マルシン FN Five-seveN EXB2(Co2 GBB)レビュー
〈2017.05.30. バリエ追加 加筆〉

レビュー

最初に、実銃についての簡単な説明

FN Five−seveN(FとNが大文字なのが正式な商標ですが、長いので以降5−7に統一します)はFN(ファブリック ナショナル)ハースタル社が開発したPDW(Personal Defense Weapon:個人防衛火器という新カテゴリー)P90用に作られた軽量高初速の5.7×28mm弾(SS190)を発射できるハンドガンとして1995年に開発されました。

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(上:画像出所:月刊GUN誌2000年5月号)

初期型はストライカー式の変則ダブルアクションメカでノンセフティ。外観もダルマ型のトリガーガードや刻印、スライドの滑り止めテクスチャーの形状が異なります。

当初は市販されませんでしたが、2004年頃から貫通力を落としたハローポイント弾とともに一般販売されるようになりました。それに合わせてメカもハンマー方式のシングルアクションとなり、トリガーガードもストレートなものに変更されスライドの滑り止めもお馴染みのものになっています。

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この頃からミリポリ用はタクティカル、一般向けコマーシャルモデルはUSGと言う名称になっています。2005年にAWBが解除される前は、USGは10連マガジン、タクティカルは20連マガジンという大きな違いがありましたが、2005年以降はUSGも20連マガジンとなり外見上の違いはサイトの違いぐらいしかないようです。

ちなみにマルイがモデルアップしたのがタクティカル、マルシンがUSGをモデルアップしています。

現在ではフロントセレーションのついた新型スライド付のモデルがFN 5−7 MK2として販売されているようです。

マルシン 5−7 EXB2について

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2014年7月末にマルシンから発売されたFN 5−7EXB2は国内メーカー(と言ってもマルシン以外はありませんが)が開発したCO2内蔵式ガスガンの第2弾で、ハンドガンとしては初の製品化です。

ベースとなるFN 5−7GBBは2008年にマルシンがモデルアップしたもので、8mmと6mmBB弾の2モデル併売となっていました。

今回Co2ハンドガンのベースとなった背景には、競合モデルに販売面で苦戦していた事に加え、Co2ボンベを内蔵しやすいマガジンの大きさがあったと思われます。

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パッケージは前モデル(マルシン FN−5−7 6/8mm ブローバック)のものより小型化され、黒いスポンジを緩衝材としたシンプルなものになっています。付属品としてCo2ボンベ3本、ボトムレンチ、BB弾が付属しています。初回(予約?)特典として試射用ボンベ25本が別途付いてきたのはお得感がありましたね。

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FN社の正式ライセンスを取得しているので刻印もリアルになったと聞いていましたが、グリップのFNロゴが正式なものになっているだけで、スライドは前作のままので特徴的な斜体文字にはなっていません。

個人的には刻印の書体を変えるだけでスライドの金型をいじるくらいなら、MK2スライドにして欲しかったりもするので、前作の流用でコストが抑えられているならスルーできる部分ですね。

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スライド左側、エジェクションポートの反対側にあるピン穴のようなモールドはチャンバーインジケーターピンなのですが、気になる場合はサイズの合うスチールボールモールド部分に接着すれば、それらしくなると思います。

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スライド後端のコッキングインジケーターは前作同様再現されています。目に入りやすい部分なので、あると嬉しいですね。実銃でも暗いと全く役に立たないと思いますけど、無いよりはあった方が良いんでしょうね。

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リアサイトはアジャスタブルタイプで、上下左右の調整ができますがクリックはありません。ホワイトドットもやや小さい感じです。ベース部分のプラの地肌が浮いて見えるところと合わせて、残念なところです。

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フレーム右側には前作には無かった金属製のシリアルプレートが付いています。小さな所ですが、改良されているのは嬉しいですね。

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レイル形状はピカテニィータイプでレイル幅も規格に近そうですが、レイルの溝のサイズが若干広めで、手持ちのアクセを複数試してみても付けても全て前後のガタがあります。

この辺は実銃でもラフな作りなんですかね? 前後にガタがあると実銃の反動で取り付けたアクセサリーに支障がありそうですけどね

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最大の改良点というか、このモデルのポイントがCo2内蔵のマガジンでしょう。マガジンボトムはM1カービンの時と違って黒染めされています。

Co2ボンベを入れてボトムを付属のレンチ(FN HERSTAL名がプリントされています)を使ってねじ込んでマガジンの準備は完了です。個人的には専用レンチを無くすのが嫌なので、GMのブッシングレンチの反対側を使ってねじ込んでいます。

