W.A S&W M59 COMBAT CUSTOM
Old Toy Gun Reports No,13

ギャラリー

既に製造されていない懐かしのモデルガンを中心に取りあげる「Old Toy Gun Reports 」の13回目は、ウェスタンアームズ(以下WA)社がMGCのS&W M59をベースに作ったカスタムモデル「W.A M59 COMBAT CUSTOM」をバリエーションモデルを含めて紹介します

実銃についての簡単な説明

▲ MGC S&W M59 オールブラック

S&W社が同社の9mmオートM39をベースに、装弾数の増加を目的としたダブルカラム(複列)マガジンを使用するモデルを試作したのが1964年。そのモデルをベースにアメリカ海軍(SEAL)がトライアルを行ったものの大量採用にはならず、1971年に市販化したものがS&W M59モデルです。

アメリカの銃器メーカーとして初めて量産化されたダブルアクション&多弾数オートで、ダブルアクションはワルサーP38から、ダブルカラムマガジンはブローニングハイパワーからの強い影響が窺えます。

1979年から始まったアメリカ軍の制式ハンドガン更新計画に向けて、S&W社はM59の改良モデルを開発し、1979年からM459(アルミフレームモデル)、M559(スチールフレームモデル)を一般向けに市販したのに合わせて、1981年頃に生産中止になりました。

後継モデルのM459やM559、M659(ステンレススチールモデル)は,1989年頃には更に改良された5900シリーズに変わり、1999年頃に生産が終了されました。

MGC S&W M59とWA S&W M59COMBAT CUSTOMについて

▲ MGC S&W M59 ハーフシルバー

MGCがS&W M59モデルガンを発売したのは1979年で、最初から7mmキャップを使用する事を前提に設計された初めてのモデルです。発売当時は量産モデルなのに「MGC CUSTOM SERIES」として発売され、オールブラックモデルで15,000円、ハーフシルバーモデルで18,000円という高価格で発売されました。

この頃からMGCのモデルはブローバックの作動性が安定してリアル志向に移っていきますが、M59はまだ過度期のモデルで、ショートリコイル機構が省略された内部メカは、小林メカといわれるオリジナルデザインの設計になっています。反面、正確なグリップサイズや、実銃同様に左右調整可能なリアサイトが再現されています。

M59は後にCPカート化、キットモデル化された後に86年にエアガンのM459が発売された後は次第に存在感が薄れ、90年頃にはカタログ落ちをしています。1994年にはエアガンの金型を流用したM459が発売され、タイトー時代まで販売は継続していたようです。

▲ W.A S&W M59 COMBAT CUSTOM

1978〜79年当時はWAとMGCは蜜月時代で、WAが78年に発売したGM2ベースのガバメントコンバットカスタムや、MGC渋谷本店内にWA渋谷店が併設されるなどの業務提携が行われていました、MGC特許のデトネーターシステムもライセンスを獲得して、後のベレッタM1934等に使用されています。

1979年後半ににMGCからS&W M59が発売されると、同年末にはWAからM59 COMBAT CUSTOM(オリジナルタイプ)が発売され、翌年5月にはグリップバリエーション(ストレートタイプ)が発売されました。

COMBAT CUSTOMと名付けられてはいますが、当時のアメリカのコンバットシューティングでは9mmパラ口径はマイナー口径だったので、恐らくモデルとなった実銃が存在していないと思われます。ガバメントカスタムで培ったヘビーウェイトグリップやシルバーフレーム等のカスタムテイストを盛り込んだイメージカスタムだったと思います。

それでも最新の多弾数ダブルアクションオートをベースとした新しいカスタムガンとして人気を博し、高額にもかかわらず1980年代前半まで販売が続いていたようです。

W.A S&W M59 COMBAT CUSTOMについて

W.A S&W M59 COMBAT CUSTOMは木製風のプリントが施された、ハードケースに入れられて販売されていました。ケース自体はMGCの汎用ハードケースとほぼ同規格で、表面にプリントされたビニール素材と「WESTEN ARMS」の刻印が異なっています(この手のケースは他のモデルに流用されることが多いのですが、この木目風プリントのケースのみはM59 CUTOM専用だったようです)。

