ウェスタンアームズ ベレッタ M-1934
Old Toy Gun Reports No.07
2015/07/12 追加更新

ギャラリー

既に製造されていない懐かしのモデルガンを中心に取りあげる「Old Toy Gun Reports 」
第7弾はウェスタンアームズが過去に生産していた「ベレッタ M1934」を、ノーマルモデル+当時発売されていた3バリエーションを紹介します。

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ベレッタM1934の実銃についての簡単な説明

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1860年創業のベレッタ社が1934年に開発した口径380ACP(9mmショート)の中型セミオートピストルがM1934。イタリア陸軍の制式拳銃となって終戦の43年まで採用されていました。戦後もM934として1980年まで生産されたようです。

同時期のワルサーPP・PPKと異なりシンプルな部品構成で、シングルアクションの堅牢でローコストな設計となっています。

翌年作られたバリエーションモデルのM1935の口径が32ACP(7.65mm×17)だったように、最初から380ACPとして設計されています。バリエーションで同口径を追加したPP・PPKとは、同カテゴリーながら元々のコンセプトが異なっているようですね。

ちなみに戦後版M934に付けられていた猫科の愛称は「クーガー」です。

ウェスタンアームズ ベレッタ M—1934 ノーマルモデル

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1980年に発売されたウェスタンアームズ(以下W.A)製 ベレッタ M−1934は同社初の量産ABS製ブローバックオート ピストルです。ベレッタMー1934のモデルガンとしては、MGC、ハドソン、CMCの金属モデルに続く4社目のモデルアップです。

当時提携していたMGCの金属ベレッタM−1934のパーツ類の供給を前提に設計されているので、MGC製ベレッタとは双子のような関係です。各パーツのサイズや全体のデザインにかなりの類似性を見る事ができます。

実際マガジンや一部の金属パーツはMGCと共用できました。またデトネーターブローバック技術に関しても正式な提携をしていたため、MGC以外で唯一デトネーター方式ブローバックを謳っていました。

発売時期は次作のワルサーPPK/Sよりも長く、7mmキャップ仕様にマイナーチェンジされて85〜6年頃まで販売されていたようです。

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パッケージはシルバーに当時のウェスタンアームズロゴが白抜きで入り、「Beretta M−1934」の商品名が大きく入ったシンプルなもの。当時は商標なんて概念はウェスタンアームズにも無かったんですね。細かい事ですが、シルバーは特色なので、見た目以上に印刷コストがかかる仕様です。

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下箱は発泡スチロールのみで作られています。サイズ的は本体を入れるのにKギリギリのサイズで、辛うじて別売のカートが2箱と付属のローダー等が入るスペースが空いています。

この下箱部分はワルサーPPK/Sと同じものなので、M−1934出荷前にはPPK/Sの生産計画が立てられていた事が分かります。

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スライド左側をアッップで見ると、スライドの平面にヒケがうねりが目立ちます。刻印部分も文字列全体が凹んでいます。80年代の技術と言えばそれまでですが、当時はこれが当たり前でした。

スライドストップが入るスライド表面の溝や、ディスコネクター先端がスライド内部に隠れるようになったのはW.Aによるデザイン変更。MGCのベレッタは両方ともスライドが抜けていました。

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同じ個体でも、表面キレイにしてライティング位置を変えるだけで、全く違って写るから不思議です。なお、刻印のホワイトレターは個人で入れたものです。刻印は製造年が入っていない以外は実銃に正確ですけど、書体が全く異なるので見た目のイメージは別物にしか見えません。

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スライド右側は、当時のウェスタンアームズロゴのみ入っていますが、実銃はスライドトフレームにシリアルNOのみ打刻されています。情報が少ない当時は全く気になりませんでしたが、今のモデルだったら抵抗がありますね。

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(上下画像とも、W.A カーボンブラックM1934 ガスガン)

参考までに、ウェスタンアームズの現行ガスガンの刻印は書体・文字ともに実銃同様になっています。

スライド右側のシリアルNO以外の「This Product〜」の3行は、悪名高きBeretta商標取得済みの表記。本来のシリアルより目立ってしまうのは本末転倒です。グリップ下に隠して入れる配慮がないのは、スマートさに欠けますね。