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驚いたのがマガジンの重量で約450gもあります。マルイ製5−7のマガジンが320gしかないので、サイズの割にはかなり重いことになります。Co2のガス圧に対処するためと改造防止策が組み込まれていることが影響しているんでしょうか。

ちなみにマガジン抜きの本体が350g程度しか無いので、本体よりもマガジンが重い事になります。実銃のフル装弾時の重量が798gとされているので、マガジン込みでほぼ同じ重量となるのはさすが?なのかな。

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(上:マルシン製マガジン、下:マルイ製)

マガジンの給弾レイル部にも大き変化がありました。前作の6mm用マガジンは基本パーツが8mm用と共有だったのでBB弾の隙間が多く、結果装弾数が少ない(実銃よりも少ない18発)ものとなっていました。

今回ようやくマルイ並の効率の良い給弾レイルになったことで、22発の装弾数を達成。それでもマルイ製よりも4発少ないですけどね。

また前作で本体にマガジンを装着したときに隙間が空いてしまう欠点も、マガジンが新しくなった事で改善されています。マガジンキャッチ用の溝は両者とも左右ににあるので、マガジンキャッチが入れ替えられればアンビも可能。

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(左:5.7mm×28弾 右:9mmパラ ※どちらもダミーカート )
FN5−7のマガジンが大きい(前後に長い)理由は使用弾薬によるものですが、実際にダミーカート(Right製)を見てみると大きさが実感できます。

5.7mm×28弾の全長が39.7mm、薬莢部が28.4mmなのに対して、比較の9mmパラの全長が28.1mmですから、弾頭分10mm程も長い感じですね。

内部構造の簡単な説明

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分解はフレームのストリッピングレバーを後方に下げてからスライドを前方に抜き取るだけですが、ストリッピングレバーの動きが固いので、スライドを後方に下げてから行った方がスムーズに行くようです。

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スライド内側はこんな感じ。前作と比べてバレル周りが変わっているぐらいの印象しか受けません。ブリーチ部分のGBBメカもガスルートが細目ですが見慣れた形状です。最も、Co2の圧力をコントロールしているのは主にマガジン側になるので、当然なのかもしれませんね。

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前作と最も変わったのがバレル周りですが、インナーバレルとほぼ同径のアウターバレルにはリコイルSPがユニット化して取り付けられて、実銃にかなり似た形状に変わっています。

ホップ調整はチャンバー下の金属ダイヤルを回す事で行いますが、スライドにバレルを組み込んだままでは操作しにくいのは実射には不便な所です。

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スライドのスライドストップノッチには金属パーツで補強されています。今回300発程度撃っていますが、金属パーツが少し削れて銀色になっていますので必要な対応ですね。

今回実銃と違ってスライドのインナーフレーム全体が金属製ではなくABS製なのに初めて気づきました。本体重量が軽い訳ですね。前作はどうだったのか憶えてないので気になります。

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フレームには、実銃にあるスライド・ブレーカー(スライドが早期に解放しないようブレーキをかけるパーツ)がダミーながら再現されています。セフティ部分やハンマーなどのメカもアレンジはされていますが,結構リアルに作られています。

説明書には書いていませんが、パーツ形状を見る限りマガジンキャッチも入れ替えてアンビにできそうです(SPが強く分解に手間取りそうなので、今回実際に試していません。出来なかったらごめんなさい)。

〈2017.05.30 加筆〉
FN Five−seveN EXB2のバリエーションモデル

TANカラーモデル

2015年11月に発売された「Five−seveN EXB2」の最初のバリエーションモデル。当初の発売予定よりも大幅に遅れた理由は、FNサイドからフレームのTANカラーの色のやり直し指示があったからだといわれています。

その分、フレームカラーは他のトイガンのTANカラー色とは異なる独特の色合いになっています。セフティやマグキャッチ等のレバー類はブラックカラーに変更されているのも実銃どおりです。

内部メカに関しては、初期モデルと変わったところは見受けられません(チャンバーとインナバレルの構造が変わったとされていましたが、見た感じ違いが分かりませんでした)。

サプレッサー モデル

2017年4月に発売されたバリエーションモデル。14mm逆ネジタイプのサプレッサースレッド付きバレルを新規作成し、実銃サプレッサーメーカー「GEMTECH」社からライセンスを受けたアルミ製サプレッサーが同梱されています。

