東京CMC
スタ-ム・ルガー ,22オートマチック
Old Toy Gun Reports NO.11
既に製造されていない懐かしのモデルガンを中心に取りあげる「Old Toy Gun Reports 」の11回目は、東京CMCの「スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」を紹介します。
実銃についての簡単な説明
スターム・ルガー社(現ルガー・ファイアアームズ社)が1949年の創業時に発売したのが、「スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」(以下、文中は22オート)です。翌年発売された67/8バレルとマイクロサイトを装着したMK1ターゲットモデルの登場で、43/4インチバレルのものをスタンダードモデルと呼ぶようになったと言われています。
22LR弾を使用する競技・練習用オートピストルとして発売された22オートは、プレス加工製法等による低価格と高い命中精度によって、先行するコルトウッズマン等を押しのけて市場に浸透しました。
発売から40年間で200万丁の大ヒット&ロングセラーとなり、ステンレスモデルの追加や、スライドストップレバーを装備したMK2、マガジンキャッチをボタン式に改めたMK3と進化して、現在も生産が続いています。
東京CMC 「スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」 の概要
77年に新たなモデルガン規制(52年規制)が施行され、銃身分離タイプの金属モデルガンの販売ができなくなる中、78年に(広告などから6月以降と思われます)新規設計で発売されたのが、この「東京CMC スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」です。
設計はフリーガンデザイナーの六戸部氏で、実銃グリップを元に各部の寸法出しをしていった言われていますが、実銃を取材したと思われるようなリアルなパーツ構成で、当時としては画期的な量産モデルとして注目を集めました。
キャップ火薬以前の設計のため、紙火薬仕様のBLKモデルでしたが、ストレートブローバックのため作動性は良かったようです。反面マガジンからの装弾に難があり連射は難しかったとも言われています。
最初に43/4インチバレルの「スタンダードモデル」、67/8インチバレルの「MK1ターゲットモデル」が同時に発売され、翌年51/2インチバレルの「ブルバレルMK1ターゲットモデル」がバリエーションとして加わっています。
85年に東京CMC解散まで、キャップ火薬対応などの改良も行われること無く販売は継続されましたが、CMC解散によって絶版となっています。
東京CMC スターム・ルガー,22オートマチック ピストル
43/4インチ スタンダードモデル
基本モデルの「43/4インチ スタンダードモデル」を中心に細部を見ていきます。
パッケージは2ピースタイプで紙の蓋と発泡スチロールの下箱という、当時の一般的なもの。蓋の方は4C印刷で、グリーン地にスターム・ルガーのロゴマークと銃のイラストが入っています。
文字は「RUGER ,22 Automatic Pistol 」の他に「Mark1 Target Model 」「Standard Model」のモデル名が並列に入れられています。商標問題のある海外への輸出とかはは考慮されていなかったようですね。
内部には本体、マガジン1本、カート8発がそれぞれの位置に納まるようになっています。本体にマガジンを挿入したままでも収まるので、予備マガジンも同時に収納できるようになっています。
実銃ではピン留めされているフロントサイトは一体型ですが、バレルのテーパーやサイト形状は実銃とほぼ同じ雰囲気です。マズルのライフリングはありませんが、この時期の金属モデルガンでは当たり前の仕様です。
リアサイトは固定式ながら大型の見やすいものが付いています。レシーバー上のリアサイトが、命中精度を評価された理由の一つとも言われています。
フレーム左側には大きめに「RUGER」の刻印と「22.CAL LONG RIFLE」の口径表示「AUTOMATIC PISTOL」の文字が入っています。
この部分の刻印には、ルガー製品でお馴染みのの「使用する前にマニュアル云々」の刻印が入っているものもあり、それぞれの打ち分けの時期については不明です。
トリガーはグルーブ入りのセミワイドタイプ。実銃では左右のプレスフレームを溶接した跡がセンターに残っているので、実銃より綺麗なフレームと言われていました。
後年、実際に実銃を見てもそのような跡はなかったので、昔の都市伝説みたいなものでした。
グリップ左側にはメダリオンがありません。最初期には左側に付いていたようですが、グリップ金型の変更で右に移ったと言われています。後に左右に付くようにもなりました。
グリップ後部の丸いレバーがセフティで、上に上げてセフティONとなります。ハンマーコッキング時にセフティをONにするとトリガーとボルトがロックされます。
