UMAREX グロック G42 レビュー

レビュー

2019年に発売されたUMAREX製グロック42は、従来のGBBの概念を破る小型サイズで人気を博しました。今回2ndロットを入手することが出来ましたので、その前身とも言えるHOGWARDS製グロック42とも比較しながら細部まで見ていきたいと思います。

UMAREX社について

UMAREX社は旧西ドイツのブランクガンメーカーでしたが、ワルサー社の親会社になる等、現在では実銃の生産も行う総合ガンメーカーになっています。また最近は世界的に市場が拡大しているエアガンの販売にも参入し、グループ内のワルサー社を始め、H&K社やベレッタ社等のライセンスを取得して各ブランドのエアガンを販売しています。

2018年にはトイガンへのライセンス契約に慎重だったグロック社のライセンスを取得し、同社の公認モデルエアガンの販売を始めています。

UMAREX社はフランスのCybergun社と同様、エアガンに関しては自社で生産会社を持たないファブレスメーカー型の業態で、実際の生産は台湾のVFC社が行っているとされています。

UMAREX グロック42とHOGWARDS グロック42との関係

左:HOGWARDS製グロック42、UMAREX製 グロック42

グロック42のエアガンとしてのモデルアップは、台湾のHOGWARDS社(当初はSTARKARMSブランドでした)が2015年後半にGBBとして発売したモデルが最初だと思われます。

このHOGWARDS製グロック42は、2018年にUMAREX社がトイガン用のグロッ正式トライセンスを取得した前後から市場で見られなくなり、2019年後半にUMAREXブランドで外見上は同じグロック42が発売されました。

HOGWARDS製グロック42は台湾のVFC社が製造を行っていたとされ、他のUMAREXグロックシリーズもVFC製とされていたので、UMAREXのグロック42もべースは同じモデルだと思われます。

UMAREX グロック42について

パッケージは他のUMAREX グロックシリーズと同じデザインのN式と呼ばれる一枚紙から組み立てるタイプ。パッケージサイズは195mm×125mmとグロック42本体に合わせて、コンパクトなものを新規に製作しています。

パッケージには「JAPAN VERSION」のシールが貼られています。日本向け仕様と言うよりも、初速が規制値内(0.98J以内)の製品と言うことを明確にしているだけのようです。

パッケージ内部には本体と「使用マニュアル」「安全の手引き」が入っています。「安全の手引き」はUMAREX製品共通のもののようです。

「使用マニュアル」はUMAREX製グロックシリーズに準じたデザインで、英語表記のみのもの。操作方法中心の内容ですがイラストも豊富で分かりやすい構成になっています。

国産メーカーのマニュアルと異なりパーツ表や、分解方法についての記述はありません(スライドを外してHOP調製の方法は書いてあります)。

UMAREX製グロック42本体はHOGWARDS製グロック42と区別が付かないぐらいそっくりです。外部パーツは同じものを使用していると考えて良さそうです。

UMAREX製グロック42にはフレーム右側には正式ライセンス品の証し「「Offichiality Licensed Product of GLOCK」の刻印が入っています。

HOGWARDS製はこの部分に実銃同様の「MADE IN USA GLOCK. INC. SMYRNA. GA.」の製造社所在地刻印が入っているので、非ライセンス品の方が実銃に近い皮肉な状態になっています。

次にUMAREX製とHOGWARDS製の違いを見ていきます

※ HOGWARDS製グロックは区別しやすいようにTLR6ライトやHOGUEグリップをつけたままにしています)。

左:UMAREX製、右:HOGWARDS製

フレームのグロックマークは、両者とも何故か再現されています(正式ライセンスロゴと同じなのも不思議ですが)。気持ちUMAREX製のフレームの方がセミグロスっぽいツヤがある仕上げに変わっています。。

左:HOGWARDS製、 右:UMAREX製

HOGUWARDS製のインナーバレルが真鍮のままだったのに対して、UMAREX製はブラックに変更されて目立たなくなっています。作動に関係ない部分ですが、外見上の改良も施されています。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

