CAW 南部式自動拳銃 大型乙 レビュー

レビュー

2012年2月に発売された南部式自動拳銃大型乙(以下南部大型乙)は、十四年式に次いで発売されました。個人的にはよくぞモデルガンとして商品化してくれたと思います。無可動モデルでは過去に六研とモデルワークスグレネードからモデルアップされていますが、フル可動するモデルガンはやはり違います。

DSC04616

ちなみにCAWからモデルガンが発売されるまで、南部大型乙について専門書で取りあげられたことは殆ど無かったように思いますが、最近になってGUNプロやMOOK本で紹介されるようになって,やっと実銃についても詳細がわかるようになってきました。

DSC01620

それまでは、南部式大型乙だけではなく旧日本軍のハンドガンについては「Japanese Military Cartridge Handguns 1893-1945」が最も詳しかったと思っていましたが、乏しい語学力での訳では、どうしても細かい部分が曖昧でした。

DSC04919

南部式大型甲と大型乙の違いについても小型トリガーガードでストックが付くのが大型甲、大型トリガーガードでストックが付かないものが、大型乙ということだと理解していましたが、GUNプロの2012年11月号の記事によれば、グリップ後部のストック溝の有無だけのようです。

DSC01640

ストック溝があれば大型甲で、なければ大型乙なんだそうです。今まで大型甲と大型乙の違いだと思っていた、トリガーガードの大小や、マガジンボトムの素材やボルトの指掛けの形状の違いは、初期生産分と後期生産分の違いと捉えるべきみたいです。

その訳は、出荷時に大型乙だったものにストック溝を付けた大型甲や、大型甲のストック溝を埋めた大型乙などの改修モデルの存在です。

以前六研から発売された無可動モデルの南部式大型は、後期生産型の特徴があってストック溝もある(下の画像)ので、大型乙からの改造移推型(GUNマガの表記)の大型甲ということになるのでしょう。

DSC04925

逆にモデルワークスグレネードの無可動モデルは、大型トリガーガード、アルミマガジンボトム、ボルトの凹型指掛けで、ストック溝のないものをモデルアップしているから「南部式自動拳銃大型 前期型」というのは間違いってことになりますね、この辺り間違っていたらご指摘下さい。

DSC04927

次にCAWの南部式大型乙自体に目を向けると、外見とかは写真で見たとおりのシルエットですが、思っている以上に大柄です。バレル露出型なのですらりと見えますが、全長・全高ともガバより大きかったりします。

DSC02577

反面,手に取ると華奢とも言える薄さと軽さに気がつきます。薄さについては木製グリップ裏にCAW特異のウエイトを入れるスパースが無いことや、グリップを外したフレーム部の薄さを見れば分かると思います。

DSC04623-2

ネット上で言われている、直ぐに壊れるというのも大げさでは無いでしょう。フレームだけではなく、金属パーツも限りなく実銃並に作られていれば耐久力は限りなく低くなるはずです。ダイキャストで作られたシアバー後端の薄さ(上の画像参照)をみれば,耐久性の無さが想像できます.

限りなく実寸にあわせて作るというコンセプトで作ったモデルガンであるならば、本来はシアバー等はスチールで作るべきだったと思います(プラ製モデルガンはパーツ素材の規制はないはずです)。価格の問題があるならオプションで用意するべきですね。

(2013/11/27補足)対策パーツができたようです。詳しくはこちらをご覧ください

次からは南部式大型乙の細部を見ていきます。

DSC01643

DSC01632

大型トリガーガードはリコイルSPがフレームの左サイドにある関係で、左右非対称です。オートマチック黎明期のモデルはトリガーガードが左右非対称のモノが多いのが不思議。

グリップは大型化したトリガーガードに合わせるような複雑な形状をしています。生産生よりも、質を重視した時代を感じさせる部分です。

DSC04661-2

フレーム右側出っ張りのようにグリップとのラインを整える為だけ(それしか機能が考えられないのですが)のデザインは、やり過ぎの感はありますね。平面に削れば良い部分に出っ張りを残す事を考えるだけで面倒な手間だとわかります。

