WE FN P90TR (海外版)レビュー

レビュー

個人輸入したWE製 FN P90TR GBB(海外版)を半月ほど弄ってみて気がついたところを紹介してみます。

実銃についての簡単な説明

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1988年に発表された、FN P90(P=Projectの略)は東西冷戦時に軍用として考えられた、新しい歩兵用小火器で、その目的はワルシャワ条約機構の一点突破戦略によって正面に立つ可能性のある後方支援部隊の軽量防御用として開発されました。

開発の背景には、それまで後方支援部隊に装備されていたサブマシンガン、ピストルなどの小火器は当時第一線部隊が装備していたボディーアーマーによって無効化される傾向にあり、求められる「ボディーアーマーに対する効果」に加え「簡単な取扱」「小型軽量」等の要求を取り入れて開発されたものがP90です。

当時は「PDW(Personal Defense Weapon)=個人防御火器」という新しい小火器カテゴリーとして考えられましたが、冷戦構造の終結もあって定着せず、「ボディーアーマーに対する効果」や「小型軽量」等の特性が対テロ戦に有効であるとして、対テロ・特殊部隊用小火器として現在に至っています。

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実銃の特徴としては貫通力に優れた小口径5.7mm×28mm弾の採用により9mm×19の拳銃弾より反動が少ないとされ、命中精度が高いこと。さらに着弾後、弾頭が横弾することにより貫通力に加えストッピングパワーも高いとされています。

また銃本体はブルパック方式を採用し、操作のアンビ化を図るためにマガジンをフレーム上部に銃身と平行に、エジェクションポートをフレーム下部に置くことで完全な左右シンメトリー性を達成しています。

コリメーター・サイト(ダットサイト)装備のオリジナルP90の他に、コリメーター・サイトの代わりにピカティニーレイルを装備したP90TR、レーザーサイトデバイスを内蔵したP90LVがバリエーションとして存在します。

 

WE製 FN P90TR GBBについて

2010年頃開発がアナウンスされて以降、何の音沙汰もなかったWE製 P90 GBBが今年になってから突如試作動画が公開され、10月に発売されました。開発に5年かけた(かかった)ということになりますね。

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海外版パッケージ(国内版も同じ?)はいつもの中華っぽい雰囲気のイラスト入りパッケージ。例によって商標を避けるために商品名は「T.A.−2015」(意味不明)となっていて、どこにも「FN」や「P90」の文字はありません。

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パッケージ内は再生紙の緩衝材の中に、本体、マガジン、取説、マガジン用シール、BB弾ローダーが入っています。緩衝材の型を見る限り、現状ではカラーバリエ以外は考えられていないようです。

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本体を見てみると、外見はまさしく「FN P90TR」そのものです。以前手にした電動ガンのイメージが薄れているので、想像していた以上にコンパクトで厚みも薄く感じます。

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実銃ではレイル部分左に「P90 Cal. 5.7×28」の刻印とフレームの左側に「Fabrique Nationale Herstal BELGIUM」の刻印が有ります。

P90TRには本体のどこにも刻印がなく、実銃の刻印位置には「WE TECH ARMS・MADE IN TAIWAN」のシールが貼られています(シールを剥がした裏にも刻印はありません)。

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サイト部分上面は樹脂製の簡易サイトが付いたピカティニーレイル仕様となっています。左右にはそれぞれ小型のレイルが付いているのでライトやレーザーサイトを装着できるようになっています。

実銃同様簡易サイトしか付いていないので、トイガンでも使用するには何らかの光学サイトを取り付ける必要があります。

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フラッシュハイダーは若干灰色がかっているWE製によく見られるパーツの仕上げで、14mmの逆ネジタイプ。位置決めのために下側からイモネジで固定されていますが、外せばサードパーティー製のサプレッサーなどと交換可能です。

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トリガー下にあるのがセレクター件セフティで「A」「1」「S」の3ポジション。最初はクリックが硬めですが、当たりが付けば片手で操作できそうです。

