HWS モーゼル HSc レビュー
(2016.09.21クロスハッチ 加筆)
(2016.11.14MULE直販モデル加筆)

レビュー

2年前のイベントで粉体サンプルが発表されてから、およそ1年半。ハートフォードから6月16日に発売された「モーゼル HSc」を入手したので紹介します。

実銃についての簡単な説明

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モーゼルHScは、モーゼルM1934の後継モデルとして開発された32ACP口径・装弾数8+1発のダブルアクション中型オートで、HS(Hahn−Selbstspanner ドイツ語でハンマーセルフコッキングの意味)シリーズの3番目のモデル(a、bは試作モデル)として1938年に完成しました。

完成後、軍拡中のドイツ空軍に正式採用され、陸軍や武装親衛隊の将校用拳銃としても指定され、大戦中に25万挺ほど製造されたと言われています。戦後は米インターアームズ社の依頼で、復興したモーゼル社が再生産されましたが、戦後版は380口径がメインとなり構造の一部簡略化はあったものの、68年から77年の生産に終わっています。

HWS製 モーゼル HScについて

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HWS製モーゼル HScはHW素材のダミーカートリッジ仕様のモデルガンで、同社ビンテージモデルガンシリーズの第4弾となっています。シリアルNoや取説等によると戦前(中)モデルをモデルアップしています。。

※取説では九四式・二六年式・リバレーターの次ということで第4弾となっていますが、ボーチャードはどこに行っちゃったんでしょう。大人の事情があるんですかね?

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パッケージはビンテージモデルガンシリーズ共通の、カッタウェイされたイラストが入った単色印刷のもの。最近は無地箱に商品名をシール対応するメーカーが多い中で、専用パッケージなのは嬉しいですね。

本体(マガジン含む)の他、ダミーカート8発、取説、研磨用シート、セフティ用シールが付属します。

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スライド左には「Mauser-Werke AG, Oberndorf a.N」の製造会社・所在地表記と「Mod.HSc(三本線)Kal.7,65mm」のモデル名・口径表記の刻印が入っていますが、商標に抵触するモーゼルロゴは省かれています。

モデル名の次に打たれた三本線は、シリアルNo855000〜885126までのモデル特有の刻印と言われています。HWSのHScにはスライド左側以外の刻印(シリアルNoやイーグルの受領印)は残念ながら打たれていません。

このスライドの刻印どこかで見たことあるような気がしてましたが、MGC製モーゼルHScの刻印と同じものでした。

〈2016,09,21 加筆〉
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HWSからモーゼルロゴデーターの供給を受けて、KM企画がレーザー刻印を入れるサービスを実施しています。準・純正オプションといったところですが、普段見慣れた縦線が入ったものではないモーゼルロゴになっています。

画像等で確認するとHWSがモデルアップしたシリアルのモデルは、見つけた限りこの縦線無しロゴが使われているようです。何時からロゴが変わったのかは不明で、戦後モデルは縦線有りのロゴに戻っているので大戦中期以降だけなのかもしれません。

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スライド右側は何の刻印も無くノッペリしていますが、これは実銃どおり。フレームのトリガーガード後部付け根にあるイーグルの受領印は前述の通り省かれています。

トリガーガードの三角形とアールの強いトリガーは、HScならではの個性です。トリガー形状に関しては実銃レポートで引きにくいという意見が散見できますが、トイガンのトリガープルぐらいでは、引きにくさはあまり感じられません。

HScの近代化モデルとされるHK4もトリガー形状はほぼ同じなので、少なくとも大きな問題にはなっていない気がします。

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▲ 画像上:装弾時のエキストラクター、画像下:未装填時のエキストラクター

このサイズでもエキストラクターはライブで、構造的にも実銃に準じています。

チャンバー内にカート装填時にはエキストラクターが若干出っ張ってインジケーター機能を持つようにはなっていますが、それ程出っ張るわけでは無いので、触って確認できる程度のものです。

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グリップ前面(フレームのフロントストラップ部)下側には、シリアルのNoが入れられているはずですが、HWS製HScでは省略されています。