DSC01651

ボルトの凹型指掛けは後期生産分の特徴である凹型になっています。前期生産分は指掛けが樽型。純然たる初期生産の南部大型甲をバリエとして作るとすると、こういうパーツも流用できないのでかなり大変だと思います。GUNマガの記事にボルトエンドのデザインと38式のセフティとのデザインの類似性が述べられていましたが、頷けますね。

DSC01626

ボルトを引いたときの非対称さが、もっとも南部式自動拳銃らしい所かもしれません。十四年式を見慣れていると、ボルトの左側にファイアリングピンの出っ張りがあるのが新鮮です。実際はリコイルSPが左側にあると、強度的なバランスをとるのは難しそうですよね。十四年式で改良されたのが理解できます。

DSC01639

DSC01648

アッパーレシーバー左右の刻印は型によるものでしょうけど、書体とかは実銃の写真で見慣れたもの。海軍正式拳銃なのに陸式って打たれているのも、普通に考えれば分かり難いですよね。自分的にはハンドガンのタンジェントサイトは好きですね。

DSC01645

チャンバー上部には東京瓦斯電機工業のマークTGEが入っています。エジェクションポートは14年式に引き継がれる真上に排莢するタイプ。手動で作動させるとダミーカートが重いので3〜4cmしか飛びませんが確実に排莢します。

DSC01636

フレーム前部のグリップセフティは確実なセフティではありますが、形状・位置のせいか常に力を入れているのが難しいようで、自分の場合は上手く解除できない時があります。細かい所ですが、グリップセフティの下の刻印が入っているのはドイツの軍用銃ぽくって良いですね。

DSC04665

DSC04671

南部式大型乙でバレルだけショートリコイルすることが自分的には意外でした。イメージ的にアッパーフレームごとショートリコイルするものと勝手に思っていたんですよね。よく考えれば十四年式だって、バレルアッセンブリだけがショートリコイルするのにね。アッパーフレームがバレルを覆っているので変な勘違いしていたようです。

DSC04913

マガジンはボトムがアルミの後期生産仕様ですが、全体はクロームメッキの上質のモノ。後部の溶接部分がシームレスに仕上げているのが凄いですね。マガジンの番号は銃本体のシリアルNOのようですが、予備マガジンとかはどうなっていたんですかね。

DSC04646
(左から45ACP、40S&W、38SUPER、9mmパラ、8mm南部)

付属の8mm南部弾を他のダミーカートと比較してみたら、意外と大きいことに驚きました。このサイズで380ACP並の威力しか無いことが更に驚きですが、当時の鉄の質やSPの強度不足によって弾薬そのものの威力を弱めたというのは悲しすぎます。

最後に過去に発売された無可動モデルと比較してみました。

DSC04633
(左:CAW 右:六研)

全長・全高とも六研製が約1cm小さくなっています。CAWは実銃とニコイチやっているのが自慢なので六研が小さいと考えられますが、写真等から寸法を割り出す手法(推測ですが)の限界なのですかね。それでも全体のバランスが狂っていないのは流石です。

DSC04637
(左:CAW 右:モデルワークスグレネード)

こちらも全長・全高ともモデルワークスグレネード製が僅かに小さいようです。実物を型取りして制作と聞いていたので少し驚きました。もっとも型取りしてレジン成形なので、材質上縮むのは当たり前ですね。

DSC01624

ここ数年で、旧軍のサイドアームは26年式、14年式、94式、南部式小型、そしてこの南部式大型とほぼ揃いましたね。おかげで昔はワイルド7の八百が使っていた銃ぐらいの知識しか無かった南部式大型についても、かなり知る事が出来ました。後は初期生産型の南部式大型甲が出れば充分ですかね。このカテゴリーは製品が重複しなくて良かったですねw

参考:GUN Professionals 2012年11月号
        帝国陸海軍 拳銃・小銃画報
        Japanese Military Cartridge Handguns 1893-1945