ハドソン NEWステンMKⅡ
Old Toy Gun Reports NO.10

ギャラリー

既に製造されていない懐かしのモデルガンを中心に取りあげる「Old Toy Gun Reports 」第8弾は「ハドソン NEWステンMKⅡ」を紹介します。

実銃についての簡単な説明

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第二次大戦時にダンケルク撤退後のイギリス軍が、軍再編時に不足したオートマティック兵器の早急な補充のために開発されたのがステンサブマシンガンです。本来は本土防衛用に開発されたとされ、何よりも生産性と低コストを意識しています。

最初に量産化されたMKⅠは更に簡略化されてフラッシュハイダーやフォアグリップ、木部を廃止ししたMKⅠ*(スター)になり、設計を更に簡略化し生産性を高めたものがMKⅡシリーズとなります。

MKⅠ*(スター)の製造に時間がかかる一体化した長いレシーバーチューブを廃止し、短いチューブの前後ユニットに別部品のマガジンハウジングを組み込む構造に改めたのがMKⅡでした。

これらの設計変更により、オール金属製の量産性の高いサブマシンガンとして完成し、結果初期不良はあったものの42〜44年の間に200万挺とも言われる量産が行われました。

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ちなみにMKⅢはMKⅡよりも、さらに生産性向上を目指したモデルで、高いプレス加工技術のある玩具メーカーによって設計製作されました。

制式発注されたものの排莢不良や耐久性に問題があったため二線級兵器としてMKⅡと平行生産され、MKⅡの供給が間に合うようになった43年には、MKⅢは90万挺弱で生産打ち切りになりました。

その後のモデルはMKⅡを基本とした発展型で、サイレンサー装備型のMKⅡS、試作のみに終わった空挺部隊用のMKⅣ、木製部品と精密な照準器を装備して命中精度を高めたMKⅤが作られました。

ハドソン NEWステンMKⅡの簡単な説明

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ステンサブマシンガンのモデルガンは東京CMCからMKⅡ、MGCからMKⅢがそれぞれスチールレシーバーのブローバックモデル(紙火薬仕様)として発売されていましたが、77年に52年規制でそれぞれ生産中止となりました。

その6年後の83年にレシーバーを亜鉛合金製として新たに製作されたのがハドソン製の旧ステンMKⅡです。国内メーカーのステンのトイガンは実質的に、この3社が作ったモデルガンのみでした(LSの初期エアガンやミニチュアモデルは除いています)。

ハドソン製のステンMKⅡはオリジナルのピストンファイアーカートリッジを使用するブローバックモデルで、バレルにはガスバイパスも付いていました。

聞いた話や専門誌の記事によると発火性能は良かったようでキャップ火薬1発で快調にブローバックをしていたようです。

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この旧モデルをベースに97年12月頃に発売されたのが、今回紹介する NEW ステン MKⅡモデルです。発火方式をニューピストンファイアカートリッジ(実質はCPカートと同じ)に変更し、チャンバー周りの設計を見直し実銃どおりの分解機能を持たせています。

バリエーションとしてハドソン廃業前の2009年前後にサイレンサーとスケルトンストック仕様のMKⅡSが製作され、一部スケルトンストック仕様のMKⅡの販売もあったようです。

ハドソン廃業後、金型はCAWが所有しているようですが再生産の計画は現在の所無いようです。

ハドソン NEWステンMKⅡ

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商品名はパッケージに入っているとおり「NEW STEN−MKⅡ」となっています。この時期モデルガンの売れ行きは大したこと無かったと思いますが、専用の印刷パッケージです。

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旧モデルがストックを分解して収納していたのに対し、NEWモデルではストックを装着したままマガジンハウジングを回転させた状態で入っています。

NEWモデルのパッケージはダンボールの箱自体も薄く、全長も長くなっているので、旧型とは一目で区別が付きます。

ここから細部を見ていきます

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新たに設計されたバレル周りはアルミ製のヒートジャケットが新造されて、旧モデルよりもシャープなイメージです。反面仕上げの色がZINKダイキャストのフレーム部分と異なってしまったので、一体感はありません。

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バレルジャケットを回転させて外せばバレルもそのまま前方に外せます。実銃ではチャンバー部まで外せるようになっていますが、モデルガンの場合は規制でバレル基部までとなっています。