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グリップは樹脂製の中空で、強度を出すために内部にリブを付けたもの。モデルガンのグリップによく使われていた形式です。

実銃はプラのグリップをスチールに重ねた二重構造で、表側から見るとプラグリップの縁部分がスチールで補強されたように見えます。エアソフトガンを含めて、現在までトイガンで再現されていない手の込んだ作りのようです。

次は簡単に内部をみてみます

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ここまでの通常分解は、グリップのスクリューを外す以外は工具無しで行えます。分解方法は実銃と同じで、セフティレバーを掛けてスライドをホールド−プンした後、バレルを後方に抜いて行います。実銃どおりのメンテしやすい分解方法ですね。

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初期のABSモデルなので金属のサブシャーシという概念がありませんが、フレーム後部を金属製の別パーツとし、前半のプラ部分と組み合わせることで強度と重量を稼ぐ独自の方式となっています。

初期のモデルでは、実射時にハンマーがシアから外れてフルオートになる傾向があり、後期モデルではパーツ変更が行われているようです。

自分的には、たまに2連射したぐらいの記憶しか無いので、フルオートの重症度がよくわかりません。実際どれほど酷かったんですかね。

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スライド内部、ブリーチブロック部分にはファイアリングブロックが入っていますが、文字通りは言っているだけなのでフレームが無いと落ちてきます。センターファイア方式はこの時期メーカーには敬遠されていたので、カートリッジ全体を押して発火させるタイプです。

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M1934の欠点の一つがバレルの強度で、発火すると割れたり何もしなくても勝手にヒビが入ったりします。後にバレルの素材を変えて、少しは割れにくくなったようですが、82年頃購入の所持モデルも、印の所にヒビが入りました(補修済みです)。

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マガジンもMGCからのパーツ供給と言われていますが、マガジン側面の二つ窓等外見上はそっくりです。サイズ的にも互換性があるのでパーツ供給は事実でしょうね。

マガジンフォロアーのみはW.Aオリジナルで、最終弾発射後にマガジンフォロアー後端にスライドがぶつかり、スライドストップするようになっています。

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カートは別売で、5mmキャップ火薬を使う専用のもの。次に製作されたPPK/Sにも使用されました。同じ口径ながら、同時期発売のMGCのM11とカートの共有はできませんでしが、肉厚があって重いカートだったので反動には貢献していたはずです。

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85年頃にM−1934は7mmキャップ仕様に変わったようですが、現在までに本体もカートも一度も現物を見た事がありません。販売数が極端に少なかったと考えるべきなんでしょうね。

ベレッタ M−1934 サテンフィニッシュカスタム

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ベレッタM−1934の初バリエーションモデル。発売は81年頃だと思います。バリエーションというよりもMー1934のカスタム仕様で、当時のW.Aカスタムらしい仕上げになっています。

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全体をサテンフィニッシュ仕上げにしてABS特有のテカリやヒケを抑え、主要金属パーツも同系統のフィニッシュとして重厚感と一体感感を出しています。他にも内部の金属パーツやエキストラクターはメッキ仕様で、木製のHWグリップが標準装備でした。

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木製グリップは、裏に真鍮を貼ったHWタイプと呼ばれるもの裏側の機械加工跡が良い感じです。この時期のW.Aカスタムには欠かせないパーツでした。今にして思えばエジプト製のHWグリップによく似ていますが、ロゴが入っているわけでも無く、関係性は不明です。

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フレーム内部の金属パーツやエキストラクターにはシルバーメッキが掛けられているのは、視覚的要素だけではなく「発火しても錆びない」実用性も考慮されているのでしょう。

マガジンのメッキ仕上げも同じ意匠ですね。バックストラップの金属フレームを固定するピンまでメッキ仕上げになっているのは、カスタムモデルならではの仕様ですね。

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ベレッタ Mー1934 フレームシルバー(ニッケル)

82年頃発売された、W.A ベレッタ M−1934のバリエ−ション第2弾。こちらはカスタム仕上げではなく、ノーマルモデルに対してのカラーバリエの位置づけです。

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オルジナルのABSスライドにニッケルメッキ仕様のバレルとフレームを組み合わせたもの。画像の木製グリップはオプションで、本来はノーマルモデルと同じプラグリップです。