初期のモデルにはハードケースの外側に保護用の段ボールが付属しました(後期モデルでは段ボールが省略されたようですが、詳細は不明)。

パッケージを開けろとM59 CUSTOM本体とカートリッジ1箱、メンテナンスツール(ローダー他)、取説(MGC M59のもの)が入っています。特に仕切りはありませんが、内部のウレタンスポンジによって内容物は固定されていたようです。

メンテナンスキットには、(上から)デトネーターレンチ、エジェクションロッド(キャップ用)、ビニール製キャップローダー、オイル塗布用綿棒が入っています。

カートリッジはMGC製tmmキャップ用9mmカートリッジ1箱(20発・1,200円)が付属します。このカートはMGC製M59とM39、サブマシンガンのM76専用に作られました。

取説はMGC製 S&W M59のものがそのまま使われていました。当時のMGCの取説は、モデルガン本体とは別に配布する方式だったので、パッケージサイズに関係なくA4サイズ(A3二つ折り)で作られていました。パッケージに入れる際は更に手折りしてA5サイズにする必要がありました。

次にW.A S&W M59 CUSTOM本体をみていきます。

W.A S&W M59 COMBAT CUSTOM はMGCから同社のS&W M59のパーツを供給して貰い、WAが独自にパーツを加工したりオリジナルパーツを製作してカスタムモデルとして組み上げています。ベースとなったS&W M59のオリジナル部分とカスタムされた箇所それぞれを見ていきます。

左側スライドの刻印「SMITH & WESSON」は書体は異なるものの実銃と同じ。スライド後方の「MODEL SW/59 DA MG-BLK.AUTO」「MODELGUN CORP.」「MADE IN JAPAN」はMGCオリジナルの刻印。

実銃では同じ位置に「MADE IN U.S.A.」「MARCAS REGISTRADAS SMITH & WESSON」「SPRINGFIELD MASS」(アメリカ製」「登録商標 スミス&ウェッソン」「マサチューセッツ州スプリングフィールド」の意味)の刻印が入っています。

フレーム刻印のシリアル「K79327」と商品名「MODEL 59」は実銃と同じ。左側の刻印はスライド、フレーム共にMGC製M59のものと同じなので、MGCから供給されたスライドとフレームを加工して使用しているのがわかります。

右側スライドの刻印「PAT. MG-BLK」とフレームのS&W風MGCマークは、MGC製M59のものと同じもの.スライドのマズル側にある「W.A COMBAT CUSTOM」の刻印のみWAが後から刻印したもの。

スライドに接着されたバレルブッシングはMGC製と同じ、リコイルSPガイドを覆うタイプ。折角のカスタムなので写真で良く見るM59のようなリコイルSPガイドの穴の下側がカットされたタイプ(ガバメントのバレルブッシングのイメージ)に加工して欲しかったところです。

スライドの大きくカスタム加工された部分はリアサイト周り。リアサイトがボーマータイプに変えられているのに伴って、大型のリアサイトベースも新規に作られています。ボーマーサイトはクリック付きで上下の調整が可能になっています。

サイトのブレード部分が実物よりも小さめになっているのと左右調整が出来ないのが少し残念ですが、この頃では充分にこだわった作りでした。

リアサイトベース右側には「WA. BO-MAR」の刻印が入っています。MGCより先にWAのカスタムモデルではボーマーサイトをモデルアップしていたんですね。MGCが最初にボーマーサイトをモデルアップしたのは1981年に発売されたパイソンPPCカスタムからでした。

M59 COMBAT CUSTOMのリアサイトベースの形状はWAのオリジナルデザインだと思われますが、ベースとなったM59のリアサイ跡を隠すために前後に長いデザインになったのでしょう。

スライドのもう一つのカスタム部分は、スライド上部(エジェクションポート前)の反射防止用のセレーション加工。恐らくハンドメイド加工と思われますが、大型のリアサイトベースのデザインと上手くマッチして、スライド全体を引き締めています。

WAのCOMBAT CUSTOMシリーズの特徴の一つが、フレームのシルバーメッキ。MGCのシルバーメッキが光沢が強かったのに対してWAのメッキはマット調の独特なもの。通常のニッケルメッキよりも高級感があって、耐久性もそれなりにあるみたいです。