この機構を再現するためにガスバイパスは廃止され、バレルも銃口部分のみ加工された無垢のものになっています。

規制による安全対策を考慮した設計と思われますが、発火の煙よりもリアルな構造を選択している事にハドソンの強い設計意図を感じます。

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エジェクションポート周りは、フレームの外側にマガジンハウジングがある二重構造になっていて、マガジンハウジングのエジェクションポートが一回り大きくなっています。

ボルトは亜鉛合金の地肌そのままですが、実銃では普通に黒く染められています。

エキストラクター周辺の形状が若干異なっているようですが、ハドソンのような形状のものもあったのかもしれません。

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フレームとハウジングカバーには梨地状の仕上げが施されてパーカーライジングのような、一見シャープな仕上がりになっています。

初期型のような単純なブルー仕上げの方が実銃に近いと思われますが、スチールと異なる亜鉛ダイキャストの地肌を隠すためにはやむを得なかったように思います。

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ストックはスチールパイプを溶接して作っています。一部のパーツはスチールでは無くダイキャストっぽいので、溶接にはかなりの技術が使われていそうです。

ステンのT字型ストックのグリップ部分は薄い上に角の処理がされていないので、握りにくいと言うかフィット感ゼロですね。実銃がこのような作りなので仕方ありませんが、好きになれない部分です。

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マガジンハウジングの刻印は「SMG」マーク「STEN MKⅡ」「HUDSON.NO19966」となっています。「HUDSON」以降は旧STENがNO1983910となっていたので、1996年6月の設計終了?を表しているんですかね。

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NEWステン一番の改良ポイントであるマガジンハウジングの収納位置への回転は、まずハウジングストッパーを手前に引いてフレームとのロックを外します。

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次にマガジンハウジングを左回りに90度回転させて、収納位置まできたらハウジングストッパーを固定します。

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収納位置ではマガジンハウジングのマガジン挿入口が下側になって、ドイツのステンをコピーしたゲラート・ニューミュンスターのように見えます。

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収納位置でマガジンハウジングを上方から見ると、エジェクションポートが上方に移動して左右の開口部(エジェクションポートとマガジン挿入口)が完全に塞がれているのが分かります。確かに異物が入る余地は無いですね。

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NEWステンのマガジンハウジング部の改良は良いところだけでは無く、弊害も生み出しています。それはエジェクションポートから見える銀色のチャンバー部分がマガジンハウジング収納時には固定されなくなることです。

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チャンバー左側には、マガジンハウジングが定位置の時にハウジングストッパーが入る穴が開けられていて、定位置の時はハウジングストッパーによってのみフレームに固定されるようになっています。

しかし、チャンバー下部(画像では上面)にはこのストッパー用の穴がないため、収納時にハウジングストッパーをフレームの穴に固定してもチャンバー自体は固定されません。

ボルト閉鎖していればチャンバー部の脱落は起きませんが、マガジンハウジングが収納位置でもボルトは普通に引けるので、チャンバーは簡単に脱落します。チャンバー脱落状態でボルトを戻すと破損に繋がるので要注意です。

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ステンのセフティ機能の一つははボルトコッキング時にコッキングノブをセフティスロットに入れる事で行います

もう一つのセフティ機能はボルト閉鎖時にボルトをロックできるMP40と同様の機能で、NEWステンになって初めて再現されました。

(オープンボルトのSMGはボルト閉鎖時に銃を後部から落下させると、ボルトが慣性で後退しマガジンから弾を送り込んで暴発する可能性があるため)

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(画像上:ボルト閉鎖時・ボルトロックがOFF、画像下:ボルト閉鎖時・ボルトロックがON)

MP40はコッキングノブにテレスコピック機能を持たせてフレームとロックさせていましたが、ステンの場合はコッキングノブがボルトを貫通していて、押し込むことで反対側のフレームの穴に入ってロックするシンプルな方式となっています。

簡単に分解して内部を見てみます

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分解するには実銃どおり、フレ−ム後端の(リコイルSP)ボトムキャッチを押し込んでストックを下にずらすと、フレームとストックの結合を外せます。

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ボトムキャッチはフレームの溝にはまっているので、ストックがない状態でも外れません(MGCのステンはこのロックがありませんでした)。反時計回り(左)に回せばボルトキャッチ、リコイルSPをフレームから外すことが出来ます。

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コッキングノブをフレームのセフティノッチ手前の溝に合わせて抜き出すと、ボルトは後方から取り外せます。バレルジャケトを外してバレルを抜くと、通常分解は終了です。

