タナカ SIG SAUER P229 EVO2 Frame HW レビュー

レビュー

タナカのSIG P228シリーズのバリエーションモデルとして発売された SIG SAUER P229は、2012年以前の旧型のスライドながら使用カートリッジを新開発の.357SIGとしたことで、新鮮なイメージのモデルになりました。今回はこの新モデルを.357SIGカートリッジを含めてレビューしてみます。

実銃についての簡単な説明

1976年の西ドイツ警察トライアル用に、SIGSAUER P220を切り詰めたモデルとして開発されたのがSIG SAUERP225で、これが後にP6として西ドイツ各州の警察組織に採用されました。このP225にダブルカラムマガジンを組み合わせる形で開発されたのがSIG SAUER P228です。

左:タナカ製 SIG SAUER P229 EVO2、右:タナカ製 SIG SAUER P228 EVO2

P228はP220から続くシートメタルをプレスしたスライドを採用していましたが、9mm×19弾よりも強力な弾薬(.40S&Wや.357SIG)を使用するコンパクトハンドガンのニーズが高まってきたことから、1992年にステンレス鋼を削り出した強化スライドを持つSIG SAUER P229が開発されました。

1996年に9mm×19口径のP229が開発されると、プレススライドのP228は廃止され、後にSIG P220シリーズの各モデルは全てステンレス削り出し製法のスライドのモデルチェンジされました。P229も2012年頃には旧型スライドから、他のP220番シリーズに準じたデザインの新型スライドに変わり、現在も生産が続いています。

タナカ SIG SAUER P229 EVO2 Frame HWについて

タナカは1997年にGBBでSIG SAUER P229を発売しています。他のGBBがモデルガン化されたのに対して、2012年までモデルガン化されなかったのはP228と同様です。今回のモデルガン化は、四半世紀ぶりの快挙となりますが、GBB時代の主要パーツの金型を流用している(と思われる)ため、最新モデルの再現にならなかったのは少し残念なところです。

左:タナカ製SIG SAUER P229 EVO2、右:タナカ製SIG SAUER P229 GBB HW

ベースのモデルが20数年前のモデルであることが残念と書きましたが、よく考えれば元々モデルガン自体が、ウェスタンや第二次大戦、ベトナム戦争等で使用された有名な銃をモデルアップしているので、最新モデルのモデルアップの方が少ないはずです。

最近のエアガン業界の新規モデルの製品化の早さに慣れきっててしまっているから、感じる不満なのでしょう。

最初にパッケージと付属品を見てみます

パッケージはタナカのSIG SAUER P220シリーズのデザインに準じたもの。従来のパッケージが「SIG SAURE」のロゴを小さく縦に帯状に並べて、その横にモデル名を入れる実銃パッケージに似せたデザインタイプだったのに対し、センターに大きく「SIG SAUER」のロゴと、下に小さく「when it counts(肝心な時)」の文字が入っています。

このデザインは実銃のP320等に使われている、最新のパッケージデザインと色をを参考にしているようです。

パッケージの身の部分は同社SIG SAUER P220番シリーズ共通の発泡スチロール製。付属品は取説、カート5発、デトネーターレンチです。

取説はSIG SAUER P228のものに、P229の専用パーツ表を挟み込んだもの。ほとんどの主要パーツが専用パーツになっているのでP228のバリエーションと言っても、実質別モデルです。

次に本体を見てみます

スライドは最近のタナカEVO2シリーズ共通の強化樹脂製、フレームはHW樹脂なので見た目は2トーンになっています。一見して実銃のステンレススライドの表面処理したものに似た雰囲気はあります。しかもバレルはポリカーボネート風の素材なので、主要パーツ(スライド、バレル、フレーム)の色目がバラバラなのは、少し気になります。

スライドは現行タイプでは無く、P229が開発された1990年代当時の初期タイプを再現しています。9mm×19弾より強力な40S&W弾や.357SIG弾の仕様を前提に開発されただけあって、P228よりもレイル部分のスライド幅もあり、頑丈になった印象です。

実銃の写真や画像を見比べると、若干スライドトップが角張って(平面過ぎる)いる気もしますが、この辺の違和感は比べる写真の画角やライティングによっても微妙に違うので、あくまで主観です。

現行モデル SIG SAUER P229 NITRON COMPACT(SIGSAUER HPより)

2012年頃にP229のスライドも他のP220系シリーズと同デザインに変更されましたが、モデルガンのベースとなったGBBのP229が2012年以前の旧型スライドだったので、90年代の初期モデルをモデルアップしたのでしょう。

スライド左側刻印は「SIG SAUER」のブランド名と「P229」のモデル名。スライド素材の「STAINLESS」の刻印が上段に入れられています。スライド下部(レイル部分)には生産者名の「SIG SAUER .INC」と製造所在地「EXETER-NH-USA」が入っています。