スライドストップはエクステンドタイプ。エクステンド部分がノーマルレバーの外側に付く形状で幅が広くなっています。M59の太いグリップでもしっかり親指でレバーを操作できる形状になっています、MGCのものに後加工をして作ったのか、新規に型を起こして作られたのかは不明です。

トリガーはシングルアクション時に引きやすい、ワイドタイプのものになっています。ダブルアクション時には逆に引きにくそうですが、速射性を考えればアリなのかも。パーツ自体は新規に作られているようです。

ワイドトリガーを取り付けるために、フレームのトリガー取付部分が広げられています。ワイドトリガーは専用フレームにしか取り付けられないように作られていると言うことです。

ハンマーはヘビータイプのカスタムパーツで、MGC M59のハンマー後部の切削加工をしないまま仕上げたような形状になっています。本来ハンマーは軽量の方が良いはずなので、あくまでルックス重視のカスタムなんでしょうね。ハンマーの側面は磨かれた銀色(白)仕上げになっています。

グリップは木の裏に真鍮を貼ったヘビーウェイトタイプと呼ばれる手の込んだもの。70年代後半から80年代初期にプラスチック製モデルガンのウェイトアップと高級感があったので人気となったカスタムパーツです。

グリップ前面には金属パーツのフィンガーチャネルが追加されています。これはフレームのフロントストラップ部をカットして金属パーツを嵌め込んだもの。

当時はガバメント系コンバットカスタムで一般的だったチェッカリングよりも斬新なイメージ見えました。グリップの太いM59にとっては指の収まりの良いフィンガーチャネルの方が握り安く感じられました。

マガジンキャッチはシルバーメッキ仕上げ。初期モデルにはマガジンキャッチがブラック仕上げでした。

グリップのバックストラップ部分の滑り止めは、M59オリジナルの縦セレーションのものから、チェッカリング仕様のものになっています。恐らくこれはMGCのパーツに後から手作業で横方向にセレーションを加えてチェッカリングにしたと思われます。

グリップエンドからは、ランヤードリングが省略されています。ミリタリー&ポリス用では無いということでしょう。マガジンベースはM59オリジナルのものから、厚みのあるメッキのカスタムベースに交換されています。

マガジンはオリジナルベースのスチールブルー仕上げのものが使われていました。後にMGCからメッキマガジンが発売されましたが、WA M59 COMBAT CUSTOMには使用されなかったと思われます。その代わりに個人で交換していた方は多かったようです。

簡単に分解してみます

WA M59 COMBAT CUSTOMの分解は比較的簡単。実銃通りにスライドを少し引いてスライドストップノッチにスライドストップレバーの軸を合わせて、レバーをフレームから抜き出すとフレームとスライドユニットが分解できます。

グリップをフレームから外した後は、スライドからバレルとリコイルSP&ガイドを外し、フレームから3本のピンを抜いてトリガー&ハンマーユニット、バックストラップ部とハンマーユニットを取り出すだけです。

これ以前のMGCオリジナルメカのオートマチックモデル(SIG SP47/8、ルガーP08、オートマグ)の分解は慣れないとかなり面倒で、シアー周りのピン止め等は位置決め等に苦労する事が多かったですけれど、M59はトリガーとシアー周りがユニット化されているので分解組立がし易い設計になっています。

発火方式はファイアリングブロックを使ったサイド発火方式で、この時代ではスタンダードなもの。防錆処理はされていないので発火後錆びやすいのが欠点でした。後にM59がCP化された後もセンターファイアー化されなかったので、最終モデルのM459までそのままでした。

バレルはMGC製M59と同じパーツですが、メッキの仕様が異なっています。MGC製のメッキはマットな感じのサーチライトメッキなのに対してWA製のメッキは光沢の強いニッケルメッキ仕様となっています。チャンバー刻印等はそのままです

グリップの裏側には真鍮版が貼られているので、かなりのウェイトアップになっています。フレーム形状に合わせて真鍮版自体にも複雑な加工が施されています。後にグリップ自体もWAから別売されました。WA以外でも六研や、やまもと(ホビーショップ)から同タイプのHWグリップが発売されていました。

