WE MSK(ACR) GBB レビュー
WE MSK(ACR)はブッシュマスター (レミントン )ACRをモデルアップしたトイガンですが、WE社がトイガン製造時に商標許可を取っていないため正式にACRを名乗れず、商品名“MSK”として販売されています。
MSKの名称については、未確認情報ですが“MuSouKen(無双剣)”の略とも言われています。次項では実銃のブッシュマスター(レミントン)ACRについて簡単に触れていきます。
実銃についての簡単な説明
ポリマー素材のアクササリーメーカーとして有名なMAGPUL社が、2007年に突如開発した次世代アサルトライフル「MASADA」。AR18のガスピストンシステムを参考に、金属製アッパーレシーバーとポリマー製ロアレシーバーを組み合わせた設計で作られています。
特徴的なのはストック、ハンドガード、バレルを工具なしで分解することが可能で、ボルトやマガジンの交換によって異なる弾薬の使用も可能な、一丁の銃を使用目的に合わせて最適なものに変更できる機能(ストーナーM63やG3の機能を進化させたもの)を持っています。
そのMASADAの製造権と販売権を買い取ったのがブッシュマスター社で、後に同一資本下にあるレミントン社が加わりMAGPUL社と3社で改良したモデルがACR(Adaptive Combat Rifle〈適応性のある戦闘小銃〉)です。
2010年には民間市場向けセミオートモデルをブッシュマスター社が、ミリタリー・法執行関係向けのセミ・フルモデルをレミントン社が供給することを発表しました。現在ではM4小銃の更新計画も流れ、一般市場ではM4シリーズの倍以上の高価格のために、埋没してしまった感がありますね。。
パッケージは可も無く不可も無い海外製トイガンのパッケージですが、唯一入っている商品名ぽい「一刀流」の文字が超違和感です。
MP5シリーズの「阿帕契(APACHE)」も??な感じですが、台湾では受け止め方が異なるんですかね。日本で使われているMSKという商品名の表示はどこにもなく、輸出入に関わるどちらかの代理店が後から付けたものかもしれませんね。
パッケージ内部はWE製品としては珍しく緩衝材としてスポンジが使われていますが、ダンボール素材をプレスしたものよりも高級ぽい感じがします。実際キチンと固定されるんで輸入品の場合緩衝効果の高いスポンジの方が安心できます。
本体の他にフラッシュハイダー、トロイタイプのフロント&リアサイト、マガジン、ローディングツール、取説が付属します。パッケージサイズの関係でフラッシュハイダーが本体とは別になっていますが、サイトパーツまで別になっている理由はよく分かりません。
本体を見てみるとレミントン社が開発したレイルシステムや、アドバンスド アームズ〈Advanced Armament Corp(AAC)〉社製のフラッシュハイダーを装備し、セミ・フルオートの切り替えができるミリタリー仕様なので「レミントン ACR」の14.5インチバレルをモデルアップしていると思われます。
アルミ製のアッパーレシーバーと樹脂製のロアレシーバーとの組み合わせはSCARを彷彿させますが、アノダイズド加工っぽいSCARのアッパーレシーバーのよりも、まんま塗装のACRの方が耐久性は別として、色目的には落ち着いています。
14.5インチ相当のアルミ製アウターバレルの先端に14mm逆ねじでAAC製マズルブレーキ付きフラッシュハイダーが付いています。このハイダーの位置決めのスペーサー代わりにOリングが付いているのは何とも微妙なところです。
(画像上:ハンドガード左側面、画像下:ハンドガード下面)
レミントン社開発のレイルハンドガードは、キーモッドシステムのように好きなところにレイルを取り付ける事が可能で、表面からだけネジ止めをすれば済む便利なタイプですが、比較的重量が重いことが難点(約340g)。レイルパーツは小が2枚、大が1枚付属しています。
コッキングレバーは左右付け替え可能。向きも上向き下向き(画像は下向き)に変えられます。
フレーム左右のレバー類(マガジンキャッチ、ボルトキャッチ、セレクターレバー)は全てアンビ対応になっています。マガジンキャッチの下にボルトキャッチがあるので、慣れないうちは多少まごつきます。
