KSC Vz61 (SCORPION) GBB
レビュー
実銃についての簡単な説明
VZ61 SCORPIONはチェコ語では「SA vz.61 SKORPION(61年式短機関銃 スコーピオン)」と呼ばれる、チェコスロヴァキアが1961年に正式採用した32ACP(7.65×17mm)カートリッジを使用する小型SMGです。
冷戦時代に偵察部隊や特殊部隊、車両運転手や将校の自営用として開発されたと言われています。旧ソビエトのスチェッキンAPS等と似た開発目的ですね。
低威力の32ACP弾を使用弾薬としながらも、レート・デリューサーで発射サイクルを下げることでコントロールを容易にし、フルオートの集弾性を高めることでストッピングパワーを確保していると言われています。
さらに低初速の32ACPと専用サイレンサーを組み合わせることで、消音性能はかなり高いと言われており、クローズドボルトによる命中精度の高さもあって消音銃としての評価も高いようです。
生産はCZ75等で有名なチェスカー・ゾブロヨフカ社で、1979年に生産が中止されていますが、現在も人気のため受注生産を受けているとも言われています。ユーゴスラビアへのライセンス生産や、チェコのディー・テクニーク社によるセミオートバージョンの生産も続いているようです。
日本では80年代のモデルガンブーム時にハドソンがVZ61のモデルガンを製作し、イングラムMAC11(MGCがモデルガン化 他多数)やポーランドのWz63(タナカがガスガン化)とともに、代表的小型SMGとして有名になりました。
KSC Vz61について
2014年9月末にKSCより発売された、久々の完全新規製作のGBBモデルです。HW素材を使っているので、実銃同様の約1500gの重量が売りの一つ(バリエーション展開を考えずに最初のモデルからHWモデルにするのはTT33以来)。
KSCの製品名はVz61で、SCORPIONの名称は使われていません(これも“トカレフ”を使わなかったTT33と同様)。もしかして旧東側の銃の名称も、今は商標登録されているのかな?
パッケージはVz61のみ書かれたシンプルなもの。同社のMP7A1やMP9と同じサイズなので、Vz61用としては,大きすぎます。同じサイズとすることでローコスト化を図っていると思われます。整理するときも同じサイズの箱の方が便利なのは確かですけどね。
パッケージを開けると予想どおり余裕ありすぎで、本体は左の隅にちょこんと収まっています。残りの緩衝材のスペースには予備Mg2本分の凹みが入っています。そのうちにMP7A1と同様Mg付で値下げをするんじゃ無いかと勘ぐりたくなりますね。
今回、Vz61専用サイレンサーの同時発売がありませんでしたが、パッケージ内の緩衝材にはそのスペースも無かったので、現時点では販売予定が無さそうですね。取説でも実銃のサイレンサーについて触れられているのでちょっと残念。
手にして見ると,サイズに似合わない重量感(約1550g)に驚きます。特徴的なストックは下からのワンプッシュでロックが解けて展開が可能。
この外見がサソリの尾に似ているのでスコーピオン(SCORPION)というニックネームが付いたと言われていましたが、チェコの小型SMG開発プロジェクト名がSCORPIONだったとも言われています。
左サイドの刻印は、実銃どおりアッパーフレーム下部にあるシリアルNOだけ(小さくJASGロゴもありますが)。画像では消してありますが、このナンバーは個体ごとにそれぞれ固有のもので、パッケージのシールNOと同じです。レーザー刻印なのでデジタルぽいですが、実銃よりもキレイに入っています。
蛇足ですが、いつもフレームに貼ってある黒い「MANUFACTURED BY KSC」シールの糊が変わったみたいで、剥がしやすくなってフレームにシール跡が残らなくなりました。
セレクターは実銃と同じで、セミが「1」、フルが「20」でセフティONが「0」。レバーの動きは最初はかなり固く、グリップ下指での操作は難しいですね。動かすとフレームに傷が付くのも困りものですが、実銃のフレームにも同じような傷が付いているのが確認できますからリアルってことですね。
右サイドは刻印やセレクターレバーも無く、通常あるはずのエジェクションポートも無いので表情に乏しいですね。トリガー上のホールドプレートと呼ばれるスチールパーツが目立つぐらいです。
