東京CMC RUGER MINI−14 RIFLE
Old Toy Gun Reports No,09
既に製造されていない懐かしのモデルガンを中心に取りあげる「Old Toy Gun Reports
」第9弾は「東京CMC RUGER MINI−14 RIFLE」を紹介します。
東京CMC RUGER MINI−14 RIFLEの簡単な説明
東京CMC(以下CMC)のRUGER MINI−14 RIFLE(以下MINI−14)が発売されたのは82年3月頃。MGCのVP70やマルシンのM1910等が発売されていた時期で、モデルガンブームがピークを迎え低価格モデルやキットモデルが発売され始めた頃です。
実銃のMINI−14は1972年に開発され、74年に民間市場にも販売されることになりましたが、CMCがモデルアップしたのは公的機関向けのMINI14 20GB。セミオートオンリーながらフラッシュハイダーやバヨネットラグ、30連マガジンが装備された準ミリタリーモデルです。
ネーミングから分かるように外見やメカニズムはM14を参考に、口径を.223remとして小型軽量化を図っています。最近ではアフターパーツの充実さや作動方式による命中精度の問題からM4A1に押されていますが、90年代までは人気の高いモデルでした。
80年代モデルガンのプラ化に出遅れ人気機種不足だったCMCにとって、ベストでは無いにしてもM16競合機種として、あるいはM1カービン相当の最新モデルとして妥当な機種選択だったと思います。82年10月にはバリエーションとしてサムホールストック付きの「MINI−14 SPORTER」が発売されました。
82年末から売上不審によるものと思われるCMCの恒常的なセールが始まり、翌年にはMINI−14自体もセール対象となるなど、エアガンの台頭もあって売れ行き的には今ひとつだったようです。
CMCが解散した85年度に発光された最後の総合カタログ「vol.7」には既にその姿はなく、最新モデルだったにも関わらずCMCの総合カタログには遂に掲載されずじまいでした。
そこから考えられるのは、82年から85年までの間に生産されたのは1度で、85年には生産(メーカーとしてのCMCの継続も)予定も終了していたと言うことです。
当時のモデルガンの1回の生産ロット数は現在と桁が違うほど大きかったので3年程度の供給は可能だったんでしょうね。
また、84年のセール広告にAC556Kが確認されるものの本体の確認はできたおらず、同年には生産先のタナカブランドでAC556とAC556Kの2バリエーションが発売されていることから、実際にCMCブランドで発売されたかは不明です(93RのMGCとKSCみたいなものでしょうか)。
その後CMCから発売されたスマイソン、98Kマウンテントルーパー、M1カービン ロータリーボルトが既存モデルのバリエーションやリメイクモデルであったことを考えると、実質的にCMC最後のモデルガンという事になります。
東京CMC MINI−14 RIFLE
取説や宣材を見る限り、正式な商品名は「RUGER MINI−14 RIFLE .223(5.56mm)caliber」となっていますが、モデルアップしたのはMINI−14/20GBですね。敢えて商品名を変えているのは商標がらみでしょうか。
ちなみに20GBの意味は、はっきりしていませんが20連の「Government Barrel」等と言われています。
ダンボールのパッケージはCMCにしては珍しいイラスト入り。RUGERのロゴと名前が入っているのは、商標問題に関心が薄かった時代ならではですね。こちらには「MINI-14 20GB」の文字がしっかり入っています。
ここから細部を見ていきます
バレルはスチール製で、スチールブルーの色目が綺麗です。銃身基部が塞がって銃口部にはインサートが入っているので安全面は確保されていると思いますが、その後自主規制で長ものモデルガンのスチールバレルは見かけなくなりました。
フラッシュハイダーは亜鉛合金製ですが、シャープに仕上がっているのでスチールのようです。バレル先端のネジにねじ込む手の込んだ形式で、下からイモネジで止める今風の作りではありません。
フロントサイトはダイキャストの一体成形品で、ガードを含め分厚い感じですが強度的にはこんなものでしょう。こちらは裏からのイモネジで固定する方式なので側面に付いているピンはモールドです。後にタナカが発売したフルオート可能なAC556ではフロントバンド(ガスブロック)上部にサイトが移っています。
近代的な樹脂製ハンドガードは、裏側のアルミ製インナーが省略されているのが残念。
ハンドガード中央にあるネジでバレルに固定するようになっていますが、実銃ではこの部分は単なる金属の蓋で、ハンドガードはフロントバンドとフレームで挟んで固定するようになっているようです。