ポジション「1」のセミオートは何故かかなりトリガーが重く、ポジション「A」はトリガーの引きでセミとフルの撃ち分けが可能とのことですが、所持している個体はフルしかできません。

ポジション「1」に比べトリガー自体は軽く、指切りバーストが容易にできるので使用上問題ありませんが、仕様なのか個体特性なのか気になるところです。

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フレーム下部のエジェクションポートは、サブのガスタンクと思われるパーツで半分以上塞がれているので、ボルトの動きが見えません。左右ストックの結合部にスキマがあるのと合わせて残念なところです。

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フレーム上部のマガジンキャッチは左右シンメトリーの配置に見えますが、一体型で左右同時に後方に押すタイプ。

実銃では恐らくマガジンを叩き込んで使用できると思われますが、ガスガン用のマガジンでは後に説明するような制約があるのでたたき込みは出来ず、マガジンキャッチをキチンと押し込んでからでないと装着できないので、使いやすくはありません。

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ここでP90TRのマガジンについて説明します。金属製のボディに半透明の樹脂を被せたタイプで、バレル軸線と平行に横置きするので通常のマガジンとは位置関係が異なるのが最大の特徴です。

ガスは前方のノズルから注入し、BB弾はマガジン下面の給弾口(装弾口)から給弾します。通常マガジンを給弾口を下にして横置きしたイメージです。

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通常のGBBと異なるのは上部のマガジンから下部の本体フレームへガスを送るために、マガジンのガスノズルは凹型で内部にパッキン用のOリングが入った形状になっています。位置的なこともあって、マガジン本体にはバルブはありません。

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本体フレームのマガジンハウジング内にはガスルートのジョイント部が突き出ています。マガジンのガスノズル部がここに被さって、ガスをマガジンから本体に送ります。送られたガスは本体フレーム内のサブガスタンクに入り、サブガスタンクに繋がったバルブをハンマーが叩くことで、ガスブローバックが作動します。

ガスガン初期にあった、MGC以外のメーカーのマガジンにバルブを付けない(付けられなかった)ガスガンのマガジンと同じですね。

構造的にマガジンの着脱時にジョイント部からガスが漏れたり、ジョイント部のパッキンを傷付ける可能性が高い欠点があります。

着脱時にはノズルとジョイント部を慎重に合わせる必要があるので、素早いマグチェンジは難しいですね。

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P90TRのマガジンには空撃ちモードが付いていて、空撃ちモードレバーを後方に引っ張って解除すると、マガジンフォロアーが突きだしてボルトストップがかかる通常モードになります。

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マガジンが通常モードだと、ボルトフォロアーが本体のボルトキャッチを押してボルトストップを作動させます。古い機種のようにマガジンフォロアーで直接ボルトのシリンダーノズルを止める方式ではないので、多用しても破損の心配は少ないと思われます。

また、ボルトストップの解除はコッキングレバーを引くことで行いますが、実銃のようにエジェクションポート内に解除レバーはありません。

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付属のマガジン用シールを貼ると、それなりにリアルに見えます。マガジンから樹脂カバーを外すのは簡単ですが、マガジンのインナー部分に大型のシールを貼るのは位置決めが難しく、若干曲がってしまいました。

次は簡単に分解して内部構造を見てみます

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分解はマガジンを外してからコッキングレバーを引いてハンマーをコッキングして(これをしないとボルトが外せません)、フレームのテイクダウン・ボタンを押します。

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テイクダウン・ボタンを押しながらアッパーレシーバーユニットを前方に引き抜きます。アッパーレシーバーユニットが外れたら、マガジンハウジングからボルトを引っかけて前方に動かし、ボルトユニットを前方に抜き出します。

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ボルトユニットを抜き差したらバットプレートを上方に抜き出します。ストック内部下側ににトリガーユニット後部が見えるので、トリガーユニット後部にあるロック解除レバーを上に押上ながらトリガーユニットを手前に外します。

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ここまでの手順で通常分解は終了です。分解手順や各ユニットの形状も実銃に準じているので、分解するだけでモデルガン的楽しみが堪能できます。