ビンテージモデルガン シリーズの九四式等は刻印に拘っていたので、この目立つ部分の省略は残念です。

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スライド上部にはサイトチャンネルが彫られていてます。HWSがモデルアップしたのはチャンネル部のマット処理を廃止したタイプなので、溝は仕上げは他の部分と同じです。

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フロントサイトはブローニングM1910と同様、サイトチャンネル内に収まる程度の小サイズ。バレルはダミーカートモデルによくある仕様で、銃口から1cm程度の所で塞がっています。

スライドとフレーム前端部にスキマがほとんど無い上等の仕上がりには感心します。価格相応と言ってしまえばそれまでですが、この精度は良いですね。このまま経年変化が起きない事を祈ってます。

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リアサイトは別部品ながら、こちらもフレームに半分以上埋まったように取り付けられていので、完全なスナッグ・フリー状態ですね。

ハンマーもスナッグ・フリーを意識した引っ掛かりの無い形状なのに加え、コッキング時に隙間の空かないようにダスト対策も考慮されています。ハンマー軸が下側になる欠点もあるようですが、HScらしいデザインだと思える部分です。

らしいと言えばセフティメカも独特ので、薄めのセフティレバーをONにしても、ハンマーはPPKのようにデコッキングされません。この状態でトリガーを引くとハンマーが落ちます。

実銃ではフィアリングピンが上に上がってハンマーとの接触を断つ仕様になっているので、安全面に問題は無いようでですが、ワルサー系のダブルアクション&セフティに慣れていると若干違和感がありますね。

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独特と言えば、ホールドオープンしたスライドをリリースするためのレバーが無く、マガジンを挿入することでスライドをリリースするのがHSCのスライドリリースメカ。HWS製HScではこのメカをトイガンで初めて再現しています。

実銃ではモーゼルM1910から採用されているので、HSCというよりもモーゼル中型オート独自のメカですね。

メリットとしては、最終弾発射後に装弾されたマガジンを挿入するだけで、自動的にスライドリリースとチャンバーへの装填を行うので、マガジン交換時の速射性に優れています。

反面、スライドオープン&リリースに必ずマガジンの抜き差しが必要な上に、マガジンセフティまで装備しているので操作手順を理解して慣れるまでが大変です。

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トリガーガード内側には、HSc独自の分解ラッチがあります。分解の手順はハンマーをコックしてからセフティを掛けて、分解ラッチを押しながらスライドを前に押し、動いたところでスライドをバレルごと上方に外します。

HScの分解は最初にハンマーコッキングをするために、マガジンが挿入された状態で分解が可能になっていますが、同時にセフティONの状態で無いと分解ができないので安全性自体は高いと言えそうです。

分解して簡単に内部を見てみます

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ここまでの分解までは、非常に簡単に行えます。もっとも発火モデルでは無いので、頻繁にメンテナンスで分解する必要はありません。

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HScのバレルは、テイクダウンラッチとフレームの突起によって、フレームに固定されるようになっています.テイクダウンラッチを引くことでバレルの結合が外れて、分解できるようになります。

バレルがフレームに固定されているワルサーPPKなどに比べ精度が劣るとされていますが、後継モデルのHK4のように簡単に異種口径のバレルに交換できるメリットもあります。

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フレーム左側には主要パーツが固まっています。その中で特異な機能を持つのが「マガジンセフティ(エジェクター)」です。

スライドのホールドオープン時には、最初スライドのブリーチがマガジンフォロア後部にぶつかって止まっていますが、マガジンを抜くことによって(A)の部分が上昇してスライドの溝に入り、マガジンフォロアが無くなってもホールドオープンを継続します。

新たにマガジンを入れると(A)の部分が下がってスライドがリリースされるので、マガジンを一回抜いた後は実質的なスライドリリースレバーの役割を果たしています。

本来のマガジンセフティ機能は、マガジンを抜いた段階で(B)の部分が下がるので、先端の突起がトリガーバーの前進を邪魔するのでトリガーが引けなくなる仕組みです。

この他、パーツ名通りエジェクター機能もあるので一つのパーツに3通りの機能を持たせていることになります。

これだけ凝った内部主要パーツが、実銃ではプレス加工で作られているため、戦時中の大量生産にはPPK等よりも向いていたとも言われています。

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フレーム中央部にはマガジン・フィードカムというパーツがあってHSC独自の作動をします。

