(旧)和室工房 B&T VP9 レビュー
実銃についての簡単な説明
スイスB&T(Brugger &Thomet ブルッガー&トーメ)社が2010年のIWAショーにて発表したサウンドサプレッサー・ピストルがVPです。VP9はVETERINARY(獣医) PISTOL 9mmの略で、獣医師が野生動物を安楽死させるために開発されたと言われています。
形状的に大戦中イギリスが開発した消音拳銃ウェルロッドにそっくりで、構造的にもウェルロッドをベースにしたものと考えられています。銃全体の半分をサプレッサーが占め、アクションは手動のボルトアクション、グリプと一体となった脱着式のマガジンで構成されています。
サプレッサーのマズル形状の異なるタイプや、トリガーガードの無いタイプ等数種類のバリエーションが確認できますが、現在はトリガーガードとグリップセフティの着いたタイプのみ生産されていると言われています。
(旧)和室工房 B&T VP9について
(旧)和室工房さんは2014頃からコミケなどを中心に活動してきた、同人グッズの製作販売をしている工房のようで、「同人フルスクラッチエアガン」はVP9で4作目(量産モデルとしては3作目?ウェルロッドMK2、ジャッカルの日「ライフル」までは確認できました)とのこと。
前作の「ウェルロッドMK2」と同様のプッシュ式エアコッキングメカをVP9でも採用しています。殆どのパーツが金属やABSの削り出し加工の、小ロット生産となっています。
パッケージは既成サイズのダンボール型パッケージに、商品名をシール貼りしたもの。会場には実銃に似せたトランク型ケースも展示してありましたが、昨今のモデルガンなどと同レベルなので、必要充分でしょう。
パッケージ内にはサプレッサーと本体、サプレッサー分解用治具とオプションのラバーバッフル、スポンジしたには取説が入っています。パッケージ内だけでは無く蓋部分にもスポンジが貼られていて、ローコストながら丁寧な作りになっています。
パッケージから本体を取り出します。サプレッサー、フレーム&マガジンの3つのパーツに分かれています。この状態だけでワクワクしてしまいますね。
まずはサプレッサーから見ていきます
付属治具を使ってサプレッサーを分解すると、先端のキャップとインナーパーツに分解できます。付属のラバーバッフルはキャップとインナーの間で固定することになります。
サイレンサー先端から見ると実銃同様、ラバーバッフルが銃口を密閉した感じになっています。
実銃ではこの形状のバッフルが4枚入っていますが、トイガンでは1枚だけです。実際にBB弾を発射する際には抵抗になるので、撃って遊ぶ際には外しておいた方が良さそうです。
サプレッサー内部にはエアガンでお馴染みの吸音スポンジが入っています。実銃は6枚のスペーサーガ入って隔壁を造る構造ですが、エアガンとしての消音機能を重視した結果ですね。
サプレッサー基部には実銃同様ガス孔が開けられています。サプレッサーを取り付けると見えなくなる部分ですが、リアルに再現しています。
次にフレーム側を見ていきます
サプレッサーはアウターバレルにねじ込んで固定しますが、アウターバレルのスレッドは逆ネジ仕様なので注意が必要です。サプレッサーについているOリングによって、フレームとのガタは全くありません。
インナーバレルの長さはアウターバレルに合わせて5㎝程(実銃は2㎝なんだとか)。画像では見えませんがフレーム内のアウターバレル部には、サプレッサー基部と同様ガスの放出孔が開けられています。
フレームはABS、マガジンハウジング部はアルミの削り出しと言うことです。現行モデルではマガジンハウジング部の凹部には「B&T」のロゴが入っているようですが、モデルアップされた初期タイプは無地のようです。
装着したマガジンには多少ガタがでますが、これは削り出しの製造工程上必要な公差なんだそうです。これ以上タイトにするとマガジンが入らなくなる可能性が出てくるそうです。
マガジンキャッチの上方にはプッシュ式のセフティが付いています。左側にレッドが見える状態でOFF、押し込むとONになります。現行モデルではグリップセフティが付いた代わりに、マニュアルセフティは廃止されているようです。
ボルトノブはアルミ削り出しで溝の多いタイプ。手のひらで押し込むときに効果的な形状をしています。
ボルトを引くとロッキングノッチも再現されていますが。これはボルトの部と一体になっています。装弾&コッキング時に回転させる必要があるので、必要なパーツではありますが凝った作りですね。
実銃よりもコッキングのストロークが短いのは、ピストンを内蔵している構造上仕方の無いところです。
ボルトはそのままシリンダーになっていて、容量を稼ぎながら強度を確保するためにノズルまで一体のスチール削り出しで作られています。さらに別パーツでエキストラクターまで再現されています。
ボルトクローズの位置合わせ用の溝にレッドペイントが省かれているのが残念。気になる場合は自分で塗装すれば良いだけですけどね。
エジェクションポート回りに機械加工の跡が残っています。
実銃ではフレーム右側のチャンバー部にはB&Tのロゴが入っていますが、トイガンでは全て省略されています。レシーバー値にの回りに実銃のような面取が無いのが残念です。
独特な形状のトリガーもきちんと再現されているので、メカニカルな感じを受ける部分でもあります。。
実測重量は約400gと実銃の重さの半分以下ですが、素材が違うのでしようがないですね。軽い割には剛性感が高いので、操作をしていても安っぽさは皆無です。
マガジンはケース部分がアルミのツヤ有りのアルマイト仕上げで、グリップ部分がキャスト製となっています。残弾確認孔から覗くダミーのカートが超リアルです。
BB弾はマガジンリップ前方から1発ずつ込めるタイプです。バシバシ連射するタイプのエアガンでも無いので、欠点と言うほどでは無いですね。
取説はカラー28Pの本格的なモノ。デザイン的に東京マルイを意識した感じが見受けられたり、同人誌らしい遊び感満載です。内容的にもしっかりしていて、ベースになった東京マルイのものにひけを取りません。
ぱっと見ですが、このボリュームで誤字脱字が無いのも凄いです。
試射後の簡単なコメント
プッシュコッキング式なのでボルトを押し込むときに、それなりの力が必要ですが手のひらを使って押し込むと比較的簡単にコッキングできます。
トリガーは昔ながらのコッキング式の感覚で、重めながらスパッと切れる感じです。固定HOPのようですが、室内で撃つ限りは素直な弾道です。
東京マルイ0.2gBB弾使用で、初速はほぼ53m/s 前後。規制値は問題無くクリアしています。エアコッキング式だけあって、初速のバラツキが殆どありませんでした。
最後に(サマリー)
今回初めて(旧)和室工房さんのトイガンを手にしましたが、クォリティの高さに驚きました。造型の正確さもさることながら、工作精度も高くメーカー製並のデキの良さです。
ほぼ全パーツが削り出し加工のフルスクラッチモデルであることを考えると、ショップカスタムを遙かに凌駕するレベルです。エアガンと言っても、ほぼ1/1スケールの模型ですね。モデルガン的な拘りが随所に見受けられます。
マイナー機種なので一般受けはしないと思いますが、好きな人にはたまらないモデルです。モデルアップの選択も上手いところを付いていると思います。
実際の製作における苦労は想像するしかありませんが、従来のモデルガン製作の系譜と異なった所で、VP9のようなモデルと製作者が出てくると、国内モデルにも少しは希望が持てますね。
・(旧)和室工房 B&T VP9 (税込)35,000円
・(旧)和室工房B&T VP9予備マガジン (税込) 7,000円
参考資料
月刊GUN Professionals 2015年9月号
(旧)和室工房 HPはこちら
http://kyuuwasitukoubou.hatenablog.com
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