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フレーム左右のねじを外すとカバーが外れ、トリガー・シアー周りにアクセスすることが出来ます。内部を除くとセミフルの切り換えメカ等が実銃どおりで中々興味深いです。

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後はフロントサイトをアリ溝から外して、マガジンハウジングをフレームから外すとほぼ完全分解となります。ここまでの分解の手順はバレル周りを除いて、実銃に準じています。

ハドソンがステンをリニューアルした目的の一つが、分解も含めた実銃に準じた操作性だったのは間違いなさそうですね。

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分解して気になったのがボルト。ブローバック作動のために化なり軽量化していますが、ボルト前面のマルで囲った顎の部分は細い突起2本の形状で強度的に難がありそうです。

実銃に準じた形状なのですが素材自体が脆い亜鉛合金なので、発火した祭の衝撃に何度も耐えられそうにないですね。マガジンからカートをチャンバーに送り出すパーツなだけに心配です。

カートリッジとマガジンについて

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NEWステンになって本体以外に大幅に変わったのはカートリッジ。形状が9mmパラのリアルサイズになり、発火方式もCPカートリッジに準じた形状になっています。

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(上:ハドソン NEWステン用カート、下:MGC ベレッタM9用カート)

MGCのベレッタM9用のCPカートリッジと比べると、Fピンの形状が異なる以外、ケース自体は同じもののように見えます。

ねじピッチが異なるのでMGCからケースの提供をうけた訳では無さそうですが、Fピンを除いたケースの手動での装弾排莢は問題無いので、デトネーターとFピンの加工次第ではMGCのカート(他社尾リアルサイズカート)の流用はできそうです。

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ステンのマガジンはフレーム横から糾弾する方式なので、カートを上に上げる必要がないため、マガジンSPが非常に柔らかいものになっています。

それでも給弾には問題無いようで手動での装弾・排莢は快調。発火の調子も旧ステン時代から良かったようです。

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(上:マルシン製MP40マガジン。下:ハドソン製 NEWステンマガジン)

MGCステンとMP40、CMCのステンと中田のMP40のマガジンに互換性があった(MGCの場合は互換というよりも同じマガジン)ということで、現行のマルシンMP40で試してみました。

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実銃とは異なり、問題無くマガジンハウジングに入り、キャッチもロックします。マガジンSPがステンオリジナルよりも強いですが、手動でのカートの装弾・排莢は問題無くできました。

こちらも実際の使用には調製が必要でしょうが、互換性がありそうです。

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ついでにほぼ同じサイズのMGC製MP40のマガジンも試してみました。こちらもマガジンハウジングに入ってキャッチもロックしますが、フォロアーの向きが異なるため、装弾ができませんでした。

残念な結果ですが、互換性があっても貴重な絶版マガジンをステン用に代用する事は無いので、余り意味がないですね。

最後に(サマリー)

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ハドソンのNEWステンは、実銃どおり(近い)操作性とCPカート並の発火性能を持たせた、ステンSMGの決定版とも言えるモデルガンでした。発売された97年は国産エアガンブームの真っ只中で、それほど話題にもならなかったと記憶しています。

一部高級モデルガンの台頭もあったりしたのでモデルガンへの注目度が全くなかったわけでは無かったと思いますが、大戦中のSMGということもあって機種としての関心度も低かったって事でしょうね。

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最初に述べたようにハドソン廃業間際にMKⅡSとして少数発売されたものが唯一のバリエモデルでしたから、NEWステン自体の生産数は少なかったと思います。

現在金型はCAWが保有しているそうですが、素性は悪くないので再販してもう一花咲かしてもらいたいものです。

宣材等資料

ハドソン NEWステンS-WM
▲ 取扱説明書(表1・4)
※かなり薄い紙でコピーのような感じですが、一応両面印刷されています。

手持ちの専門誌などを調べましたが、ハドソンの広告出稿は見つかりませんでした。記憶では末期のMKⅡSのシルエットを見た記憶もあるので、引き続き調べてみます。

当時の販売価格

ハドソン ステン NEW MKⅡ (カート6発付) 55,000円(税抜)
ハドソン ステン NEW MKⅡS (カート6発付) 72,000円(税抜)

参考資料

月刊GUN1983年12月号 (ハドソン 旧ステンMKⅡ)
月刊モデルガンチャレンジャー 1984年4月号(ハドソン 旧ステンMKⅡ)
月刊GUN1998年3月号 (ハドソン NEWステンMKⅡ)
月刊GUN 2008年8月号〜12月号(第二次世界大戦の小火器シリーズ)