改めて見ると、Vz61は、各種ピンやトリガーガード、ストック、フロントサイト、レート・デリューサー等、ブルー仕上げのスチールパーツが多いですね。マガジンボトムもブルー仕上げのスチールパーツなので、錆には気をつけないと。
画像上の矢印部分(バレルの根本にある段差)は専用サイレンサーを取り付けるためのもの。サイレンサーの取付金具でこの部分をドリルのチャックのように締め付けて固定するんだそうです。
フロントサイトは偏心したポストタイプのもの。サイトを回す事で上下左右の調整が出来るようになっています。50年代に開発されたUZIのフロントサイトと同じタイプです。サイトガードはストックの固定金具を兼ねているので弾性のあるスチールプレスで作られています。
リアサイトはL字ブレードの2段切り換えタイプです。サイトブレードの切り込みはU字タイプで、実用性は問題無いものの、開発された年代を感じる部分です。
上面から見ると独特のコッキングノブが、極力厚みを減らすためのデザインだと言うことが分かります。ストックを畳むと本当にコンパクトです。エジェクションポートが真上に付いているので、排莢する所を見て見たくなりますね。
マガジンハウジング部分は刻印がしっかり入っていますが、これはチェコ製Vz61のそのままです(KSCロゴを除く)。本来4桁の数字はシリアルNOなんですが、KSCのアッパーフレームに入っている固有のシリアルとは異なったNOとなっているのが残念なところ。
トリガーガード横に見える長方形のパーツが、本モデルで初めて機能することになったボルトストップレバー(KSCのパーツ名ではボルトキャッチなので、以下はボルトキャッチに統一)です。
画像上の矢印部分のピンを押し込むことで、実銃同様にストックを左側に外すことが出来ます。この機能を再現したのも今回のKSCが初となります。
一方でストックの取り外しが簡単に出来るような構造のため、過去のハドソン製モデルガンのように本体を金属で作れなくなった(ストックがあれば長物扱い)という噂も聞こえてきます。
ストックを外すとこのような状態になります。スッキリとはしますがSCORPIONらしさというかアクが無くなりますね。
実銃のセミオートverはこんな感じですが、トイガンで敢えてストックレスverが欲しいと思う人はいないでしょうから、スコーピオン民間verのバリエ展開は無いですね。
ストックと言えば、バットプレート部分の滑り止め加工がきちんと再現されているのは嬉しいですね。ここが再現されたのはマルイ電動ガン以来でしょうか。手間がかかるところですけど、このギザギザがあるだけで妙にリアルに見えるから不思議です。
次は内部構造について見てみます
分解はフレーム全部のピンを抜けばボルトまで簡単に取り出すことが出来ます。ピンを抜かないで中折れ状態にすることも出来ますが、元々ピンが固くてポンチを使わないと抜けないのと、ヒンジ部分の強度が不安なので見かけは格好良いですけど、余り実用的ではありません。
ボルトはマグネシウム合金製で、重量はリコイルSP付で104gとかなり軽量です。強度が必要な所は焼結金属を使って補強もされているようなので耐久性も期待できます。何より、この重量だとブローバック性能云々よりも、発射サイクルの速さが期待できますね。
グリップ下部のキャップを外すとグリップとレート・デリューサー部が分解できます。レート・デリューサーは、フレーム内のフックがダンパーになっているので見かけだけの再現ですが、内部にSPが入ってテンションがかかる本格的なモノです。
金属製のレート・デリューサーが再現されたことで、フレームとグリップの剛性が非常に高くなっているのは嬉しい副産物です。フレーム基部の形状が実銃と異なるようですが、その部分を合わせると実銃用グリップが取り付けられそうです。
(画像上:発射モード(フルオート)時のボルトキャッチ、下:セフティモード時のボルトキャッチ)
画像上の発射モード時(セミ・フルとも)にはボルトキャッチはフレーム下部に出っ張ったままで、フレーム内のボルトキャッチシャフトは引っ込んだままです。
セフティをONにすると画像下のようにボルトキャッチはフレーム内に引っ込み、ボルトキャッチシャフトがフレーム内に出っ張ります。
セフティを掛けるとボルトキャッチシャフトが、ボルトの矢印の位置にぶつかって、ボルトを後退させることが出来なくなります。
