(旧)和室工房 「ジャッカルの日」ライフル レビュー
同人エアソフトガン制作者グループの (旧)和室工房さんが2013年に発売した「ジャッカルの日」ライフルを2020年に再々生産されたのを運良く入手できたので、試射動画を含めてご紹介します。
「ジャッカルの日」ライフルとは
「ジャッカルの日」はイギリスの作家 フレデリック・フォーサイズによる小説で1970年に発刊された世界的ベストセラー小説です。
フランス大統領 シャルル・ドゴールのアルジェリア政策に反対する、極右組織が大統領暗殺のために正体不明の暗殺者「ジャッカル」を雇い入れ、大統領を警護するフランス内務省、警察組織と「ジャッカル」との対決を描いた作品で、1973年に映画化されました。
劇中で「ジャッカル」が調達する、狙撃用の分解可能なカスタムライフルが「ジャッカルの日」ライフルです。
現在のようにプロップの詳細情報が殆ど無いので、画面から見た限りは、単発ライフルをベースに木製ストックを取り外し、分解可能なカスタムに加工しているようです。
画像を見る限り、使用弾薬は.22ウィンチェスター マグナムのようですが、ハッキリ分かる画像や劇中の説明はありません。
小説で描写された同ライフルとは基本コンセプトは同じながら、ストックの形状が異なります。分解して松葉杖に収納するギミックの再現に適した形状に変更したと考えられます。
(旧)和室工房「ジャッカルの日」ライフルについて
(旧)和室工房「ジャッカルの日」ライフルは、映画プロップを忠実にモデルアップしていると思われます。付属の冊子によれば、最初の生産は2013年とのこと。2017の再生産を経て、2020年末に残った部材で少数組み上げたものが少数販売されました。
入手したのは2020年末に少数販売されたもので、パッケージは初回生産ロットに使用されたもののようです。形状はN式と呼ばれる、段ボール1枚を蓋と身を一体にしたもの。蓋部分に商品名の「JACKAL RIFLE」のシールが貼られています。
箱の内部はウレタンスポンジが貼られていて、分解したライフルの各パーツをキチンと収納できるように作られています。個人製作のトイガンパッケージとしては、凝った作りになっています。
「ジャッカルの日」ライフルは、カートリッジを除いて7つのパーツで構成されています。組み立て前に、各パーツをそれぞれ見ていきます。
サイレンサー
サイレンサーはアルミ製。内部には消音のためのウレタンスポンジが入れられています。本体と前後のパーツはねじ込み式のはずですが、簡単に分解は出来ないようです。バレル側には映画とは異なり逆ネジが切られていてますが、これはエアガンとしての汎用性を意識したアレンジだと思われます。
バレル&レシーバー
バレル&レシーバーはアルミ製。アウターバレルのバレル長は8inch(20.32mm)設定のようです。映画では全長やバレル長についての台詞がないのでなんとも言えませんが、バランス的にはピッタリな印象です。
ちなみい小説版だと18インチ弱とされていますが、それだと松葉杖にスコープとサイレンサーと一緒に入らない気がします。
ボルトノブの形状は、映画プロップとはやや異なるように見えます。劇中ではボルトノブの絞り込み角度が強く、レシーバー後端部分のボルトノブがもっと細くなっているように見えます。
恐らくトイガン化に伴うカートリッジのサイズ、ボルトサイズなどから現状の形状になったと思われます。上手くデフォルメされているので、ネチネチ見ないと気にならない部分です。
レソーバー下部にはトリガーを取り付けるトリガーブロックと、板バネ取り付けられています。
恐らく映画プロップでは、この板バネがシアSPになっていると思われますが、このモデルでは、シアなどの撃発機構がないプッシュバレル方式なので、トリガーにテンションを与えるトリガーSPの役割を持っています。
トリガー
トリガーは強度がもっとも必要な部分なので、アルミよりも強度が高い超々ジュラルミン(零戦の翼桁にも使われていました)で製作されているそうです。トリガー基部にはネジが切られており、固定用のOリングが入れられています。
スコープ
スコープは唯一、映画プロップと形状が異なっています。付属冊子に書かれているように、コスト的に別注が難しく市販のものを止むえず流用いたからでしょう。