M59 COMBAT CUSTOMに使用されているカスタムパーツ「エクステンドスライドストップレバー」「カスタムマガジンベース」「カスタムハンマー」の3点は、後にM59カスタムパーツセットとして別売されました。結構人気があったようで、これらのパーツを組み込んだMGC製M59の画像を現在もネット等で見かけることができます。

発火について

WA S&W M59 COMBAT CUSTOM自体は未発火ですが、ベースとなったデトネーター式MGC S&WM59の発火性能は良好で、2マガジン程度なら不発無く連続でブローバック作動させることが可能でした。それ以上だとデトネーターの汚れで不発や装弾不良が目立つようになる感じです。発火時のジャム等はは当時のブローバックモデルとしては少なかった記憶があります。

後のCPカートに比べてオープンカートは、キャップ込めやカートのメンテが簡単だったので発火し易いモデルでした。唯一面倒だったのはスチールパーツが防錆処理されていないブルーイング処理だったので、ファイアリングプレートやマガジンに錆が直ぐ発生する事でした。

バリエーションモデル

ストレートタイプ(ホワイトパール HWグリップ)

WA S&W M59 COMBAT CUSTOMが発売された翌年5月にはバリエーションモデルとしてグリップをパールタイプのHWグリップにした「ストレートタイプ」が発売されました。「ストレートタイプ」発売後、従来モデルは区別のため「オリジナルタイプ」と呼ばれるようになりました。

商品名の「ストレートタイプ」はパールタイプのHWグリップのバックストラップ側が「オリジナルタイプ」の木製HWと異なりストレート加工されているところからきていると思われます。そのため、グリップを握った感じは「オリジナルタイプ」よりも太く感じられます。

ストレートタイプ(ブラックパール HWグリップ)

もう一つのバリエーションは「ストレートタイプ」のパールグリップのカラーバリエーションモデルです。パール調の樹脂がブラックカラーに変わった以外は、ホワイトパール HWグリップ装着モデルと同じものです。画像のモデルは初期に発売された「オリジナルモデル」の木製HWグリップを別売のブラックパールHWグリップに交換したものです。

マガジンキャッチボタンがブラック仕上げになっているのが初期モデルの特徴ですが、後から発売された「ストレートタイプ」のブラックパール HWグリップ モデルはマガジンキャッチがブラックのモデルが散見できます。

ブラックのマガジンキャッチのモデルがホワイトパール HWモデルには見つからないので、ブラックパール HWグリップモデルの方が先行して販売された可能性があります。

宣材資料

1979年 ウェスタンアームズ総合カタログ

月刊GUN 1980年6月号 広告

▲ 月刊GUN 1981年1月号 広告

最後に(サマリー)

WA S&W M59 COMBAT CUSTOMはカスタムメーカーだったウェスタンアームズが、MGCのモデルガンをベースにしたカスタムモデル第2弾として発売されました。この後にウェスタンアームズはベレッタM1934やワルサーPPK/S等のオリジナルモデルを発売するようになって、徐々にカスタムメーカーから量産モデルガンメーカーへと変貌していきます。

S&W M59 COMBAT CUSTOMはウェスタンアームズのカスタム色が色濃く残った独特なモデルです。高額にもかかわらずそれなりに好評だったようですがWAの他のモデルと同様販売期間は短く、モデルガンブームが絶頂だった1980年代前半には生産中止になっていたようです。

MGCのショートリコイルガバメント(GM5)以降モデルガンがよりリアル指向に向かったことや、キットモデルの発売(M59も含む)などでS&W M59の商品価値が急速に低下したのが理由と思われます。御徒町のMGCボンドショップがニューMGCに移転する前頃に、S&W M59 COMBAT CUSTOM オリジナルモデルが半額ぐらいで投げ売りされてたのが印象的でした。

●W.A S&W M59 COMBAT CUSTOM (オリジナルタイプ)・・・・・・・・・・35,000円

●W.A S&W M59 COMBAT CUSTOM (ストレートタイプ)・・・・・・・・・・33,000円

参考資料

・月刊GUN 1979年6月号(S&W M39・M59・M52 by T.Takano)

・月刊GUN1980年 4月号(S&W Model 59 by I.Nagata)

・スーパー・ガン2(S&W M59)

・スーパー・ガン2(MGC S&W M-59 by くろがねゆう)