セフティレバーはボルトキャッチレバーの機能も持っていて、ボルト後退時にONにするとオープン状態でボルトをホールドします。その状態からセフティをOFFにするとボルトがリリースされます。
マガジンキャッチはボトム式。参考にしたのが初期タイプといわれる小さめのものです。実銃の操作感そのままに、モデルガンでも片手で操作できないぐらい使い難くなっています。
フレーム右側には「STARM RUGER & CO.,INC.」「SOUTHPORT, CONN.U.S.A.」の社名・所在地刻印が入っています。フレームの「CMC」ロゴが懐かしいですね。
右側グリップにはブラックイーグルのスタームルガーロゴが入っています。曲がって見えますが,グリップに対して真っ直ぐな この角度が正解のようです。
(左:22LRダミー、中:CMC22オート用、右:MGCウッズマン用)
カートリッジは紙火薬用の一体型ブローバックカートリッジで、ワルサーGSPと共用のもの。実物の22LRよりも小さいサイズで、サイズの近いMGCウッズマン用が流用できないのは残念です。
カートの底にはチャンバーに貼り付いた場合に備えてプラスドライバー用の溝が掘られています。デトネーターと一緒にカートを外す前提で、紙火薬仕様ならではのアルアルですね。
マガジンは装弾数8発のリアルな形状のものですが、カートが下を向きやすいのが難点です。このためチャンバーへの装弾不良が起こり易くなっています。
ダミーカートが入るサイズですが、リムレスカート仕様なのでリムのあるダミーカートは全く装弾できません。
次に各バリエーションモデルをそれぞれの特徴を中心に紹介します。
67/8インチバレル MK1ターゲットモデル
MK1ターゲットモデルは発売当初からのバリエーションで、性格的にはP08のロングバレルバリエーションのようなものです。
自分なんかは随分後まで「MK1ターゲット」と「スタンダード」を混同していたのに、最初からキチンと造り分けていたのは流石です。
67/8インチのバレルは22口径用ということもあって、かなりスマート。実サイズ以上に長く感じられます。個人的には43/4インチバレルのスタンダードモデルよりもバランス的には良く感じます。
また実銃と異なり、フロントサイトベースの角が落とされているので、余計スマートに見えるようです。スタンダードモデル同様マズル部のライフリングはありません。
スタンダードモデルと異なっているのがリアサイトで、可動式のマイクロ・サイトが付いています。クリックこそ無いものの上下左右の調整が可能で、意味も無く動かしたものです。
フレーム左側刻印はマズル側の「RUGER」の刻印を先頭に「22.CAL LONG RIFLE」「AUTOMATIC PISTOL」が2段に刻印され、さらに「MARK1」の刻印が入っています。
2つしか無いバリエーションでフレームの刻印を変えていたのは驚きでした。なおフレーム右側の刻印はスタンダードモデルと同じです。
51/2インチ ブルバレルMK1ターゲットモデル
発売の翌年、79年の3〜5月頃に新たに追加されたバリエーションモデルで、MK1ターゲットモデルのバレルバリエーションと考えるのが分かりやすいですね。
ブルバレル以外はリアサイトやフレームの刻印も67/8インチモデルと同じです。ブルバレル自体が当時のモデルガンで新鮮だったせいか、バリエの中でも一番人気があったようです。
ブルバレルはほぼフレーム径と同じサイズで、テーパーもかかっていないため22口径とは思えないパワフルさがあります。大型のフロントサイトベースもブルバレルによく似合っています。
太いバレル径に対して小さな銃口が、命中精度が高そうなイメージを増幅している気がします。
「CMC スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」の 分解
実銃と同じ分解方法と言われながら、過去に分解した時に苦労した記憶があるので、改めて今回分解の手順を確かめてみました。
実銃の分解同様、最初にメインSPハウジングのハウジングラッチを起こしますが、固くて指では起こせません。そこでドライバーを使って抉りたくなりますが、絶対NGです。必ずキズを付けて後悔します。
お奨めなのは画像のように丈夫な凧糸などで引っ張ることです。紐も切れず、ラッチにもキズを付けずに起こすことができます。
ハウジングラッチが起きたらメインSPハウジング下部を外して、ハウジング全体をフレームに沿って下方にずらしていきます。
ある程度ずらすとボルトストップピンがフレームに引っかかって下がらなくなるので、アッパーフレーム上部からボルトストップピンを押して、更に下にずらします。
更に下がらなくなったところで、メインSPハウジングの下部を上方に回転させるようにしてから下に抜き出せば,フレームからメインSPハウジングがユニットごと外せます。
メインSPハウジングが外れれば、上下フレームとボルトはそれぞれ分解できます。
グリップを外せば日常分解レベルは終了です。この段階でチャンバー内部やボルト、フレーム内の発火メカには、ほぼアクセスが可能です。フレームの各パーツはピン留めなので、必要以上の分解はしない方が良さそうです