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アッパーレシーバーはチャージングハンドル共々ユニット化されています。チャージングハンドル自体がプレスの一枚板で出来ているのは驚きです。

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トリガーユニットは主要パーツが樹脂製で、実銃ぽい雰囲気です。これ以上の分解はそれなりに手間がかかりそうですが、最低限の目視チェックまでは十分出来そうです。

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ボルトユニットの重量は約220g。リコイルスプリング関連のパーツを除けば200g前後だと思うので、GBBのボルトとしてはやや軽めの重量です。冬場でも片鱗はありますが、連射速度も高そうで夏場は真価を発揮しそうです。

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実銃と同じようにボルトユニット後部の出っ張りがバットプレートの穴に入ることで、バットプレートを固定しています。良くできたシンプルなデザインで、この手の合理的な構造は大好きです。

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気になったので付属ローダーについても触れてみます。今回付属してきたBB弾ローダーは、何と恐竜型! 従来のマルイ完コピ型もどうかと思いますが、こちらはこちらで???って感じ。

正直、国内バージョンも同じローダーなのかは不明ですが、何となく別のものにも見えるデザインセンスは凄すぎますw

実射についての簡単なコメント

室内の近距離での実射だけですが、海外版のGBBで冬場にもかかわらず、ブローバックの作動は快調です。フルオートで1マガジンを1トリガーで何とか撃ち切ることができますが、今の季節と50発もある装弾数を考えれば充分合格ラインだと思います。

弾道はフラットで素直な感じなので、距離を伸ばしてもそれ程バラけないとは思いますが、こればっかりは屋外で売ってみないと分かりません。同じくHOPの効きに関しても同様です。

気になるところはマガジンが樹脂で覆われているため、冷えたときの回復が遅いこと。さらに海外製の吹き戻しのない注入バルブなので、ガスの入れ過ぎが多発して余計マガジンを冷やす傾向があります。

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海外版ということで、気になる初速は68m/s前後。輸入時に付いていた性能証明の数値と比べるとかなり低いものですが、低圧フロンを使った冬の数値としては妥当なところでしょう。

当然規制値は楽にクリアしているので一安心です。(室温20℃、東京マルイ0.2gBB弾・フロン134a使用)

▼▼ WE FN P90TR GBBの実射動画はこちら ▼▼

 

最後に(サマリー)

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トイテックのガスガン&電動ガン、マルイの電動ガンと続いて、やっとハンマーをコッキングできてボルトが作動するP90のトイガンが登場しただけで個人的には満足ですが、今でも斬新なデザインであるだけに、その操作性は独特のものがあります。

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競合のH&K MP7A1がオーソドックスなデザインで初めてでも違和感なく操作できるのに対して、ブルパップ形式のP90TRは頭で考えながら操作する感じになります。

小型化するために採用したブルパック方式とマガジンの位置やグリップの角度、フォアグリップの形状の影響でしょうね。悪く言えば余裕のないデザインということなんでしょう。

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P90と同じ5.7×28mmカートリッジを使用する5−7ピストルが開発されたのは、P90が小型ライフルとして作られている(小型ライフルと同じ操作性)だからだと思います。

大型ピストルの延長として開発されたMP7A1と同口径ピストルのP46が、開発中止となったのと対照的です(4.7×30mm弾がP46のバレル長では性能が発揮できなかったという説もありますが、緊急時にストックを畳んだまま撃てるP7A1の方がピストル並みの取り回し易さがあるのは確かでしょう)。

個人的には5−7ピストルとペアにできるP90がGBBとして販売されたのは、何にしても嬉しい限りですけどね。

WE製 FN P90TR(BKorTAN) 希望小売価格73,224円(税込み)
WE製 FN P90TR用50連マガジン 希望小売価格10,260円(税込み)

参考資料
月刊GUN誌 1990年2月号
月刊GUN誌 1996年7月号
月刊GUN誌 2001年5月号
月刊GUN誌 2003年12月号
月刊GUN誌 2006年8月号