スライド左側の刻印は「グロックロゴ」とモデルNO「42」、製造国「USA」使用弾薬表示「380 AUTO」と両者とも同じ。書体や位置、セレーションについても差異はないようです。

グロックはパーツをオーストリアの本社工場で作って、組立をアメリカ工場で行っているので通常は「AUSTRIA」表記なんですが、グロック42のスライドはアメリカ製って事なんでしょうね。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

スライド右側刻印のシリアルNO「AANS909」プルーフマーク?のような「P」マーク。チャンバー部分のシリアル「AANS909」も両者とも同じです。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

スライド上面、チャンバー部の刻印口径表示の「.380 AUTO」「グロックロゴ」「US」「Pマーク」についても同じです。フロント&リアサイトも同じものが使われているようです。

次に内部の違いを見ていきます

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

ブリーチ部分を見てみると、UMAREX製ではシリンダー ノズルの左右に(1)(2)の銀色の金属パーツが追加されています。これによってシリンダー ノズル形状も変更されています。

(1)(2)の金属パーツの追加によってピストンの滑りを良くすると共に、シリンダーのガタツキを無くしています。

HOGWARDS製グロック42の欠点(スライド後退時にシリンダーが下がらず、マガジンからの装弾不良が多発する)に対処するための改良だと思われます。改良されたUMAREX製では、シリンダーノズルは確実にブリーチ内に下がるようになっています。

UMAREX製グロック42のブリーチ部分とハンマー

また、フレーム内のハンマーは左側に突起が付いた新しい形状になり、追加されたブリーチ内の(2)の金属パーツとブリーチ後端の金属パーツで、ハンマーをコッキングする仕様に変わっています。

HOGWARDS製グロック42はシリンダーノズル後端にある金属プレート単体でハンマーをコックする方式でした。

しかしプレートとハンマーが接する部分が狭いため、タイミングがずれるとハンマーがコッキングしないままスライドが閉じて、ハンマーがブリーチ後端の金属パーツに引っかかってスライドが動かなくなる構造上の問題が発生しました。

※この状態になるとスライドが抜き出せないので、直すためにはスライド後部から細いドライバーのようなものを入れて、ハンマーを直接コックするしかありません。

UMAREX製の改良によって、コッキングされたハンマーは(2)の金属パーツと新しいハンマーの突起によってフレーム側に押さえつけられるので、確実にコッキングするようになり、シリンダーへの干渉も若干少なくなっていると思われます。

これらの改良によって、UMAREX製グロック42ではスライド後退時にシリンダーノズルが下がらず、エジェクションポートの位置に残ったままになる現象や、ハンマーの問題は起きなくなっています。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

バレルも細かい変更が行われています。UMAREX製はアウターバレルの下部に2本の突起が新しく付けられています。

これはHOGUWARDS製が、アウターバレルの同部分を広げる事(下の画像も参照)で、アウターバレルのガタを押さえていた事に対し、突起を設けることで根本的な対処を行ったと言えそうです。

気付きにくいところですが、インナーバレル基部の突起の高さが1mm程増えています。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

HOGWARDS製では、上の画像のようにアウターバレル内にインナーバレルの突起が入り込むスペースがあるので、スライド後退時にアウターバレル内に突起が入り込む可能性があります。

そうなるとインナーバレルのティルトダウンを妨げたり、スライド閉鎖時に余分な抵抗が増える問題が起こりそうです。UMAREX製に見られるバレル周りの改良は、この欠点に対処したものだと思われます。

奥:HOGWARDS製、 手前:UMAREX製

トリガーバーの形状にも細かい変更があります。

(A)はどちらもトリガーバーを下降させて、シアーをディスコネクトさせるための突起ですが、手前のUMAREX製ではスライド後退時に確実にトリガーバーを下降させる形状に変更されています。