所持モデルのスコープは先に生産されたものとは異なっていて、調製部分がスマートに改良され、プロップと同様、直接マイナスネジで上下左右のスコープ調製ができるようになっています。
映画プロップでは後部スコープマウントに、この調整機能が付いているので厳密には形状が異なりますが、雰囲気的にはより近づいた改良といえるでしょう。後はプリントされた「4×20」の白文字を消せば完璧ですね。
スコープマウント
アルミの左右分割式で、スコープとレシーバーを挟み込みようにして、右側のノブを回して固定します。形状的には映画プロップとそっくりで、前方にある2つのボルト状の突起(ズレ止め)もきっちり再現されています。
ストック基部
ストック基部はアルミ製。仕上げが良いので一体成形にしか見えませんが、付属冊子によると3分割されたパーツで構成されているそうです。中央部分に滑り止めのローレットが刻まれていますが、握ってみるとこの部分がグリップになるのが理解できて驚きました。
グリップエンドにはOリングが入っていて、バットプレートを嵌め込んだときの抜け止めになっています。
バットプレート
バットプレートはキャスト製。整形後の形状変化も殆ど無いようで蓋部分とバットプレート基部がガタ無く合わさっています。映画プロップと違和感の無い形状なのが良いですね。
バットプレート基部には映画プロップ同様、分解したトリガーとスコープマウントがピッタリ収まります。キャスト成型の精度が高いので、2つの突起だけで蓋と基部がピッタリと合わさるのが感動ものです。
次に映画の手順で組み立ててみます
バレル&レシーバーにサイレンサーをねじ込みます。この部分だけ逆ネジなので注意が必要です。
つぎにスコープマウントのノブを緩めて、スコープをマウントに挟み込みます。この段階ではノブは緩めたままです。
次にレシーバー上部のマウントベースにスコープ&マウントを挟み込みます。映画のように前方から滑り込ませたいところですが、実際は難しいです。ノブの緩め方にコツがありそうです。
レシーバーにストックパーツをねじ込みます。レシーバーもストックパーツもアルミ製なのでネジの摩耗は少ないはずですが、念のために各ネジ部にはオイルを塗っておいた方が良さそうです。
トリガーをねじ込みます。トリガー基部のOリングのお陰で、正面を向いた位置でトリガーを固定することが可能になっています。
最後にストックパーツにバットプレートを嵌め込んで完成です。所持モデルだけかもしれませんがバットプレートとストックの接合が微妙に緩く、ストックを垂直にするとバットプレートが外れてしまいます。
映画プロップでもバットプレートは回転する仕様のようでしたので、もう少しキツくなるよう手を加えたい所です。
組み上がるとお馴染みのスタイルが完成します。映画ではこの状態でバランスを取るシーンが印象的でした。
組み立てた「ジャッカルの日」ライフルを実際に手にしてみると、思っていた以上にコンパクトで細身なのに驚かされます。それでいて各パーツ精度が高いのでの組込にガタが無く、全体の剛性感も高いので華奢な感じが無いのが凄いです。
実際に作動させてみます
最初にカートリッジをセットします。(1)カートリッジ先端にBB弾を込めます。この時、しっかりBB弾を押し込まないとガス注入時にBB弾がこぼれます。
(2)BB弾がしっかり込められていると弾頭部が画像のように長くなります。この段階でカートリッジ後方のバルブからガスを注入します。
カートリッジの構造上、ガスを先に注入すると、後からはBB弾は込められなくなるので注意が必要です(注入途中でBB弾がこぼれたときも同様)。
ボルトノブを左に回してから引いてチャンバー部にカートリッジを入れて、ボルトを前進させます。この時エキストラクターはカートのリムを噛んでいません。
ボルトを最後まで押し込んでチャンバーを閉鎖します。
ボルトノブを右に回転させてボルトをロックします。エキストラクターはレシーバーに隠れて見えなくなります。これで発射準備完了です。
トリガーを引くと、ボルトとボルトノブ後端にあったインジケーター部分が前進します。
シアーなどの撃発機構が無いプッシュバルブ式(トリガーの動きを支点にボルトが前進してカートリッジ前部のバルブを解放)なので、カートリッジ内のガス圧によってトリガープルが変化します。