当初はサプレッサー&サプレッサー用バレルのコンバージョンキットの発売も予定されていましたが、直前に作動不良を原因として発売が中止されました。

サプレッサーの取付部分とアウターバレルのサプレッサースレッドはともにアルミ削り出しで作られているようで、ガタ無くピッタリ取付が出来ます。

サプレッサー自体はエアガン用サプレッサーとしては良くある構造で、アルミの筒の中にO状の吸音材が入っているタイプです。

発射音自体は多少変化するものの、CO2ブローバックの作動音自体が大きいので、見た目重視のアクセと考えた方が良いですね。


(上:サプレッサー モデル、下:初期モデル)

サプレッサーモデルのチャンバー部下側にはアウターバレルの回転止め用のイモネジが追加されています。同じくチャンバー部左側にはガタ防止と思われる出っ張り(銀色に光る部分)が追加されています。

確認できませんでしたがシリンダー内にダンパーが追加されているとのことで、ブローバック性能が上がっているとのことです。

実射でも違いは分かりませんでしたが、サプレッサーを付けても作動に全く影響が無かったのは確かです。

アメージングトイ FN5-7

EXB2モデルから、BB弾の発射機能を除いたモデル。ブローバック作動と発射音を楽しむCO2を使ったモデルガンに準じた位置づけのトイガンです。

通常のEXB2モデル(エアガン)との構造上の違いを見ていくと。

(1)マEXB2モデルのマガジンをベースにBB弾の給弾部分のパーツ(フォロアー&スプリング)を削除。

(2)バレルはアルミの一体もので、インナーバレルは無し。マズル部分は1cmほど凹ませてあるだけで当然貫通はしていません。

(3)ブリーチ部分は外見上違いはありませんが、ローディングノズル側から覗くと内部に蓋がしてあるような状態で、後方(ブローバック方向)にしかガスが行かないようパーツ変更がされているようです。

主に3箇所ほどの違いがあるだけなので、コスト的にはかなり押さえられた設計のようです。18才以下にも購入できるモデルガン的に作動させて楽しむトイガン、CO2ガンの普及を目指したものと思われます。

細かいチューニングがなされているのかもしれませんが、体感的には発射音や反動はEXB2との違いは感じられません。燃費が多少良いので数が撃てるメリットはありますが、現状では単に発射機能が無いエアガンですね。

仮に同じ性能でも、ベースガンが「グロック17」や「M92F」のようなメジャー機種だったら評価も違ってくると思いますが、裾野を広げる役としては「FN Five−seveN」は」マイナーすぎます。

70挺分しか発注が無かったというのも頷けますね。既にEXB2を所持しているユーザーにとっては空撃ちで充分です。

実射についての簡単なコメント

従来のGBBとは異なる反動の強さと、発射音の大きさに驚かされました。新ボンベを入れた直後は生ガスを吹きますが、5〜6発撃った後は安定します。弾道を見る限りフラットで素直な感じなので集弾性も悪く無さそうです。

特筆すべきはCo2ならではの冷えに対する強さです。速射を繰り返してマガジンが冷たくなっても発射に影響はなく、毎回22発撃ち切ってホールドオープンします。これなら真冬でも快調に作動しそうです。

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およそ120発前後でボンベが空になりますが、徐々に撃てなくなると言うよりも急に撃てなくなる感じです。気になる初速は83m/s 前後で、GBBとしてはかなり高めですが、規制値はクリアしていますので問題は無いのでしょう。

新ボンベを入れた直後が最も高く、空になる直前が最も低くなりますが、極端に変化するわけでは無いのでフロンに比べても安定しているようです。

マルシン 5−7 EXB2の実射動画はこちら

 

最後に(サマリー)

海外向けに既に FN 5−7 EXB2を出荷してからの国内販売なので当然かもしれませんが、想像していた以上に完成度が高いのには驚きました。従来のマルシンGBBのもっさりした作動感は完全に払拭されています。

ボンベサイズ等のサイズに制約はありますが、今後既存製品(M1ガーランドやMP40)への導入や新製品の開発を期待したいですね。

マルシンのみならず国内GBBとしてもエポックメイキングな製品なのは確かでしょうけど、Co2に対する業界内の認識に温度差がある現状を考えると、Co2 GBBが発展するか心配な部分があります。海外メーカーに負けないためにもあらゆる方向を模索して頑張って欲しいものです。

参考資料
月刊GUN誌 2000年5月号
月刊GUN誌 2005年3月号
月刊GUN誌 2009年10月号

FN HERSTAL HP