(B)の部分の突起はトリガーバーを定位置に戻すための突起ですが、HOGWARDS製の方が突き出し量が多いのは、アウターバレルを定位置に戻す(ガタツキを無くす)役割を持たせていると推測しています。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

リコイルSPユニットは、HOGWARDS製ではSPにメッキが施されていたのに対して、UMAREX製では巻き数の少ないブラックコーティングのものに変わっています。

SPの強さはUMAREX製の方が強いようで、スライドを瞬間的に閉じるように瞬発力のあるSPに変更したように思われます。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

マガジンにも改良が施されていて、UMAREX製マガジンのがスルートパッキンのガス放出口が広くなっていて、シリンダーへのガスの流入量を増やしてブローバック作動を確実にしています。

上:HOGWARDS製、 下:UMAREX製

マガジンSPも変更されていて、UMAREX製の方が同じ太さのSPで巻き数が減っている分、弱くなっています。装弾に必要なテンションは維持しているので、前進したノズルのの抵抗を減らすための改良と思われます。

改良されたUMAREX製マガジンですが、マガジンフォロアーの突起がHOGWARDS製のものよりも短くなっているので、給弾時に指先でフォロアーを下げるのが困難になっています。

マガジンの互換性の確認

マガジンの筐体自体は同じなので、HOGWARDS製マガジンとUMAREX製マガジンの互換性を試してみました。

UMAREX製本体にHOGWARDS製のマガジンの組み合わせでは、発射はできるもののマガジンとブリーチ部分が干渉しているようで、不完全閉鎖が多発。最終弾発射後のスライドオープンもしませんでした。

その逆は問題なく使えましたが、所有個体特有の相性かもしれないので参考までに。

試射後の簡単なコメント

室温23℃、東京マルイ製0.2gBB弾を使用して試射してみました。マガジンのガス容量が少ないので、速射は難しかったですが、普通に撃つ分には1マガジン12発を撃ちきることが出来ました。ホールドオープンはこの時期難しい感じです。

先に述べたようにバレルやスライドの抵抗になりそうなパーツは改善されているので、ブローバック性能自体はHOGWARDS製よりもハッキリと分かる位に改善されています。

またシリンダーノズルの後退不足による装弾不良も完全に改善されています。その反面、ハンマーSPの強さが影響するのか20℃位まで室温が下がると、1マガジンどころか5〜6発でスライド自体の後退量不足→装弾不良が発生します。

気になる初速は55〜59m/s前後と、UMAREX製としては低めですが、HOGWARDS製に比べて若干UPしているようです。室温がある程度あれば、初速は安定はしているもののマガジン容量は小さめなので、前の生産ロットで標準装備だったロングマガジンを試してみたいです。

最後に(サマリー)

このサイズのGBBのトイガンは今日現在迄、このグロック42しか国内では販売されていません。HOGWARDS製では作動に難はありましたが、UMAREX製になって、ようやく納得できるレベルになりました。

このサイズのGBBのトイガンは、2016年にHOGWARDS社がグロック42を出してから現在まで、UMAREXに引き継がれたこのモデルだけが唯一のモデルです。

その意味では存在感のあるモデルで、発売後直ぐに品切れになる理由も分かります。以前だったら、この手のモデルは国内メーカーが最初に手がけるようなジャンルだと思っていましたが、そういうのは既に過去のイメージなんですね。

実銃の世界では、ポリマーフレームオートのコモディテイ化によって、どれも似たようなデザインばかりになってきましたが、トイガンの世界はモデルアップする機種の選択によっては、まだまだ十分魅力的なモデルが提供できる気がします。

・UMAREX グロック42・・・・・・・・・・・・18,150円(税込)
・UMAREX グロック42用スペアマガジン・・・・ 5,060円(税込)
・UMAREX グロック42用ロングマガジン・・・・ 5,060円(税込)

▼過去のHOGWARDS グロック42のレビュー記事はこちら▼

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