マガジンを挿入後マガジンキャッチがかかると同時に、このフィード・カムがマガジン最上弾をチャンバー方向に数mm押し出し、カートリッジをフィーディングし易い位置に動かします。

カートリッジを押し出したと同時に、オープンしていたスライドがリリースされるので、チャンバーへのフィーディングがより確実になるという、少々オーバーエンジニアリング的なメカです。
(不確かですが、写真で見る限りHK4にも同様なパーツが見受けられるので、同じ機能が引き継がれていそうです)。

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内部パーツとは逆にフレーム自体は軽量化のための肉抜き加工が多く、見るからに生産に手間がかかりそうです。HWSのHScもフレームの型抜きには苦労したそうです。

グリップを外してバックストラップ部の縊れ部分を押すと、しなりがあるので強度的にもギリギリの感じです。

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ちなみに戦後版のHScは、バックストラップ部を点線の部分から分割にし、ディスコネクターをトリガーバーと一体化させて生産性を高めています。

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次にスライド側を見てみます。フレームから外したばかりのスライドはリコイルスプリングとバレルと一体になっています。スライドの肉厚は想像以上に薄いので発火モデルへの転用は、まず無理でしょう。

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発火モデルでは無いので、ブリーチ部分はファイアリングピン周りもリアルに再現されています。

セフティをONにするとファイアリングピン後端が上に上がりハンマーから叩かれなくなり、同時にファイアリングピンに上部に付いているスタッド(突起)がスライド内の穴に入り、ファイアリングピン自体が固定される2重のセーフティーメカが再現されています。

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ブリーチ前面にはファイアリングピンを型で再現しています。ダミーカートモデルでもリアルなファイアリングピンの再現はここまでって事ですね。

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▲ 上:HWS製HSc、下:CAW製PPK

戦前(中)HScのリコイルスプリングは何故か左巻きで、HWS製HScのリコイルスプリングも左巻きになっています。大抵のリコイルスプリングはCAW製PPKと同様右巻き(写真で見た戦後版HScも右巻きのようです)です。

左巻きスプリングの理由はHWSでも不明だそうで、もしかするとスプリングの元になるワイヤーケーブルが右側に巻かれているので、左巻きにすることでテンションが強くなるのかもしれないとのことでした。

カートリッジとマガジン

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カートリッジは7.65×17mm(.32ACP)弾を上手に再現したものが8発付属します。ブレット部のメッキは良い感じですが、ヘッドスタンプがないのが残念です。

ちなみに他社の7.65×17mmのダミーカーとはサイズが微妙に異なるようで、CAWのPPK付属のダミーカートとは互換性がありませんでした。

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ブルーイングの綺麗なマガジンは、キャパシティが8発でフル装弾も問題無く行えます。HSc本体にフル装弾のマガジンを挿入するのにはそれなりの力が要るので、普段遊ぶには7発程度にしておいた方が良さそうです。

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マガジンボトム部は実銃どおり、かなり複雑なプレス形状をしていて、HWSも生産に当たってかなり苦労したそうです。。

それだけ戦前ドイツのプレス技術は進んでいたんですね(国内に腕の良いプレス職人がいなくなったということかもしれませんが)。

〈2016,09,21 加筆〉

HWS モーゼルHSc クロスハッチ モデル

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モーゼルHScのバリエーションモデル。オリジナルがシリアルNo855000以降の戦中モデルをモデルアップしていたの対し、NO85500より前のモデルをモデルアップしています。

バージョン 2

特徴的なのはスライド上面のグルーブに刻まれた「クロスハッチ」と呼ばれる反射防止用のチェッカーで、これは後加工で入れられているそうです。

バージョン 2

かなり細かいので、どうやって入れたのか不思議です。正直この「クロスハッチ」というチェッカーが刻まれたHScの画像は確認できていないので、実銃がどうだったのかは不明。