BB弾発射後、ボルトノブを左に回転させてロックを解いてからボルトを引くと、発射後はエキストラクターがカートリッジを噛んでいるので、カートリッジを排莢します。
この時のカートリッジは弾頭が短くなって発射後の空薬莢をイメージさせるものになっているのが良いですね。
実射についての簡単なコメント
室内で簡単に試射した結果ですが、付属のスコープは視野が広くないため慣れるのに苦労します。
また初速のバラツキが大きかったので、最初はカート内のガス注入量の問題かと思われましたが、何度か撃つ間にトリガーを引く速度の影響の方が大きい事にと気付きました。
素早くトリガーを引く方が初速が高くなる傾向にあるのですが、それだとガク引きをし易くなるのでコツを掴むのが大変でした。
気になる初速は室温23℃で東京マルイ製0.25gBB弾を使用して55〜65m/s程、ジュール換算で0.45〜0.55ジュール程度でした。これならば気温が上がる夏場でも規制値を超えることは無さそうです。
弾道はカート式の割に全弾フラットで集弾性も期待できそうでしたが、視野の狭いスコープとプッシュバルブ式のトリガーを上手にコントロールできなかったので、思ったほど纏まら無かったのが残念。
またカートにガスだけ入れて撃つと、サイレンサーのくぐもった音とスモーク状に噴出するガスで、映画並みの雰囲気を楽しめます。エアガンを撃つのと異なる楽しみ方ができるのも魅力的です。
「ジャッカルの日」ライフル試射動画
付属冊子「ジャッカルな日々。」
B5サイズ・32P・1C(表1・表4のみ4C)の冊子が付属します。内容は取説では無く「ジャッカルの日」ライフルの制作記で、個々のパーツの素材&製造方法などが記載されています。
リアルな内容で構成もしっかりしていて読み物としても良くできています。パーツ表など無くても大体の構造が分かるので、これを読めば操作は何となく理解できます。この冊子単独でも販売もされています。
(旧)和室工房さんの取説的なOfficial動画は、下記LINK先にUPされています。
最後に(サマリー)
2013年に発売された(旧)和室工房さんの「ジャッカルの日」ライフルは、既に8年近く経ったモデルでありながら、少しも古さを感じないモデルです。
トイガンとしての質が高いのと、マイナーながら超個性的なモデルをギミックを含めてリアル再現したからでしょう。
長物ならではの総金属性の本体は、精密な加工と仕上げの良さは他のトイガンメーカーを凌ぐほどです。分解組み立てを繰り返しても気付くようなガタも無く、各パーツに仕上げの差が無いので、組み上げ後に違和感がありません。
何よりも細身でコンパクトなサイズのこのモデルを再現するために開発された、蓄圧式カートリッジが秀逸です。後のライフカードや他の方が製作するガレージエアガンなどにも使用されているので、その優秀性が分かると思います。
蓄圧式カートリッジの採用により本体の安全性は充分以上に考慮されていて、初速が規制以下なのは当然として、メカをプッシュバルブ式の本体には撃発機構に相当する部分がありません。玩具としての肝部分がしっかり押さえられています。
命中精度や速射性という部分では他のライフル型トイガンに劣る部分がありますが、エアガン本来の「撃つ楽しみ」という意味では、ダントツに優れたモデルです。現状ではこれ以上のモデルは存在せず、正に唯一無二のトイガンです。
リアルさに拘っているので一般的なエアガンと異なり、撃つ瞬間だけで無く撃つまでのプロセスも充分楽しめるように作られています。これは後に作られた他のモデル(VP9やウェルロッドMK2、Life Card)にも見られる傾向ですね。
個人の方が製作している(というレベルではない本格的な仕上がりですが)ので、不定期少量生産なのが難点ですけれど映画「ジャッカルの日」を観て、このライフルに惹かれた人なら、何年待っても手に入れたいモデルです。
このモデルに欠かせないステンレス製の組み立て式松葉杖も極少数生産されたようなので、再生産されたら手に入れてみたいです。
・(旧)和室工房 「ジャッカルの日」ライフル・・・・・ 43,000円
・専用カートリッジ(1発)・・・・・・・・・・・・・・2,000円
(旧)和室工房製トイガンのレビュー記事はこちら
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