東京マルイ Heckler&KochHK45
GBB レビュー
2014年4月に発売されたばかりの東京マルイ HK45を入手しました。何でも初回生産分は数が少ないらしく、予約数を満たせない状態だとか。一連の新製品初期トラブルの反省で検品体制の見直しとかの影響だったら納得なんですが。
実銃HK45についての簡単な説明
H&K初のベストセラー拳銃であるUSPの発売は93年、当初9mm・40S&W口径として開発されたが、後に大型化された45口径のUSP45が開発されました。その後、9mm口径のものは2000年にP2000となり2005年にはセミコンパクトサイズのP30に発展。
HK45はUSP45を開発ベースにしながら、P2000、P30のノウハウを生かしたアップデート版ということができます。さらに開発アドバイザーとして、元デルタ隊員のガンスミス ラリー・ビッカースやケン・ハッカーソンを採用したことで特殊部隊の隊員が好むデューティーガンとしての性格を強く持つようになっています。
特徴的なのはマガジンで、USP45の12連マガジンを採用せず、USP45コンパクト用の細身のマガジンを延長した10連マガジンを新規に製作。結果、グリップのスリム化とグリッピングの向上による高評価を達成しています。
効用期間の採用ということでは、HK45開発中に参加したアメリカ軍のM9ピストル後継機種トライアル(JCPP)はトライアル自体が消滅したものの、バリエーションのHK45Cにサイレンサー用バレルを装着したものが現在SEALに限定採用されています。
次にマルイ製 HK45について見ていきます
パッケージは4色カラー刷りの、今時他社では考えられない高コストのものですが、商品によってイメージが違うのがちょっと残念。メーカーイメージよりも、個々の商品のアピールを第一に考えるのは店頭を重視してきた模型屋さんの企業文化が影響していそうです。
パッケージ内部は黒を基調としたデザインで、以前に比べて高級感ガ出ています。最近のマルイ製品は発泡スチロールを少なくするパッケージに変更しているようなのが好感が持てます。トイガン業界内では大手企業なので、環境に配慮する必要もあるんでしょうね。
本体を見ていくと、マット系で全体をそつなくまとめていますが、もう少しスチールのスライドとポリマーフレームの質感の違いを出した仕上げでも良かったかも。全体のラインはKSC製で見慣れた、HK45そのものですけどね。
スライド刻印の書体も実銃と同じ書体で入れられていますので、雰囲気は良い感じです。刻印自体は型で入れられているようです。H&Kの商標は国内はクリアしているとのことでパッケージを含め問題無いのでしょうが、輸出はどうするんでしょうね。
スライドストップやコントロールレバーの色目もマット調で違和感の無い良い仕上げになっています。惜しいのはコントロールレバーにパーティングラインが縦に残っているところかな。以前からマルイは金属パーツの仕上げが他に比べて弱いですね。
大型のコントロールレバーはクリック感もあって操作しやすいですが、デコッキング時にハンマーのテンションがそのままレバーに伝わるのがイマイチ。レバーから手を放さないと完全にデコッキングできないんですよね。
P30のグリップパターンそのままのグリップは、スパイダーグリップというのだそうです。P30と異なり、グリップエンドのピンを抜いて交換できるのはバックストラップだけですが、ノーマルのMサイズで充分手にフィットします。実銃にある内部のロックアウトデバイスは再現されていません(もっとも再現してあるKSC製でも使ったことは皆無ですけど)
バレル先端には見慣れたゴム製Oリングがないと思ったら、緑色では無く黒色のものがついていました。黒いタイプもあるようですが、H&KのOリングは緑色だと刷り込まれているので残念なところです。
ダストカバー部はピカニティレイル仕様でUSPに比べ汎用性が高くなっていますが、手持ちのシュアファイア社のX200を取り付けたところ、レイルはやや小さめのようです。取付は楽にできますが、前後にガタがでます。
インサイトテクノロジー社のM3ライトでも同じような症状なので、レイル溝の寸法に誤差があるようです(KSC社製のHK45は取付はキツイぐらいですが,両社のライトともガタ無く取り付けできます)。
シュアファイアの場合はパーツの交換でガタの調整できるようになっているので、実銃でもある程度の寸法誤差はあるようです。
気になったのがスライドストップノッチです。取説にも削れ防止のために金属パーツを使用と書かれていたのに、金属で補強されている形跡がありません。
裏側から見てみても、金属パーツらしきものは見当たりません。スライド内部に凹部があるので、プレート状のパーツを取り付けるスペースかもしれません。
ご指摘があって、フレーム部に本来のスライドストップパーツがあるのが分かりました。
フレームのトリガー上部にある金属パーツが実際のスライドストップの役割を果たし、最終弾発射後に上昇し、スライド内部の溝(実際のスライドストップノッチ。ここも金属パーツになっています)に引っかかってスライドストップするという驚きのメカでした。
2014,04,24修正
通常分解は、USPシリーズと同様スライドストップレバーを抜けば簡単にできます。リコイルスプリング部分やバレル部分等にアレンジがありますが、実用性重視のマルイらしい部分でもあります。
特にアウターバレル側面の段差だけで、ショートリコイル時のティルトダウンを再現するメカは秀逸です。チャンバー底面でHOPアップを調整できるシンプルさもマルイらしいところで、コストダウン意識の高さが窺えます。