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モデルとなった実銃は確認できていませんが、現在もW.AガスガンのM1934にもバリエとして同じタイプが発売されていたり、過去にタナカもバリエで発売していたような記憶があるので、有名なモデルなんですかね。

シルバーメッキの仕様が,以前のガバカスタムやM59カスタムのマット調のものではなくニッケル長の光沢のあるものになっています。

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ベレッタ特有のオープンスライドにシルバーのバレルのコントラストは良いですが、強度に問題があるバレルにメッキを掛けているのでヒビの心配があります。今のところ問題は無さそうです。

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マガジンはメッキパーツが使われていますが、内部の金属パーツはノーマルと同じブルー仕上げ。コストダウンなのか、カスタムモデルとの差別化の仕様だと思いますけどコントラストはキレイですね。

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ベレッタ M1934 フレームシルバー(ニッケル)の販売期間は長かったようで、85年のW.A カタログにも7mmキャップ仕様モデルとなってノーマルモデルと共に掲載されています。

ベレッタ M−1934 サテンフィニッシュモデル

発売はフレームシルバーと同じ82年頃。新しいバリエーションというよりもサテンフィニッシュカスタムのローコストモデルと言った位置づけで、フレームシルバーと同じくカラーバリエーションの一つになりました。

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”カスタム”との違いは、標準装備だったHWグリップがノーマルのプラグリップに変更になっているだけです。グリップ以外は内部パーツのメッキ仕上げも”カスタム”と変わらないので、価格的にはサテンフィニッシュモデルの方が割安感がありますね(画像の木製グリップはオプションです)。

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販売期間は、フレームシルバーモデルよりも短く85年にはカタログ落ちをしていますので、82年からの3年程度の販売だったと思われます。もしかしたら在庫処理的に価格を下げて販売したのかもしれません。

ベレッタ M−1934純正アクセサリー

⑴ 木製グリップ

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木製グリップはローズウッド風の木質で、プレーン地ながら縁部分が加工されています。裏側もフレームの突起や凹部にフィットするように手間の掛かった加工がなされています。

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残念なのは、左側グリップの左上部分の寸法が足りずフレーム穴が見えてしまうところです。所有する2つとも同じ傾向なので、個体差というよりも加工サイズそのものに問題があったと思われます。

⑵ 専用アルミサイレンサー

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金属モデルガン時代から使われている、口金によって使用銃を替えられるタイプ。M1934発売初期はスチール製の汎用ショートタイプ(MGC製スモールの供給?)が販売されていたようですが、後から専用のアルミ製サイレンサーが開発されました。口金部はスチール製で、口金を変える事でワルサーPPK/Sにも使用できました。

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資料編

⑴ 取扱説明書

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A5 三つ折りサイズ 1C両面印刷(用紙の厚さがが異なるものもあり)

⑵ 各種宣材

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A4サイズ 横型フライヤー 4C/1C

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A4サイズ 縦型フライヤー 4C片面

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月刊GUN誌 1980年4月号 掲載広告

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月刊GUN誌1981年2月号 掲載広告

WA M1934 gun8201 S-wm
月刊GUN誌1982年1月号 掲載広告

WA1934 gun1982-06 S-wm
月刊GUN誌1982年6月号 掲載広告

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ウェスタンアームズ80年度カタログ A4サイズ・4C・3−4P見開き

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ウェスタンアームズ85年度カタログ B5サイズ・1C・20−21P見開き

80年代当時の販売価格

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ベレッタ M—1934 ノーマルモデル 8,500円
ベレッタ M−1934 サテンフィニッシュカスタム 18,000円
ベレッタ M1934 フレームシルバー(ニッケル) 10,800円
ベレッタ M−1934 サテンフィニッシュモデル 9,500円

専用カートリッジ(7発入) 700円
専用木製グリップ 2,500円
専用アルミサイレンサー 1,200円
サイレンサー口金 200円
ベレッタ専用ヒップホルスター 2,500円
ベレッタアップサイド・ダウン・ショルダーホルスター 4,700円

参考資料

月刊GUN誌 1980年6月号
月刊GUN誌 1989年1月号
月刊GUN誌 1993年8月号
月刊コンバットマガジン 1980年7月号
月刊GUN Professionals 2013年5月号
月刊GUN Professionals 2014年10月号