VFC(UMAREX) H&K VP9 GBB(JP.Ver) レビュー

レビュー

UMAREX社から発売されたH&K VP9 GBBは、ストライカー方式を採用したH&K社の最新型オートピストルです。GBBなのでハンマー方式にアレンジされているとは思いますが、H&K社の正式ライセンスを受けているモデルに見合った、高い再現度と作動性について見ていきたいと思います。

実銃についての簡単な説明

VP9は2014年に発表されたH&Kの最新ハンドガンで、USPから続くハンマー方式で発展したP30とは異なり、ストライカー方式で開発されています。

簡単に言えばVP9はP30をベースにグロックが採用したプリセット式ストライカー方式を組み合わせたハンドガンであり、デザイン的には先行のワルサーPPQの影響も多く見受けられます。


(左:VFC製 H&K VP9、右:Starkarms製ワルサー PPQM2)

名称に使われているVPはVolksPisutole(国民拳銃)として大戦中に試作された省力型拳銃の略称で、H&Kが1973年に完成させたVP70にも同略称が使用されています。

プリセットストライカー方式による短いトリガーリセット距離や低いボアラインによる速射性の高さや、完全なアンビ仕様等の操作性の良さが評価されていますが、何よりもVPの名前の通りの高い価格競争力が新しい魅力となっているようです。

VFC H&K VP9について

2016年11月に発売されたVFC VP9は、JP.Ver.として「STD」と「DX」の2種類が発売されました。

2種の違いは「DX」版がフロント&リアサイト、ディスアッセンブルレバー、エキストラクターがCRUSADER製のスチールパーツになっているというもの。今回紹介するのは「DX」版になります。

パッケージはお馴染みのUMAREX認可によるH&Kロゴがデザインされたシンプルなもの。例によってVFCの表記は一切ありませんので、このモデルは「UMAREX H&K VP9」と言うのが正しいのかもしれません。

JP.verとは言うものの、表示シールを見ると「For sale in Asia Only」となっているので、日本向けに作ったものというよりも、輸入元が日本向けにアレンジしたという感じです。

パッケージ内には本体、取説、サイズ違いのグリップパネル&バックストラップが入っています。特に本体を守る緩衝材もないシンプルさが、却って実銃ぽい雰囲気を出しています。

フレーム左側に貼られた「MADE IN TAIWAN」の目立つシールを剥がすと実銃同様の「HK Side arms GmbH Made in Germany」の刻印が入っています。製造国表示と模型としての再現の妥協策ですね。

スライドのH&Kのロゴや「VP9」のモデル名、「9mm×19」の刻印も実銃どおりとなっています。トリガー上にあるレバーが分解時に使う、H&K製には馴染みのないディスアッセンブルレバーです。

右側刻印はチャンバー部にH&Kのロゴマークと「9mm×19」の口径表示とシリアルNO、CIP(小火器国際常設委員会)によるニトロプルーフマークが入っています。(従来の鷲の下にNが入るプルーフマークから2014年に切り替わったようです)。

スライドには同じくシリアルNO、CIPのプルーフマーク、鹿の角マークのウルム検査場の合格印、2014年を表す「BE」とドイツの国名コード「DE」刻印が入っています(年号は下2桁A=0、B=1、C=2、D=3、E=4、〜K=9と割り当てたアルファベットで表記しています。※Jは未使用)。

フレームのレイル部に小さく「Licensed Trademark of Heckler & Koch GmbH」と商標認可の文字が入っているのは、目立たせない配慮があって、良い感じです。

レイルサイズは若干大きめらしく、ワンタッチタイプのアクセサリーはキツくてレイルに入りません。最近のねじ固定タイプのアクセサリー(画像はシュアファイアXC1)なら問題無く取り付けが可能です。

フレーム右にはアンビのスライドリリースレバーが付いています。ひょろ長い形状自体がイマイチですが、トイガン的にもレバー付け根がすぐに浮いてくるので、作りもイマイチ感があります。

