マルシン SIG P210-6 ブラックHW レビュー

レビュー

実銃についての簡単な説明

SIG210の開発は1930年代に始まっていて、当時軍用制式拳銃だったルガーM1900の後継モデルとしてフランス制式拳銃M1935Aの製造権を得る事からスタートしています。

口径をフランス独自の7.65mmMASから9mmパラベラム化するのに時間がかかりプロトタイプが完成したのが1944年。第二次大戦の終結によって開発は足踏み状態になるものの、スイス陸軍によってトライアルが開始されます。

トライアルと前後して1947年にスウェーデンのスポーツ・シューティング協会からターゲットピストルの限定生産を打診されたのがSIG−PETTER44/8で、このモデルにはデンマーク陸軍も興味を示しています(PETTERはM135Aのデザイナー名 Charles Petterから)。

そこでスウェーデン・デンマーク向けに改良されたモデルがSIG−PETTER47/8(MGCがモデルアップしたSP47/8)で、スイス陸軍も1949年にPISTOL MODEL 1949(通称P49)として制式採用されています。

SIGは同モデルをコマーシャル市場に流す際に名称をP210とし、最初のバリエーションをP210−1(ウッドグリップ、フィクスとサイト、ブルーフィニッシュ)としています。

バリエーションはP210−1からP210−8まで存在し、P210−6は1950年代初めに登場したフルアジャスタブルサイト付きサイトモデルがベースとなります。

その後1985年に製造費の高騰等からP210シリーズは製造が中止になります。

1994年にCNCマシンの導入などによりP210−5,P2106が再生産されますが、現在では新型ヘビーフレームとボタン式マガジンキャッチとなったP210 LEGEND、 P210 SUPER TARGET等がらいんなっぷされています。

SIG社自体も2000年にSIG社の銃器部門はスイスアームズ(SWISS ARMS Neuhausen)社に売却され、現在「SIG」「SIG SAUER」(アメリカ法人「SIG ARMS」も「SIG SAUER」に改称)はSWISS ARMSの傘下ブランドとなっています。

マルシン SIG P210-6 GBBについて

マルシンがSIG P210のGBBを発売したのは2008年。スイスアームズから資料提供を受けて製作されたSIG公認モデルとして登場した意欲作でした。

特に8mmBB弾仕様はメッキパーツを多用し、スイスアームズ社の専用BOX付けで販売されるなどDX版としての性格が強い物でした。

当時は8mmBB弾仕様と6mmBB弾仕様の2つのバリエーション展開でしたが基本パーツを共用化したため、6mmBB弾仕様ではマガジン装弾数が少ないなどの問題が生じています。

最初はABS仕様でしたが後にHW仕様も作られたようです。作動性は当時としては問題ないレベルと感じましたが、軽いABSスライドだったので何とか動いていたような印象です。

2018年4月に10年ぶりにマガジンが改良され、6mm BB弾専用仕様とな再生産されました。

マルシン SIG P210-6 ブラックHW について

パッケージは最近のマルシン製トイガンに共通するロゴを中心とするデザインながら、ロゴはマルシンのものを使った汎用BOX。HP上では現在もSIG公認モデルと謳っているだけに違和感があります。

中箱部分は、従来型の発砲スチロールによるもので、SIG P210−6専用では無くベレッタM92Fとの共用デザインのようです。

本体はHW素材のつや消しブラック一色で、以前の8mmBB弾仕様にあったような刻印のホワイト文字は無し。

セフティー部分の文字の色も省略されています。トリガー、ハンマー、スライドストップレバーの3つの金属パーツのみはシルバーメッキ仕上げとなってコントラストを付けています。

購入時にセフティレバーの可動部分にメンディングテープが貼られているのは、作動確認などでレバーを動かしたときにキズが付かないように配慮したものと思われます。

左側スライドには「P307088」のシリアルNO,と「SIG」のロゴマーク「P210-6」、フレームにはスライドと同じシリアルNO,とプルーフマークが入っていますが、旧SIG社時代とは異なり「MADE IN Swizerland」の刻印はありません。

右側フレームには「MARUSHIN INDUSTORY CO.,LTD MADE IN JAPAN」のオリジナル刻印が入っています。チャンバー部には「SIG」マークと「9Para」の口径表示と「P307088」のシリアルNO,が実銃どおりに入っています。

刻印関係は2008年に発売されたものとほとんど変更は無いようです(右側フレームにあったASGKの文字が無くなっているのは組合の分裂を表していますけど)。メインパーツの金型を、そのまま使用しているようですね。

グリップはHW素材で木目調の塗装が施されています。マガジンキャッチはダイキャスト製ながら、内側を空洞にしてリアルに再現しています。

フレーム後部のグリップ・スパー部分が長めなのは1994年以降に再生産された改良モデルをモデルアップしているからでしょう。

グリップはさらに内部にウエイトが仕込まれ左右で約185gの重量を稼いでいます。マガジン抜きの本体重量が約600gですから3割以上をグリップ重量で稼いでいることになります。

