,800円(税別)
Evo2カートリッジ(10発セット) 4,500円(税別)

参考資料

月刊GUN誌 1994年4月号
月刊GUN誌 1999年5月号
月刊GUN誌 1999年8月号
月刊GUN誌 1999年9月号
月刊GUN誌 2000年6月号
月刊GUN Professionals 2017年4月号