VP9の特徴である交換式のバックストラップとグリップパネルは、当初はそれぞれMサイズのものがフレームに取り付けられています。

グリップパネルとバックストラップの交換はグリップ下部のピンを抜いて行います。最初にバックストラップ部を下側に外せば、グリップパネルを後方に抜きだすことができます。

各パネルやストラップの取付にはガタも無くぴったりとはまるのが気持ち良いです。

付属のMサイズの他にそれぞれLサイズとSサイズが付属するので、グリップパネルとバックストラップの組み合わせはグリップパネルを左右同じものにしても9通りにもなります。

グリップパネルとバックストラップをそれぞれLサイズにすると、このような感じでかなりボリューミーになります。

バックストラップとグリップパネルの間にスキマが空いているように見えますが、実銃もこんな感じでグリッピングに影響はありません。実際に握ってみるとさすがに太すぎます。

それぞれSサイズにすると一見細すぎに見えますが、バックストラップの圧迫感が無いので、個人的には一番握りやすく感じました。

グリップパネルだけをMサイズにするとフィット感が高まる気がするので、現在どちらにするか悩み中です。細かく選択できすぎるのも考え物です。

スライド後部にはFN5-7のようなチャージングサポートと呼ばれる突起が付いていてスライド操作時に役立ちます。特にVP9はハンマーコッキング時のスライド操作が重いので、実銃並みに便利です。

スライド上面のデザインはH&K社のP30やHK45に似ています。フロント&リアサイトは両方ともスチール製ですが、鋳造パーツなのでそれ程シャープな感じが無いのが残念です。

フロント&リアサイトにはホワイトドットが入れられていますが、若干フロントサイトのドットが小さ目に感じます。それでもフロントサイト幅がリアサイトのノッチ幅と適度にクリアランスがあるので、咄嗟のサイティングがしやすいですね。


(画像上:ハンマーデコッキング時、画像下:ハンマーコッキング時)

スライド後端のコッキングインジケーターはハンマーの動きに合わせて作動する仕組みになっています。もう少し長く突き出せば触って確認もできるようになるんでしょうが、実銃の仕様どおりなので文句が言えないところです。

スライド後部にあるフレームとの噛み合わせ部分(点線部分)が実銃とは異なりスライド側に成形されています。ブリーチ内のピストンスペースの問題でしょうが、普段目に入る部分なので気になるところです。

フレームを下から見ると、レイル部分に登録NOが入ったグロックに付いているような金属プレートがあります。トリガーガード裏の「WARNING REFER TO OPERATOR’S MANUAL(取説を見ろ)」と向きが異なるのは実銃も同じようです。

マガジンは海外製トイガンによく見られるブラックメッキ仕上げで、必要以上にテカテカしています。装弾レイル部はマルイ仕様で、フォロアーを下げてレイルからBB弾を流し込めるよう、途中からレイル幅が広くなっています。

ノズルは海外仕様なので、耳を澄ませてガスの注入を確認しないと入っているのか分からないので多少不便ですが、慣れれば問題無いですね。

次に分解して簡単に内部を観てみます

分解はスライドをホールドオープンさせてからマガジンを抜き。フレーム左にあるディスアッセンブルレバーを90度下に回転させます。

その後スライドストップレバーを下げてスライドを前方に抜き出せば、バレル、スライド、フレームの各ユニットに分解できます。

ここまでの分解でVP9の基本構造が、以前紹介したHogwards製 G42と同じである事に気がつきました。

G42のメーカー名は当初StarkarmsだったのがHogwardsに変わり、元になったStarkarmsのワルサーPPQはUMAREXやVFCの名称で国内流通していたので、VFCと同じ系列かOEM関係があるメーカーではないかと推測できます。