マガジンはフォロアーを下げると下の広いスリット部がBB弾を流し込める、使いやすいもの。これでフォロアーがロックできれば最高なんですが、大人の事情でしょうね。マガジンはダブルカラムマガジンとしてはかなり細め。実銃を上手く再現しているって事ですが、何故か違和感が。このあたりは後ほど詳しく説明します。
次に先行したKSC製HK45と細部を比較してみます
スライド刻印を比較すると書体は実銃とほぼ同じ。マルイが型で入れているのに対し、KSCはレーザー刻印なのか、かなり細め。KSCにあるプルーフマークや検定地マークがマルイには入っていません。シリアル刻印も見慣れない形式なので、ドイツ製ではないのかも(アームズマガジンに同タイプの刻印、黒いOリングの個体写真が掲載されています)。
エジェクションポートの形状はほぼ同じ。マルイはエキストラクターがモールドなのに対し、KSCは無可動ながら別パーツで、装弾確認用のレッドペイントが入っています。
リアサイトのドットはマルイが大きめ、反対にフロントサイトのドットはマルイ勝ちいさめなので、狙った場合はKSCが同じ大きさのドットが並ぶのに対し、マルイは不揃いになって狙いにくい。今までは命中精度に関わる部分で、こんなことなかったんですけどね。
バレル、リコイルスプリング&バッファーともにマルイはオリジナルアレンジで、KSCは実銃に近い外観を重視したデザイン。機能的にはそれぞれアウターバレルのみのシュートリコイルを再現しているのでアプローチの違いが興味深い。
シアー周りもマルイ製がオリジナルなのに対してKSCは実銃に近い構造で、ディテントプレートも再現しています。
マルイ製がデコッキング時にデコッキングレバーにハンマーのテンションがかかったままになるのは、バルブノッカーをデコッキングレバーで直接固定する際に、ハンマーのテンションがノッカーを通して伝わるためのようです。
トリガーを引いた時のハンマーの位置もマルイ製は深すぎますが、これもオリジナルメカの構造上の問題です。
ここまでの比較では、リアルなKSC、アレンジメカのマルイというメーカー色がよく分かる構図になっていましたが、マルイがKSCにリアルさで勝っている点があります。それはマガジンの厚みです。
KSC製マガジンはマルイ製よりも3mmほど厚くなっています。マルイのマガジンを手にしたときに違和感があったのは、KSCのマガジンに慣れていた為です。
実銃のマガジンサイズが不明なので、HK45の記事にある「USP45のマガジンよりもHK45のマガジンを細くした」という部分を参考に、USP45のマガジンを計ってみるとHK45ノマガジンとほぼ同じサイズなのがわかりました。
(上:KSC製HK45用mg、中:KSC製USP45マッチ用mg、下:KSC製USP45用mg)
更に調べると、背面のモールドは違いますが、HK45のマガジン本体部分とUSP45マッチ用マガジンの本体部分は同サイズ。試してみたら互換性すらありました。
では太さの違うマガジンが入るグリップの太さがどうなっているか見てみます。
(上:マルイ製 下:KSC製)
グリップフレームの厚さがKSCはかなり薄いことに気がつきます。マガジンの厚さ分を相殺しようとした設計なのは確実ですね。
実際にグリップサイズをグリップ下部(HK45のマーク部分)で計って見ると予想どおりKSC製の方が1mm弱太くなっています。これがグリップ上部の付け根部分になると殆ど差が無くなっていますので、握り心地はほぼ同じということになります。
3mm厚いマガジンを入れるグリップの厚さを3mm薄く作るということはKSCの技術力でしょうけど、マガジンをオリジナル通りにしていれば発揮する必要もなかったとも言えますね。
実射についての簡単なコメント
両者ともGBBについては、それぞれ完成された技術を持っているので作動における差異は見受けられません。強いて言えば撃ち味の比較ということになりますが、マルイ製の方が反動が強めに感じ、KSC製はスライドの往復が速く感じます。
両者ともシリンダー径が15mmの負圧式GBBメカなので、違いはスライドの重量とチューニングによるものと思われます。
実際に計って見ると、スライドアッセンブリーの重量はマルイ製の方が15g程重く、撃ち味の差が裏付けられました。
集弾性については、KSCがかなり頑張ったようで、マルイ並の素直な弾道です。近いうちに具体的な資料を追加したいと思います。
最後に(サマリー)
性能的にはほぼ互角の両者のHK45。エアガンとしての機能以外にモデルガン的な再現性を重視するKSCに対し、エアガンとしての実用性とコストパフォーマンスを重視する東京マルイ。両者のトイガン造りの違いがそれぞれ良く出ていたと思います。
両者のトイガンに対する考え方の違いは実売価格にも表れていて、マルイ製が5,000円前後低価格になっています。安定した供給面も考慮すると、HK45もマルイ製が優位になるんでしょうね(個人的にはKSCのリアル路線は好きですが)。
正直言って、先行したKSCに対してマルイ製が価格とマガジンサイズ以外は、それ程良いとは思っていません。充分合格点ですが旧製品のガワを変えただけの印象で、価格相応の商品と言ったら言い過ぎですかね?
GBBメカも行き着くところまで来ると性能面の差別化は難しいので、初モデルアップやオールドモデル、旧東側等にに目を向けないと新鮮味や差別化は難しいですね。
ついでに書いておくと、総重量はスライドの重さとは異なり、マルイ製が約780g、KSC製が約850gです。理由はマガジン重量がKSC製はマルイ製より約90g重いからです。複数マガジンを持ち歩くときもマルイ製の方が優位ってことですね。
参考資料
・GUN Professionals 2012年8月号
・GUN Magazine 2014年5月号
・アームズマガジン 2012年9月号
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