右側刻印は、シリアルNO「AD 33914」がスライド、チャンバー、フレームに入っています。チャンバーには口径表示の「.357 SIG」が入っています。フレームダストカバー部にはSAUER&SOHN社の丸いロゴと「SIG ARMS INC EXETER NH-FRAME・P229・MADE IN GERMANY」生産者所在地の他にフレームはドイツ製との刻印が入っています。

タナカによると1994年製のP229をモデルアップしていると事。94年にはニューハンプシャー州エクゼターの工場でP229の生産は始まっていると思われますが、フレームの生産はドイツのSAUER&SOHN社で行われていたって事のようです。

削り出しスライドになってから、エキストラクターは外装式に変わりました。モデルガンでも忠実にエキストラクターを再現しています。

外装式エキストラクターなのに、チャンバーにカートリッジが入っていても外側から見て分かるようなインジケーター機能はありません。殆ど出っ張らないので手で触れてもチャンバーにカートリッジが装填されているか分からないと思います。実銃も同じようなものかは不明です。

タナカ SIG SAUER P229 EVO2のスライド前面
タナカ SIG SAUER P228 EVO2のスライド前面

画像上のP229のスライド前部を見てみると、何故かフレームのレイルにかかる部分のスライド下側がフラットになっているので、スライドにフレームが噛んでいないように見えます。画像下のP228のスライドの場合はスライド下部が出っ張っているので、スライドとフレームが噛み合っているように見えます。

P229のスライドをよく見ると、レイル部分にかかるスライド前方の出っ張りは、丸で囲った部分にしか無いのが分かりました。何故このようなデザインになったのかは不明ですけれど、実銃の画像を見た限りはスライドは同じような形状だったので、実銃を正しく再現しているみたいです。

 トリガーはP228と共用かと思ったら、前面にグルーブが入っていないタイプでP226 Mk25のトリガーと同じものです。個人的にはGBBのP229と同様に、P228M11に付いていたナロータイプのトリガーにして欲しかったです。

左側グリップにはP229のモデルNOが入っています。E2グリップに変更されるまでは、実銃のP229のグリップは全てこのタイプが使われていたようです。

フレーム後部にはP228等と同様に、弾性があるエストマー素材のハンマーストップが組み込まれています。ブローバック作動時の後退したハンマーの衝撃を直接フレームに伝えないようになっています。最近のモデルガンのデザインでもっとも感心した発明ですね。

▲ タナカ製 P228・P229用マガジン
▲ 実銃用 SIG P229用.357SIG用12連マガジン(SIG SAURE HPより)

実銃用の.357SIG用12連マガジンはマガジン下側2/3ぐらいから太くなっている独特の形状になっていますが、コスト面からタナカは再現を諦めて9mm×19用のP228マガジンと共用にしたようです。タナカのブログでは社外品でP228用マガジンと同形状の10連マガジンがあると述べています。

▲ タナカ製 P228・P229用マガジン

9mmカートの時はスムーズだったマガジンですが、最初に新開発の.357SIGカートを入れると8発が限界でした。その後何度かマガジンフォロアーを慣らしたりして、何とか10発を装弾することが出来ました。マガジンSPが、かなりキツキツで不安がありましたが、手動で装弾・排莢の操作する限りは問題なく作動しました。

.357 SIGカートについて

9×19mm(9mm Para)と.45ACPの中間の威力のカートリッジとして開発された10mm Autoが、威力が強すぎて9mm Para用のフレームから発射できなかったことから、同カートを短縮&弱装化して生まれたのが.40S&Wカートリッジです。

その.40S&Wカートリッジをネックダウンして.357マグナムカートリッジと同じ威力のオートピストルカートリッジを目指してSIG社が開発したのが.357 SIGカートリッジです。シークレットサービスなどが使用しているとされますが、法執行機関に大々的に採用された実績も無く、昨今では9mm Paraカートリッジの高威力化によりマイナーカートリッジ化しています。

▲ 左:.357SIGダミーカート(2発)、右:P229用.357SIG発火カートリッジ(2発)

タナカの新開発.357SIGカートリッジは、アルミ製。ダミーカートと比べてもリアルサイズで作られていることが分かります。9mm Paraよりも直径が1mm程太くなっているので、本体側の改良(ブリーチやバレルなど)も必要でしょう。マガジンが共用化できたのは、ローコスト化のためには必然だったんですね。

カートリッジは9mmEVO2カートリッジと同じ5ピース構造。パラカート時代から内部の真鍮製スリーブの意味合いが分からなかったんですけど、カートがアルミ製になってからは腐食対策として必要なのかなと納得しています。

弾頭部分が銅メッキされているのはリアルで良いですけれど、カート1発480円ってのは、昔の感覚からすれば高価ですよね。間違っても紛失しやすい屋外では撃てないです(今は別の理由で出来ないですけど)。

トップと呼ばれる発火パーツに4つのガス抜き穴が開けられているのが、.357SIGカートの改良点。従来パーツではトップの周囲にガス抜き用の溝が切られていましたが、それだとOリングに与えるダメージが大きすぎるとの事で、今回の改良に至ったようです。