そうであれば同じメーカーの設計の可能性が高いので、似ていても当然ですね。台湾メーカーはホント分かりにくいです。国内流通も海外のようにUMAREXブランドに統一すれば分かりやすいのに、UMAREXの正規代理店がないということなんでしょうね。

Hogwards G42 GBBのレビュー記事はこちら

G42の構造にもっとも似ているのがブリーチ部分の形状。ローディングノズルがスライド幅いっぱいの角形シリンダー構造で、ノズル位置を固定するブリーチ構造がありません。

VP9はシリンダー長があるので、ノズルのガタが比較的押さえられていますが構造的には不安定です。

ノズルのガタを押さえるためにマガジンとスライドのクリアランスをタイトにする必要があり、結果マガジンのガスルートパッキンとローディングノズル(シリンダー)の密着度が高まり、スライド後退時にローディングノズルが完全に後退しない現象が多発します。

もちろんブローバックの作動中はスライドの動きが速くて気にならない事ですが、手動でホールドオープンさせるときにエジェクションポートを見ると、萎えますね。

フレーム側はグロックシリーズと同様ハンマー方式です。トリガーバーが薄いプレス製なのが少し心配です。

G42同様スライドを引いててハンマーをコックする際、最初に固い引っ掛かりがあってスライド操作が重たいのが気になります。

VP9でも、スライド後退時にハンマーがコッキングされずにローディングノズルと干渉して、スライドが閉鎖されない事例が発生しているようなので尚更ですね。

バレルユニットはアウターバレルのチャンバー部が、インナーバレルに被さったような形状で、ショートリコイルをアシストするスプリングがインナーバレルとアウターバレルを繋いでいます。

このモデル最大の問題がバレルユニット周辺に二つあって、一つはバレルに刻まれた放熱フィンのような溝。もちろん実銃にはこんなものは無いので、どうしてこのようになったのか理解ができません。

スライドオープン時に萎える点ではエジェクションポートから見えるローディングノズル以上です。ネットで調べてみたら、このような溝のないノーマルバレルのような個体も見受けられるので、もしかしたらロット違いのようなものがあるのかもしれません。

もう一つ問題なのが、リコイルSPガイド基部についている突起です。この突起がバレル基部の溝に入ってリコイルSPガイドをチャンバー側で固定しているのですが、素材が亜鉛ダイキャスト製なのに細すぎです。

スライドが水平に動いている限りはそれ程力のかからない箇所ですが、スライドやバレルにはガタがあって余計な力がかかるので耐久性に難がある部分だと思います。

試射後の簡単なコメント

昨今の海外製GBBエアガンと同様、VP9もフロンガスで快調にブローバックします。ベースとなったG42に比べてシリンダー容積が格段に大きくなったので、ブローバック時にローディングノズルがBB弾を広い損ねる装弾不良は発生していません。

実射性能は快調で、反動も強い部類に入ると思います。気温が低いときでも22発の装弾数を2割ほど減らせば、最終弾発射後に大抵はホールドオープンします。

近距離でHOPをかけない試射した印象ですが、弾道はストレートで集弾性も悪くなさそうでした。

海外製トイガンで気になる初速は、0.2gBB弾使用時で73m/s前後(室温20℃)で、国内規制値をクリアしています。連射でガス圧が低下するとホールドオープンができなくなってきますが、国産GBBと同程度の作動性だと思います。

最後に(サマリー)

一昔前でしたら国産のKSC辺りがモデルアップしそうなH&Kの新型オートですけれど、今や最初に作るのは海外メーカーということが当たり前になってきてますね。

このVP9自体は、外見の再現性やブローバックの作動自体は国内メーカーに充分匹敵する性能だと思います。ただし独自の構造には疑問点も多く耐久性にも心配があります。

価格的に決して廉価では無いので、一般に受け入れられるにはスペアパーツの供給を含めた改善が必要ですね。国内メーカーの体力が落ちているのは分かりますが、この手のモデルは日本で造って欲しいものです。

参考資料

月刊GUN Professionals 2014年11月号