MULE (CAW) チャーターアームズ
ブルドッグ.44 レビュー

レビュー

久々の完全新規モデルガン「チャーターアームズ ブルドッグ」が、当初予定から1年半遅れの9月7日についに発売されましたので、ご紹介します。

実銃についての簡単な説明

「チャーターアームズ ブルドッグ.44」は73年に発表された.44SP口径のダブルアクションリボルバーで、チャーターアームズ社というマイナーメーカー製でありながら発売から14年で50万挺を売り上げたベストセラーガンです。

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小型フレームから44SPの大口径を発射できるコンセプトがアメリカ人気質に受けたのと、なによりも安価なわりには高い性能が評価されたと思われます。44SP口径以外に357マグナム口径のものも作られたようです。

日本では「サムの息子」事件に使われた事と、専門誌のサタデーナイトスペシャル特集により凶悪なイメージが付きまといましたが、それを覆すほどに有名にしたのが映画「ブレードランナー」のブラスターのプロップにステイヤーライフル機関部と組み合わせて使用されていたという事実でしょう。

「ブルドッグ 44」を開発したチャーターアームズ社は90年代に一度倒産していますが、現在もその社名を引き継いだ別会社から、バレルにアンダーラグを付けた形状にはなっていますが「ブルドッグ 44」として販売が継続されています。

 

MULE(CAW)ブルドッグにについて

チャーターアームズ ブルドッグの開発は、エルフィンナイツ プロジェクトの「高木式2019年式 爆砕拳銃」(ブレードランナー ブラスター)のOEM供給・販売をMULEが行った事がきっかけのようです。

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▲ エルフィンナイツ製高木式2019年式爆砕拳銃とMULE製ブルドッグ

ブラスター用に製作したフレームやパーツの金型を使用し、新規に設計したバレル部分を組み合わせて作られていると思われます。発売の遅延にはCAWの会社組織の変更による混乱影響が大きそうですが、作動性を高めるために一部のパーツ(シリンダーハンド等)を変更したことも無関係ではないようです。

グリップは木製オンリーとして金型代をオミットしている代わりに、「サービスサイズ プレーン」「サービスサイズ チェッカー」「オーバーサイズ下丸 プレーン」「オーバーサイズ下丸 チェッカー」「オーバーサイズ 下角 チェッカー」の5種類のグリップを制作し、5バリエーション展開を行っています。

本来なら商品管理に手間がかかる販売方法ですが購入が一部のコアな層に限られる上に、小売店の販売数が少なくなっている(ネット直販の方がメイン?)からこそできる商品展開ですね。

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MULEのHPによれば、この「ブルドッグ」はMULEが依頼してCAWが生産しているとの事なので、ブランド名はMULEが正しいと思われます。それに反して一般流通の表記は通りの良いCAWブランドがほとんどです。従って本ページではMULE(CAW)ブランド併記させていただきました。

ちなみに「Bulldog」のカタカナ表記はスペルどおりブルドッグが正解で、MULE HP上の「ブルドック」表記は誤りです(これは以前も指摘しましたけど直りませんねw)。

MULE(CAW)ブルドッグ本体を見ていきます

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パッケージは厚めのダンボール製で、チャーターアームズ社のロゴと商品名が大きめの書体で入れられています。かなりチープな印象ですがメジャーメーカーでは無いので、この感じも有りですね。

パッケージサイズが従来のものと異なるので、ストックするときに綺麗に重ねられないのが難点です。

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パッケージを開けると、ダンボールで区切られた箱の中には、取説の他に油紙で包まれた本体と、付属カートが入っているのが見えますがリアルに怪しい雰囲気です。

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油紙を開けるとブルドッグ本体がお目見えします。グリップにメダリオンが入っていないので焦りましたが、箱のしきり部分に付いていましたので一安心です。

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MULE直販モデルには2種のグリップメダリオンが付属します(だからグリップに付けてないんですね)。左のシルバーのものがCAW製オリジナルメダリオン。右のゴールドのものは旧カナマル製「ブルドッグ」用のもの。

MULEブログによると、カナマル製「ブルドッグ」を製作したKTW社から譲り受けたものだとか。悩んだ結果CAWオリジナルメダリオンを取り付けました。

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入手したのは「オーバーサイズ下丸 チェッカー入りグリップ」仕様。個人的にはこのタイプのグリップが最もブルドッグらしいと思っています。握り心地も手にフィットするほどよい大きさです。

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▲ 左:タナカ製M36、中:MULE製ブルドッグ、右:タナカ製ディティクティブSP

実際に手にして見ると小型でも、よく言われるようなS&W M36と同じクラスのフレームサイズでは無いことが分かります。大きさ的にはコルト ディティクティブ・スペシャルのDフレームとほぼ同じイメージです。

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▲ 左:CAW製ブルドッグ、右:タナカ製ディティクティブSP

バレル長やオーバーサイズグリップの分、ブルドッグの方が大きく見えますが、実際にフレームのみを比べて見ると44SPを使用するブルドッグは、シリンダーが太い分フレームの上下が大きいですが、フレームトップの長さがほぼ同じなのが分かります。

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細部を見てみると、銃口に向けて強いテーパーのかかったバレル左側には「BULLDOG .44 SPL.」の刻印が入っています。書体も文字間も実銃とほぼ同じですが、レーザー刻印のモデルガンの方がシャープな印象です。

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フロントサイトはランプの付いた大型のもので、非常にシャープな作りになっています。個人的にはこのサイトの形状が最もブルドッグらしいところだと思っているので、この仕上がりはかなり気に入ってます。