フロントバンド(ガスブロック)は4本の六角スクリューでバレルに固定されています。実銃でバレルから発射ガスをボルトキャリアーに導く、作動に関わる重要なパーツですが、モデルガンではフレームとストックを固定する機能のみ再現しています。
マガジンキャッチやトリガーガード前方のセフティレバー等、トリガー周りは実銃とほぼ同じ機能を再現しています。M1ガーランドからM14と続く操作性の継続は、実銃のMINI−14が売れた理由の一つなんでしょうね。
セフティをオンした後にトリガーガード後端を下方に引っ張ってフレームとの結合を外して分解するのは実銃と同じですが、トリガーガードの強度がそれ程強くないので変形に注意する必要があります。
リアサイトは上下左右調整可能なフルアジャスタブルですが、動きが固いので実際は余り動かせませんでした。動かさないから当たりが取れなくなるのかオイルが固まるのか分かりませんが、今回改めて試しても余計固くなった気がします。
フレーム後部上面の刻印は「SMG」マーク「RUGER MINI-14Ⓡ CAL..223」「CMC」ロゴとなっています。「SMG」と「CMC」以外は実銃どおりのようです。
フレーム後端左側面の刻印はSTURM RUGER社のロゴと「STURM RUGER&CO INC Ⓡ SORTHPORT COWN USA」となっています。
実銃ではその上に、有名な「BEFORE USING GUN-READ WARNINGS IN INSTRUCTION MANUAL AVAILABLE FREE FROM」(銃を使用する前に〈スタームルガー社から〉無料で入手可能な取扱説明書を読め)が入っているので、そこまで再現して欲しかったですね。
MINI−14のロータリーボルト
CMC製MINI−14の売りの一つが、ボルトの閉鎖機構を再現した「ロータリーボルト」で、ボルトの前後進にあわせてボルト自体が約15度回転するメカが搭載されています 。
▲ 上部から見た後退直後のボルト。ボルトが反時計回りに回転しています
チャージングハンドルを外して横から見てみるとエジェクションポート右側の(a:フレームの傾斜部分)に後退するボルトの(b:ボルトラグ)がぶつかることで右側のボルトラグが上方に向かい左側のボルトラグが下がります。
その結果ボルト後退時にボルトが反時計回りに約15度回転することになります。ボルト前進時はチャージングハンドル内のパーツによって(b:ボルトラグ)が下側に押されるため、(a:フレームの傾斜)に沿ってボルトは後退時と逆に時計回りに回転します。
実際にボルトが回転してロックをするわけでは無く、あくまでボルトの動きだけを再現した擬似的なものですが、疑似ショートリコイルメカと同様、コロンブスの卵的な発想で上手に動きを再現しています。
このメカは後にM1カービンのロータリーボルトにも引き継がれますが、ボルトの動きを良くするためにクリアランスが大きくなる点や、後退時にボルトに余分な抵抗が生じる問題はありますが、単純で効果的なメカだと思います。
MINI−14のもう一つの売りはウレタン樹脂仕上げのストックです。ストックの仕上げとしてはトイガン初だったと思いますが、従来のオイル仕上げのストックに比べ表面の光沢があり非常に高級感がありました。
当時ウレタン樹脂についての知識が無かったこともありますが、ストックの良さに驚いたものです。
ストック内側のウレタン樹脂が使われていない部分を見ると、木材の質はあまり良くないようです。ウレタン樹脂仕上げの採用は、質を落としたストックの見栄えを良くするための手法だったとすると言い過ぎでしょうか。
この後、発売された従来仕上げの98KマウンテントルーパーやM1カービンのストックは、コストダウンが目に見える質感だったので的外れでは無いと思います。
バットプレートはスチール製のミリタリー色の強いもの。ストックのサイズより微妙に小さいサイズがリアルで良いですね。ストック正面のネジの頭が飛び出しているのが唯一の難点です。
マガジンはスチール製の30連で、内部にスペーサーが入っているので、ダミーカートは入れられません。実銃用マガジンよりも若干細く作られているので、互換性は無いと言われています。
本来MINI−14/20GBのマガジンは20連なので、オプション仕様のマガジンということになりますが、マガジントと本体の組み合わせ的には問題無いと思われます。個人的には30連の方が好きですね。
スリングも標準で付属しますが、M1カービンのスリングと同じキャンバス地のもの。コスト面から流用されたという事でしょうが、時代的にはナイロンスリングの方が良かったのではと思います。
次に簡単に内部を見てみます