従来型のトップと互換性があるとも言われていますが、本当だったらその内トップだけ別売されるか、9mmEVO2カート改が発売されるのでしょう。

簡単に内部を見てみます

P229の分解は他のP220系シリーズと同じなので、ここまでの通常分解は簡単です。普段使いのメンテナンスならば、個々までで充分です。これ以上の分解は個別に対応するときにときに行う程度でしょうね。

バレルはP228と同じ外ですが、金属製のチャンバーカバーが異なっています口径表示の「.357 SIG」とシリアルNOは、P229専用のものです。

▲ 左:P229用バレル、右:P228用バレル

バレル自体は同じものかとも思ったら、チャンバー内径はしっかり異なっていました。左側のP229用バレルはP228用に比べてチャンバーの肉圧が薄くなっています。カートリッジ径が違うので当然ですけれど、後加工では無く別バレルを作っているようなのが驚きでした。

リコイルSPユニットはP228と同じもの。SPバッファーが付いているのも同じで、フレームに組み立て難いのもそのままです。SP端の径を片側だけでも少し広くすれば入れやすくなるのにね。

ブリーチ部分はEVO2以降のP220系同様に、スライドストップノッチ削れ対策の金属プレートが入っています。スライドのノッチよりも金属プレートの方が僅かに出っ張っているので、スライドストップレバーは金属プレートにぶつかってスライドオープンすることになります。

樹脂スライドのノッチにはスライドストップレバーは実際に当たることが無いので、スライドノッチの削れは起こりません。また、ブリーチ全体が切削スライド用のブリーチに作り変られているようです。

▲ 上:タナカSIG SAUER P228の従来型ブリーチ、下:タナカP229の新型ブリーチ

新型ブリーチはブリーチエンドの形状も実銃通りで、スライド内にスキマ無く収まっています。オートマチックファイアリングピンブロックの形状も、実銃の現行モデルのものに似た丸形になっています。

P229は外装式エキストラクターのためにブリーチブロックを新しくし他と思われますが、ブリーチブロックフェイスも.357SIGカートリッジに合わせて大きくなっています。ブリーチ部分が新しくなったことで、P229の売上が良ければ新型スライドのP229が発売される可能性が少しは出てきたのかな。

タナカのグリップはP229用の実銃グリップと比べると、殆ど見分けが付かないぐらい良く再現されています。細かく見ると内側の凹部の形状が異なっていたり表面の滑り止めテクスチャーが浅かったりして、差異があるのが分かりますがサイズ等はほぼ同じ。

フレームやハンマーストラットに接触する部分を加工して、グリップスクリュー穴を広げれば実銃グリップの取付も出来そうです。

オプションパーツ

タナカのP220系シリーズと同様、P229専用のスレッドバレルも発売されています。スレッド部は14mm製ネジ仕様なので市販のエアガン用サプレッサーが流用できますが、ブローバック作動を考えると軽量の純正マルチサプレッサーを合わせるのがベストのようです。

取付は既存のバレルのデトネーターを付け替えて、スレッドカバーを外してからスライドに組み込むだけです。この手のアクセサリーが純正で発売されているだけで嬉しいです。

最後に(サマリー)

今回も発火しなかったので、外見を中心としたレビューになりましたが、ネット上の記事を見る限りは、発火性能は概ね好調のようです。今回のレビューでも気になった、マガジンの共用に伴う装弾に関する問題(8発程度しか入らない)も散見されますが、発火による装弾不良には直結していないようです。

タナカのブローバックモデルガンはSIG SAUER P220系EVO2仕様で仕上がった感があります。P229は、その最終進化形ともいえる製品となりました。ベースとなったGBBの設計が4半世紀も前なのに今の目で見ても再現度が高いのには、感心するほかは無いですね。

反面、過去のGBBの金型を流用しているとは言えスライドやグリップもモデルガン用に新規に作られているので、バリエーションモデルとしては手間がかかっています。今回は使用カートリッジまで新規に作っているので、実質別モデルですね。

P229のモデルアップでタナカの過去資産は、ほぼ使い尽くした感があります。短期間しか製造されなかった金属製のWZ63や、小型オートのCOLT 380AUTOはありますが、モデルガン化は難しいでしょうね。公表されてない旧ハドソンの金型があれば、意外な機種がモデルアップされるかもしれません。

P229でブローバックモデルガンの新規開発が終了しないことを期待したいです。

・タナカワークス SIG SAUER P229 EVO2 Frame HW・・・・・・・・・29,480円(税込)
・タナカワークスEvo2カートリッジ .357 SIG (10発)・・・ ・・・・・・・・ 5,280円(税込)
・タナカワークス P229用スレッテッド・バレル・・・・・・ ・・・・・・・・4,950円(税込)

参考資料

・月刊Gun Professionals 2019年2月号(SIG SAUER P228 by Terry Yano)
・月刊Gun Professionals 2019年5月号(SIGSAUER P229 by Yasunari Akita)
・月刊Gun Professionals 2021年4月号(タナカ SIG P229 EVO2 by Yuu Kurogane)

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