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フレームはサイドプレートの無いソリッドフレームで、トリガーガード&グリップ部が別パーツで亜鉛ダイキャスト製になっています。上下フレームはスクリューとピンで固定されているので剛性感が高く、樹脂リボルバーで気になるシナリ感はありません。

シリンダーラッチはS&Wと同じく前方に押してシリンダーをオープンするタイプですが、スクリューが邪魔なのでラッチの前寄りを押す必要があります。

実銃同様シリンダーロッドを前方に引っ張ってもオープンできるのが嬉しいですね。S&Wを見慣れた目にはヨークの形状も新鮮に感じます。

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バレル右側には「CHARTER ARMS CORP., STRATFORD, CONN.」とチャーターアームズ社と所在地の刻印が入っています。所在地の「STRATFORD,CONN.」の刻印は76〜91年製造のモデルのものなんだそうです。

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シリンダーはコルトと同じ右回りで、やや重いもののハンマー&トリガーの動きはスムーズです。

フレームのシリアルNOは「273207」と、エルフィンナイツがブラスター製作時に取材した実銃と3違いのシリアルになっていますが、製造年代と合ってない気もします。

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ハンマーを起こすと、トランスファーバーが上昇しているのが分かります。このままトリガーを引ききるとこのトランスファーバーを通してフレームのファイアリングピンに、ハンマーの打撃を伝えて発火することになります。

ハンマーダウン時にはトランスファーバーが下がって、ハンマーとファイアリングピンの連結を断つので携帯時の安全性が高くなっています。安価な銃の割に高性能と言われる所以です。

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マズル部分は大口径ながら肉厚の薄い、ブルドッグらしさを再現しています。よく見るとインサートが入っている部分から内径が細くなって肉厚を稼いでいるのが分かります。インサートを鋳込むための強度的な工夫なんでしょうね。

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▲ ブルドッグ用カートリッジ、一番下はリアルダミーカート

MULE直販に付属のカートリッジはオプションのトリプル発火仕様のものが付いてきます。発火音はもの凄そうですが、キャップを込めるのに神経を使いそうです。

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▲ 左から、ブルドッグ用発火カート、エルフィンナイツ製ダミーカート、リアルダミーカート

カートリッジはほぼリアルサイズですが、インサートの関係で若干長さが短くなっています。そのためリアルダミーカートだと太さは問題ありませんが、ぎりぎりシリンダーが閉じません。

ブラスター用にエルフィンナイツ プロジェクトが販売していたダミーカートだと、長さが発火カートと同じなので問題無くシリンダーに入ります。

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カートを込めるとシリンダー後面はカートのお尻がピチピチです。シリンダー後部に「E」の刻印が入っています。想像するにパーツの製造ロットNOだと思うのですが、何なんでしょうね。

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シリンダー前部から見ると、カート先端が丸見えです。樹脂製モデルガンのインサートは自主規制だから形状に問題無いとは思いますが、インサートというよりはカートの位置を固定するためのパーツのようにも見えますね。

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木製グリップ内にはCAWお得意のウェイトが仕込まれています。そのためフレームの亜鉛ダイキャストの重量と相まって、手に持つと見た目以上に重く感じます。

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メカ的に面白いのは、ハンマーとハンマーストラットとの接点がボールジョイント風になっていること。ハンマーストラットの加工の手間はかかりますが、機能的によく考えられている部分です。

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分解はハンマーをコッキングしながら、ハンマーストラットの穴にピンを刺してハンマーストラットを外すところから始まります(セキュリティシックスなどと同じですね)。

今回MULEは新しい試みとして、分解組立については取説に記載せず動画配信対応としています。見た限りは分解手順は分かりやすいんですが、細かいパーツの組込部分はプリントか静止画が欲しいところです。

ここから先の分解組立は以下の動画を参照して下さい。中々面白い試みです。

▼ チャーターアームズ ブルドッグ分解動画(MULE配信)

▼ チャーターアームズ ブルドッグ組立動画(MULE配信)

最後に(サマリー)

チャーターアームズ製のモデルガンはWA製のAR7に次いで2機種目。トイガンとしてもカナマルの製のブルドッグに次いでの製品化です。

先にブラスターの製品化があったとは言え、マイナーなブルドッグがよくモデルアップされた事を素直に喜びたいですね。

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▲ 左:MULE製ブルドッグ、右:カナマル製ブルドッグ

マイナーモデルの割にはそれなりの知名度もあるので、久しぶりに未知のトイガンらしさに溢れていました。南部式大型しかり九十四式しかり、マカロフ、ボーチャードしかりで、初モデルアップ製品のインパクトはやはり大きいですね。

かと言ってメジャーアイテムを出さないと蛸壺化が進んで市場自体が縮小するし、成熟化したジャンルは難しいですね。

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今回も発火はしていないので肝心の発火性能は分かりませんが、新規製作のモデルガンだけあって作動性や仕上がりはかなり高いレベルだと思います。選べる木製グリップや価格が低めなのも魅力的です。

別グリップのバリエも欲しくなりましたが、既に売り切れ状態。次の生産は何時ぐらいになるのかな。少量生産と再販の見込みが立たないのが最近のモデルガンの課題です。

・MULE(CAW)チャーターアームズ ブルドッグ モデルガン(各5タイプ)
22,800円〜26,800円

・ダブルキャップカートリッジ(5発入り)2,000円
・トリプルキャップカートリッジ(5発入り)2,250円
・ブルドッグ専用ダミーカートリッジ(5発入り)2,000円

参考資料
GUN Professionals2013年1月号
GUN Professionals2014年6月号