前にも触れましたが、分解はハンマーをコッキング状態にしてからセフティをオンにした後、トリガーガード後端を下方に引っ張るとストックとフレームの結合が外れて主要アッセンブリーに分解できます。
トリガーアッセンブリーとフレームのストック内部での結合状態はこのようになっています。トリガーガード前方からフレーム内に伸びたパーツが、フレームの溝に入って、ストックを挟んだ状態で各アッセンブリーをロックします。
ハンドガードとフロントバンド(ガスブロック)を外すとフレームの主要パーツが残ります。ここからチャージングハンドルを外すのには、チャージングハンドルを後方に引いて、フレームの溝からチャージングハンドル後部を横に外します。
次にリコイルスプリングガイドの穴にピンを通してチャージングハンドルを固定してから、チャージングハンドルをリコイルスプリングごとフレーム前方に抜き出します。
後はエジェクションポートからボルトを抜き出せば、通常分解は終了です。M14等のミリタリーライフルを参考にしているだけあって、ここまでの分解はとても簡単です。
チャージングハンドルは実銃よりも前方のブロックが短くなっています(実銃はこの部分でガスブロックから導いた発射ガスを受けて、ボルトを後退させます)。
この重量のあるブロックが発射の度に前後してフレームにぶつかることが、命中精度に影響を与えるといわれています。モデルガンの場合は力が加わるチャージングハンドルのレバーが経年劣化で折れる事の方が心配です。
チャージングハンドルを外すとチャンバー部から繋がるガスバイパスが表れます。52年規制以降の長ものモデルガンは銃身基部が閉鎖されてインサートが入っているので、発射ガスを銃口に導くためのガスバイパスを備えています。
フレーム内にはパーツ表にも載っていないピンがあります。緩く刺さっているだけなので剛性確保のパーツではなさそうです。未だに機能が分かりませんがタナカの再販版では省かれています。
ボルト自体はかなり小型でシルバーメッキがかかっていますがボルトハンドルやフレームに干渉する部分は既に禿げています。モールドのエキストラクターの下に実際のエキストラクターが付いています。
発火はファイアリングピン方式で、ピンがカートのセンターに近い部分を撃つようになっているセンターファイアーに近い方式でした。
▲ MINI−14カート。一番下は5.56mm×45 ダミーカート
MINI−14のカートはプラグファイアーカートリッジに近い構造で、7mmキャップ2発を使う発火方式です。
プラグの後ろに7mmキャップを後ろ向きに詰めるところまではプラグファイアーと同じですが、リム部にインナーと前方に向けた7mmキャップを入れて2つの7mmキャップの間に発火用のスチールボールを入れるという独特なもの。
セットしたカートに衝撃を与えた場合だけでなく、キャップをセットする段階でも暴発する可能性が高い仕組みだと思いますが、安全性はどうなんでしょう。オリジナルではこのカートが10発付属します。
実際に発火していないので発火性能は分かりませんが、当時の専門誌を見る限り快調とまではいかなかったようです。
手動で操作する限りは装弾・排莢とも比較的スムーズですが、ダブルフィードマガジンによるジャムやハンマーコッキング時の抵抗(ボルトの重さ)を考えると、快調だったとは思えません。
複数のレポートでファイアリングピンの耐久性不足による不発やフルオート化が取りあげられているので、構造的な問題もあったのでしょう。後にタナカブランドで発売された時にはボルトの構造は改良されていました。
CMC製 MINI−14の宣材等の資料
▲ CMC MINI−14 取説 A5仕上がり 三つ折り 2/2C
1982年当時の販売価格
CMC RUGER MINI−14 RIFLE 37,000円
CMC RUGER MINI−14 SPORTER RIFLE 40,000円
CMC スタームルガー AC556K 38,000円
MINI−14専用マウントベース 5,000円
MINI−14 SPORTER 専用スリング(スイベル付き)4,000円
専用カートリッジ(1発) 250円
参考資料
月刊GUN 1980年12月号(実銃レポート)
月刊GUN 1982年4月号(モデルガンレポート)
月刊GUN 1982年8月号(掲載広告)
月刊GUN1982年10月号(掲載広告)
月刊GUN 1983年12月号(掲載広告)
月刊GUN 1984年7月号(掲載広告)
月刊GUN 1999年11月号(実銃レポート)
月刊コンバットマガジン 1982年12月号(モデルガンレポート)
月刊モデルガンチャレンジャー 1984年10月号(モデルガンレポート)
月刊GUN Professionals 2014年2月号(実銃レポート)
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