セレクターレバーは小さい上に固いので片手で操作することが困難です。画像下のようにセミオート時にレバーが垂直にならないのには違和感を憶えます。レミントン社の画像を見る限り、形状も変わっているようです。
エジェクションポート後方に実銃のACRにあるケース・ディフレクターがありません。現行のACRにもMASADAにもケース・ディフレクターは付いているので、この辺りがWEの詰めの甘いところなんでしょうね。
刻印は左右ともレーザー刻印で掘られていますが、商品名自体がACRではないので、問屋(輸出元)かショップ単位で後加工されたものと思われます。WE製オリジナルモデルは全く刻印の無いモデルです。
刻印モデルにはレーザー刻印では無くレーザープリントのモデルも存在します。こちらは大抵レミントンロゴが入っているようです。これ問屋かショップ単位での加工だと思われますが、パッケージが白い無地のものは、WEがNB名義で出荷したものと言われています。
商品名もですけれど、刻印のバリエーションというか、加工カスタムの種類が多すぎて(刻印の有るor無し、レーザー刻印orレーザープリント、レミントン刻印orブッシュマスター刻印 等)、何とも分かり難いラインナップになっています。これに国内正規モデルと並行輸入モデルが加わるんですから、選ぶ方も大変です。
(画像上:縮小時のストック、画像下:伸長時ののストック)
ACRのストックはSCARに似たフォールディングタイプで、最大約75mm幅で6段階に伸長・収縮できます。またチークピースも上下してスコープ使用時の頬付けをし易くするとのことですが、操作が固い上に約8mm高くなるだけなので実際の効果はどうなんでしょうね。
フォールディングストックを折りたたむとエジェクションポートをよけた形になるので、実銃ではストックを折りたたんだ状態で射撃することも可能な設計です(この辺りもSCARのストックの折りたたみ機構に似ています)。
ストックのヒンジ部分はAのフック部分がBの溝に入って固定するようになっています。固定自体はガタも無く、フックボタンを押しても中々ロックが外れない程タイトですが、逆にクリアランスがない分、樹脂製フックと溝の摩耗や破損が気になります。
グリップは実銃同様、内部にコンパートメントがついたもの。写真で比較しても形状は実銃とそっくりです。
グリップの感触はM4系に慣れていると太く(丸く)感じますが、実銃がそのような形状なのか、電動ガンへの転用を意識して太くなっているのかわかりません。
グリップ底面から見ると握った感覚よりも丸くなく、実銃の写真と比べても特に厚みがあるようには見えません。決して握りにくいわけでは無いので良いんですが気になりますね。
フロント&リアサイト共にTROYタイプのバックアップサイトが付属しますが、本来ACRの標準サイトはMAGPUL MBUSのはずなので、既存パーツの流用か何かなんでしょうね。
サイト自体の作りは比較的しっかりしていますが、マウント部分の爪の精度があまり良くない感じなので強くネジ止めするとレイルに傷を付けそうなのが心配です。
マガジンはWE製GBB用なら、付属のMAGPULタイプの他に、オリジナルのM4マガジンやタンゴダウンタイプマガジンも使用できます。
最もこれらはマガジンの外装を着せ替えただけで中身は同じものなので、WE社の5,56mm弾使用のGBB各モデルは基本マガジンの共用ができるということになります(厳密にはマガジンハウジングの長さが銃によって異なるので、M4オリジナマガジン以外は、共用できない場合があります)
します。刻印無しモデルが“R”無しのようですが、別売のMAGPULタイプのマガジン外装キットは“R”が入っていたりするので、後の生産分には“R”が付いている可能性もあります。
通常分解はロアレシーバー後部のピンを抜けば、簡単にボルトとリコイルスプリングのユニットが取り外せます。次にロアレシーバー全部のピンを外せばレシーバーを分割できます。この辺りはM4系の分解と同じ手順ですね。
ボルトは亜鉛ダイキャスト製で重さは約250g。フロンで快調に作動する上限に近い重さですが、ブローバックメカさえしっかりしていればフルでも1マガジン撃ち切れる範囲です。
購入時はグリスまみれなので、キレイに拭き取ってから軽くグリスアップし直します。
トリガーアセンブリーは、WE製GBBで見慣れたパーツ構成です。M4系と全く同じ形状ではなくACR用にアレンジされていますが、機構的には充分プルーフされたメカです。購入時はここもグリスベタベタなので、拭き取っておいた方が無難です。