形状は異なりますが実銃と同じ仕組みです。同じ仕組みと言ってもKSCのVz61ではボルトキャッチのもう一つの機能、ボルトをオープン状態で固定することができません。
このような設計になったのも、BB弾を使うガスガンと実弾を使う実銃とのマガジン構造の違いが最も大きい要因だと思われます。
実銃の場合はマガジンに画像の点線部分が無く、マガジンが空だとマガジンフォロアーの突起が赤い四角の位置に飛び出るようになっています。この突起がボルトキャッチシャフトを押してボルトをホールドオープン時に固定します。
ガスガンの場合BB弾はマガジン前部の装弾レイルに入りますから、マガジンフォロアーの突起は前方に作らざるを得ません。
したがってKSCのVz61の場合は、オープンプレーとなるオリジナルパーツを作ってボルトのオープン時に固定するようにしています。この位置ではボルトにボルトキャッチシャフトが入る溝が無いので、ボルトキャッチを使ってボルトをホールドオープン時に固定できないのです。
画像の点線部分を削れば、ボルトキャッチを使って、ボルトをオープン状態で固定することも可能になりそうですが、位置の確定や新しいマガジンを入れ多時にボルトを引いてボルトクローズが出来るかどうか,もう少し検証する必要がありそうです。
実射についての簡単なコメント
このサイズの国産GBBなので作動の心配は全くありませんでしたが、実際に撃ってみると予想どおりの調子の良さです。季節的なこともあるでしょうが、20連・40連マガジンともにフルオートで、1マガジン1トリガーで全弾撃ち尽くして、ホールドオープンすることが可能です。
注意点としてはマガジンをフル装弾(両マガジン+1発余分に入ります)にすると、ボルトの不完全閉鎖が起こるので、必ず1発少なくするか、ボルトの閉鎖を確認する癖を付けることが重要です。
集弾製については、KSCも新型パッキンを採用してからは近距離の試射でも分かるぐらい弾道がフラットで、変なクセも無く一点に集弾するようになっていますので、命中精度も期待できそうです。
初速は40連マガジンを使っても76m/sなので、充分規制内です(国産だから当たり前か)。珍しく計測できた発射サイクルは毎分1020発だから、毎秒17発。速過ぎる気もしますが動画の秒数から計算した雑な数値が、毎秒10発以上なのでそれ程的外れでも無いようです。
発射サイクルの速さは軽量ボルトの恩恵ですね。実際に20連ショートマガジンなら2秒弱、40連ロングマガジンでも4秒弱で撃ち尽しています。
実銃には無い40連ロングマガジンを、なんでKSCがわざわざオプションで作ったのかが、実射してみて初めて分かりました。20連だとあっという間に撃ち尽くしてしまうからですね。個人的には40連マガジンの見た目が嫌いですけれど、もう一本予備に購入しておきたくなりました。
ついでに言えば、KSC特有のマガジン前部にBB弾装弾レイルが露出しているマガジンは、サポートハンドでマガジンを握る撃ち方が多くなるVz61に関しては、サポートハンドに露出したフォロアーが触れるので、使い勝手が良くないようです。
KSC Vz61 SCORPIONの実射動画はこちら
最後に(サマリー)
KSCの完全新規製品は、前作TT33(トカレフ)以降旧東側路線ですが、今回のVz61はその第二弾となります。過去にいくつかモデルアップされたこともある、知名度の高いモデルであることも前作と共通していますが、過去のモデルを凌駕する作動性や再現度を持たせていることは,十分評価できます。
今回のVz61は、作動性・リアルな再現度ともにVz61の決定版だと思います。気になるのはバリエ展開が出来なさそうな事ですが、バリエ展開が可能でもどれも同じようなポリマーフレームの最新モデルよりも、個性がしっかりしていて商品寿命が長いモデルを作った方がプラスになるとの戦略かもしれませんね。
個人的には次回作のマカロフにも期待していますので、スチェッキンAPSや、Wz63などの個性的な60年代の東側銃器のモデルアップを期待したいですね。
参考資料
月刊GUN誌 1981年12月号
月刊GUN誌 2007年7月号
月刊GUN Professionals 2012年8月号
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