資料によってはマットフィニッシュと書いてあるものもあるので、同じものなのか別の仕上げかも含めて確認してみる必要がありそうです。

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もう一つの特徴はスライド左側の刻印で、一行目の「Mauser-Werke AG, Oberndorf a.N」の製造会社・所在地表記はオリジナルモデルと同じ。2行目の「Mod.HSc」のモデル名と「Kal.7,65mm」口径表記の間にあった3本線が無くなって、そのままスペースが空いた状態になっています。

〈2016.11.14.加筆〉

MULE 直販モデル HSc

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CAW系列のネットショップ「MULE」が販売した、HWS製HScに購入特典として刻印等を加えたショップオリジナルのサービスモデルで、本体価格はそのままで各種刻印が追加されオリジナルのウェイトが付属したモデル。

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スライド左側にはHWSでは省略されていたモーゼルロゴが追加刻印されています。トリガーガード付け根には「イーグルF」の警察受領印が新たに入っています。

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グリップのフロントストラップには「862869」のシリアルNOと「イーグルM(初期のドイツ海軍の所有刻印)」が新たに入っています。シリアルNOは問題無さそうですが、「イーグルM」とトリガーガードの受領刻印には残念ながら違和感を感じます。

ネットで見る限りシリアル862865のトリガー付け根の受領刻印は、はっきりしませんが「イーグル135」のようです。

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上記2点の画像出所=http://luger.gunboards.com/showthread.php?12578-Mauser-HSc-Variation-3-Kriegsmarine

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マガジンボトムにもお馴染みのモーゼルロゴが加えられています。

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グリップはオイルで仕上げられ、裏側にはグリップウェイト取り付け用の加工が施されています。付属のグリップウェイトとフレームウェイトを取り付けると、約110gの重量UPになります。

いくら購入特典とは言え、カスタム並の手間がかかっていながら加工代は上乗せされていません。納品は約5ヶ月遅れとなりましたが、かなりお得な仕様でした。

 

取扱説明書

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▲ 上:取扱説明書(表1、表4)下:取扱説明書(中面・見開き)

付属の取説は、HScについての解説と操作方法、分解・組立の手順がイラスト付きで記されたA5・8Pのもので、最近のモデルガンには珍しく印刷されています。

HWSのHP上で動画解説もされていますが、キチンとした取説があるのは(特に慣れないメカがある場合は)良いことですね。

最後に(サマリー)

MGCがモーゼHScを発売したのが1968年、翌69年には国際からもHScが発売されたています。両モデルとも幼少期に手にしたことがあるので個人的にはHScは、かなり馴染みのあるトイガンと言えます。

それから48年後に発売されたHWSのHScはシルエットこそ過去のモデルガンと同じながら、全く別次元のモデルガンとして蘇りました。

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設計年が大幅に異なるので素材やアクションの変更は当然としても、正確なディテールのスライドやフレーム、リアルに再現されたスライドリリース機構やマガジンセフティ、マガジンフィード・カムには驚かされました。

HSc独自のメカが過去再現されていなかったので、余計新鮮な驚きになっているんだとは思いますけど、素直に良くできたモデルガンと言うことなんだろうと思います。

個人的な考えですが、モデルガンの方向性の一つ「正確な再現性の追求」を突き詰めたモデルだと思います(刻印等が省略されているのは残念ですが)。

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▲ 左から、マルシン製PP、HWS製HSc、CAW製PPK

モーゼルHScが大藪春彦氏や望月三起也氏の作品に度々登場している事もあって、思い入れが強いこともあるのでしょうが、久々に満足度の高いモデルガンです。

規制で製造中止になった中型オートのモデルガン(HSc、PP、PPK、M1910etc,)が、これでほぼ出揃ったので、余計嬉しいですね。

参考資料

ドイツ軍用ピストル図鑑
月刊GUN 1992年12月号
月刊GUN 1998年5月号
月刊GUN 2004年8月号
ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル

 

・HWS モーゼルHSc   36,800円(税抜き)
・HWS モーゼルHSc クロスハッチモデル 38,800円(税抜き)
・32ACP スペアダミーカート(8発)  2,400円(税抜き)
・スペアマガジン  4,800円(税抜き)

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