アッパーレシーバー内側には実銃と同じようにスチール製のボルトキャリア−・ガイドが付いています。リアルさだけでなく、実際の作動に関してもボルトの抵抗が少ない作りにいなっています。
HOP UPの調整はチャンバー上部のイモネジを六角レンチを使って調整するタイプ。後述するバレル交換システムを優先してダイヤル式とかには出来なかったんでしょうが、このタイプは調整が面倒ですね。
ACRのバレル&ハンドガードユニットの交換
最近のアサルトライフルは状況に応じてバレルの長さを変えたり出来るようにはなっているが、これを工具なしのワンタッチで可能にしたのがMASADA〜ACRのバレル交換システムで、WEのACRにも再現されています。ハンドガードやストックの交換もワンタッチで可能です。
(1)最初にレイルハンドガード後部のピンを外して、レイルを前方に引き抜きます。
(2)次にバレル下部にあるバレルナット・レバーを90度回してバレルナットの結合を外し、アウターバレルを前方に引き抜きます。同じようにインナーバレルを前方に引き抜きます。
(3)純正オプションの11.5インチバレルを逆の手順で組み込みます。この時注意するのはインナーバレル(チャンバー部)の上下の向きだけです。
(4)最後にハンドガードを組み込めばACRのCQBタイプの完成です。
(5)今度は軽量化のためにレイルハンドガードをオプションの樹脂製ハンドガードに交換します。樹脂製ハンドガードの重量は205gなので、レイルハンドガードに比べ約140g軽量化されます。
(6)バレル基部のフレーム左右のネジを外して、樹脂製ハンドガードに付属するデタッチャブル・スリングカプラーを挟んで再度締め直します。これはスリングの取付機能の他に、樹脂製ハンドガードと組み合わさって固定する役割がありますが、レイルハンドガーとは干渉しないので付けたままにしておいて構わないパーツです。
(7)前方から樹脂製ストックを差し込んで付属の長めのピンで固定すれば、ハンドガードの交換は終了です。
樹脂製ハンドガードにするとブッシュマスター社製のACRか、MASADA風になります。個人的には「ヨルムンガンド」出も使われていたこちらの方が好みですね。
入手してからスプリングだけはストライクアームズのACR用スプリングに交換しています。その状態で実射してみると、冬場にもかかわらずセミ・フルともに快調に作動しました。流石にフルで1マガジンを1トリガーで撃ち切ると多少息切れしますが、それでも最終弾発射後にホールドオープンします。
マガジンからチャンバーへの装弾不良は多少ありますが、気になるほどではありません。また、5m程の室内で見る限り素直でフラットな弾道なので、集弾性も平均レベルはクリアできそうです。
海外製品で気になる初速は、0.2g弾使用で87m/s前後なので、夏でも規制値をクリアできそうです。発射サイクルは毎分625発(毎秒10.4発)と若干遅めで指切りバーストし易い回転数です。11.5インチバレルにすると若干初速が下がりましたが予想ほど変化はありませんでした。
↓ WE MSK(ACR)の実射動画はこちら
最後に(サマリー)
発売から1年以上経ってのレビューとなりましたが、WEのGBB性能は国産GBBに匹敵するぐらい安定してきているようです。マガジンのガス漏れもGen2以降は改善されているようですし、後はパーツの供給が安定してくれればもっと使いやすくなりますね。
MSK(ACR)の面白さはバレル交換システムを再現したことでしょう。購入した後オプションや社外パーツで着せ替えたりするのは,M4でも良くやりますが、着せ替えた後で簡単に戻せるところが良いですね。バレルとハンドガード以外のオプションパーツがもう少しあれば、さらに楽しめそうです。
惜しくらむは、WE製品の正規国内版の価格が高過ぎること。販売価格にばらつきがありすぎるので、余計そう感じるのかもしれません。
作動性はともかく外観の再現性が競合に比べて甘い上に商標代もかかっていないのに、円安前から国産GBB以上の通常価格ですからね。
参考資料
月刊GUN誌 2010年4月号
月刊GUN誌 2010年10月号
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