次に各パーツをユニットごとに簡単に見てみます。
アッパーレシーバーはボルトを抜くとデトネーター以外のパーツはありません。シンプルな構造と真円の断面に実銃のローコスト設計の片鱗を伺うことができます。
レシーバー下側の形状は結構複雑で後加工の跡が目立ちます。内側のフィーディングランプ部の形状を考えると、フィーディングランプが付いたバレル部を後からレシーバー部に鋳込んだとしか思えませんが、実際どのように製作したのか謎です。
ボルトはリコイルSP・ガイドと共にユニット化されているので、そのままアッパーフレームから取り外しできます。実銃もリムファイア用のプレート型のファイアリングピンを使うので、ファイアリングプレートの形状に違和感がありません。
ボルト正面から見ると、ファイアリングプレートがセンターからずれています。それでもカートのリムは叩かずセンター近くを叩くようになっています。エキストラクターの形状のリアルさが秀逸ですね。
ロワーフレーム上部にはハンマー&シアー、ディスコネクター(トリガーバー)、セフティが見えます。パーツ自体は少ないですが、ほとんどがピン留めなので分解組立はやりたくないです。右端の穴はボルトストップピンが通る穴です。
ロワーフレーム左側のボトム付近に「1978.7」の隠し刻印が打たれています。普通は設計完了月とかなんですけど、日付を考えれば販売開始月のようですね。
分解時に最初に外すメインSPハウジングはユニット化されていて、メインSPの他にボルトストッププン、ハウジングラッチが組み込まれています。上下フレームとボルトの結合に欠かせないパーツになっています。
「CMC スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」の組立
難しいと言われる「スターム・ルガー,22オートマチック ピストル」の組立ですが、組立のポイントを説明します。
(1)ハンマーをダウン状態にして組立を始めること。
上の画像はフレームにメインSPハウジングを組み込んだ状態ですが、メインSPハウジングの頭とハンマーの間の(C)のスペースが、分解組立時にメインSPハウジングが通るスペースになります。
間違ってハンマーをコックしてしまうと(C)のスペースが無くなり、メインSPハウジングが組み込めなくなります(分解時は外せなくなります)。
組立はアッパーフレーム内にボルトを組んだ状態で、ハンマーダウン状態のロワーフレームと組み込みます。その際ボルトを引いたりしてハンマーを動かすのはNGです。
(2)メインSPハウジングの組込時に〈A〉のハンマーストラットを〈B〉のメインSPプランジャーに必ず乗せること。
ハンマーにスプリングのテンションがかかっていないと、トリガーを引いてもハンマーが落ちなくなります。それだけなら組み直せば良いと思ってしまいますが、組立直後はハンマーがダウンしているので、確認するためにはボルトを引かないとなりません。
その段階でハンマーが落ちない事が分かると(1)に書いたように「メインSPハウジングが分解できない」→「組み直しができない」という悲惨な状況になります。万が一そうなった場合は、トリガーを引きながら何度も銃を振って、反動でハンマーを動かすしかありません。
メインSPハウジングを組み立てるときにハンマーストラットは見えないので、銃口側を上に向けてストラットを下(ハウジング側)に垂らしながら組み込みます。
上手くストラットがプランジャーの上に乗っていれば、フレームにメインSPハウジングを嵌め込む最後の数ミリにスプリングのテンションを感じます。
面倒なのはストラットがプランジャーの上に乗っていなくても、ストラットが左右にずれてなければメインSPハウジングが組み込めてしまうことです。
その場合は何の抵抗もなくメインSPハウジングが組み込めてしまうので、何度か試してみて感覚を覚えることをお奨めします。
資料編
(1) 雑誌広告
月刊GUN誌 1978年8月号掲載広告
月刊GUN誌 1979年2月号掲載広告
月刊GUN誌 1979年5月号掲載広告
月刊GUN誌 1983年12月号掲載広告
(2)CMCカタログ
東京CMCモデルガンカタログ(NO、7) 1984年12月発行
79年当時の販売価格
43/4インチ スタンダードモデル・・・・・・・・8,000円
67/8インチ MK1ターゲットモデル・・・・・・8,500円
51/2インチ ブルバレルMK1ターゲットモデル・8,500円
純正木製グリップ・・・・・・・・・・・・・・・2,800円
43/4インチ・51/2インチ用ホルスター・・・・ 3,000円
67/8インチ用ホルスター・・・・・・・・・・・・3300円
参考資料
月刊GUN誌 1979年2月号(本物vsモデルガン)
月刊GUN誌 1979年4月号(モデルガンダイジェスト)
月刊GUN誌 1999年11月号(RUGER MK1)
月刊GUN誌 2001年1月号(RUGER MK2)
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