フレームのパーティングラインはしっかりと消されています。トリガーガード内側のパーティングラインも綺麗に消されているのは好感が持てます。

リアサイトは金属製の別パーツ。こういう所はモデルガンメーカーらしい拘りですね。サイト前にあるスイス国章がP210らしいポイントです。

ハンマーを起こすと、ブリーチ部分に大きなマイナスネジが顔を出すのはマイナスポイント。設計が古いとは言え、こういう目立つ部分がそのままになっているのは残念です。

スライド上部の細いセレーションもリアルで良い感じに仕上がっています。フロントサイトも金属製で別パーツなのは嬉しいところです。

何故かマズル部分にはライフリングがありません。最近は海外メーカーのエアガンでも再現されている場合が多いので、この部分も残念に感じるところです。

残念と言えば、スライドをホールドオープンさせる位置が10年前と変わらず、かなり前方になっていること。本来はチャンバー部がスライドで完全に隠れるはずです。この部分が改良されていないと言うことは、作動性の改善も不安があります。

次に簡単に分解してみます

分解はマガジンを抜いてからスライドをホールドオープンさせて、スライドストップレバーの軸を右側から押してレバーを抜き出し、スライドユニットをフレーム前方に抜き出します。

説明書(なんと8mmBB弾仕様のものが付いてきます)を見るとメーカーが推奨している分解はここまでになっていますが、スライドからバレルを外すところまで分解を続けます。

リコイルSPユニットはそのままでは外せないので、ガイド状の金属製のフロントリコイルウェイトを先にスライドから外しながら、一緒にスライドから外します。

この時フロントリコイルウェイトとスライドの間に細いドライバーなどでスキマを作ってからツメで後方に引っ張ると上手く外せるようです。

次にアウターバレルごとインナーバレルを画像の位置ぐらいまで引き出して右に捻るようにするとインナーバレルが抜き出せます。

インナーバレルを抜いた後、アウターバレルをさらに右に捻りながら引き出すと、スライドからアウターバレルを外すことができます。シリンダーノズル部分が干渉するとはいえ、バレルの分解にはコツがいる感じです。

通常分解はここまでです。ブリーチ部分は他メーカーと同様スライドを広げながら外すようですが、HWスライドだと割れが心配なので温めるなどの工夫が必要そうです。

フレーム部分はセフティレバーを外してからハンマーユニット部分を外せば分解できそうですが、メーカー修理ができなくなる可能性もありそうなので自己責任の世界ですね。故障の場合は素直にメーカー修理にした方が良さそうです。

バレル基部にあるマイナスネジがHOPUPの調整ネジです。ブリーチ部分を見るとシリンダースペースの小ささがよく分かります。

インナーバレルは先端にスリーブの付いた独特のもの。アウターバレルが8mmBB弾仕様のために付けられたパーツですが、マズル側にウェイトとブレ止めを兼ねさせた効果的な形状となっています。

マガジンは給弾レール部分が改良されて6mmBB弾専用になったようですが、1列給弾で装弾数12発というのは若干少ない気もします。

マガジンのパッキン部分はガスルートの穴が旧モデルよりも何故か小さくなっています。密着度を高める為の改良なのでしょうか。

試射後の簡単なコメント

メカが改良されたと聞いていたので、試射後の第一印象は、期待をかなり裏切られた感じになりました。

室温23℃、マガジン表面温度24℃・0.2gBB弾使用で1マガジン試したところ、ゆっくり撃ったにもかかわらず4発目で生ガスを吹き出すことになって1マガジン撃ち切れませんでした。

かろうじて計れた弾速は46.97m/s。平均でも何でも無いので、参考値レベルですが、マルシン製デリンジャー並みの低レベルです。何度か試してみたものの改善が見られなかったので、次にドライヤーを使ってマガジンを暖めてみました。

マガジン表面温度は30℃となっていたので試射したところ、今度はかろうじて1マガジン12発を撃ち切ることができてホールドオープンもできました。

その時の弾速が55〜589m/sだったので夏場の気温になれば、まともに動くレベルの性能のようです。

旧モデルを撃ったときも夏場だったので ここまで酷い印象はありませんでしたが、10年経った改良モデルでこの性能は正直納得いかないですね。

最後に(サマリー)

実銃では世界最高品質のオートと呼ばれて特別視されているSIG P210ですが、トイガンにおいては旧MGC(現CAW)のモデルガンとマルシンのこのモデルしか無いのが現状です。

旧MGCのモデルガンは設計が古いのでCAWが手を入れてもリアルさには程遠いし、ルックス的にもマルシンに期待せざるを得ないのが正直なところ。

しかしわざわざマガジンを改良して再販したモデルがこの性能というのは正直ガッカリです。現行モデルのGBBとしての性能に達していないと言わざるを得ません。

もちろん所持している個体特有の可能性もありますけどね。スライドの軽いABSモデルだったらここまで酷くは無かった可能性もあります。

外見のデキ自体は非常に良いので、ホント勿体ないですね。もう少し中身を弄れば良くなりそうなんですけど。

マルシン SIG P210−6 ブラックHWモデル・・・希望小売価格23,800円(税別)
マルシン SIG P210−6 ディープブラックABSモデル・ 希望小売価格24,800円(税別)
・マルシン SIG P210−6 ABSBKモデル・・・・・希望小売価格22,800円(税別)

参考資料

月刊GUN誌 2005年10月号
月刊GUN Professionals 2012年12月号

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