Cybergun(WE) トンプソンM1A1 GBB レビュー
フランスのCybergun社から、初のWW2サブマシンガンのGBBモデル トンプソンM1A1が発売されました。トイガンとしての正式ライセンスを元に作られたトンプソンM1A1を、いろいろな視点から見ていきます。
実銃についての簡単な説明
トンプソン サブマシンガンはジョン・トンプソンアメリカ陸軍元大佐が立ち上げた、オート・オードナンス社(以下AO社)が開発した45ACPを使用する一連のサブマシンガンの名称で、1921年に発売されたM1921を皮切りにM1928、M1、M1A1の4つのタイプが生産されています
M1A1は最終生産モデルで、M1928モデルの省力型モデルとして1942年4月に正式採用されたM1モデルを更に省力化したモデルです。
M1の内蔵式ハンマーと可動式ファイアリング分を廃止しボルト固定式のファイアリングピンに改め、セフティ&セレクターレバーの形状をシンプルなものに変更しています。
1942年10月に制式化されてから1944年に生産が打ち切られるまでに、約54万挺が生産されました。
Cybergun(WE) トンプソンM1A1 GBBについて
Cybergun社はフランスのトイガンメーカーで1983年創業(HPの内容を見る限り93年の創業の間違いのように思われます)のエアガンメーカーです。特徴は自社で生産工場を持たないファブレスメーカーの業態で、他のメーカーに発注依頼を行ってCybergun社ブランドで発売するという手法をとっています。
実銃ブランド(「GLOCK」「COLT」「FNH」「SWISS ARMS 傘下の「SIG SAUER」「MAUSER」を含む」「FAMAS」等)のトイガン用ライセンスの独占使用権を数多く所有する国際的な大手メーカーで、台湾の「INOKATSU」も買収して傘下企業になっています。
今回のトンプソンの製造企業「AUTO ORDNANCE CORPORATION」のライセンスも当然保有しており、本モデルにもロゴマークや名称が使用されています。
トイガンの製造自体は台湾の「WE AIRSOFT」が行っています。金属加工業からエアガンメーカーに進出しただけあって、総アルミ製のリアルな作りになっています。
パッケージはサブマシンガン用としては大柄で、「AUTO ORDNANCE CORPORATIONES」社製トンプソンのオフィシャルレプリカという表記になっています。
アジア圏では香港の企業がディストリビューターとなっているようで、入手したものには特に日本仕様等の文字はありませんでした。
パッケージ内は緩衝材なども無く、結束バンドでトイガン本体が固定されているシンプルなもの。アメリカの玩具のようなローコストのパッケージングには驚きましたが、これでは箱で保管しにくいですね。
付属の説明書はA3カラー裏表のシンプルなもので、基本の操作方法について写真付きで英語とフランス語で書かれています。裏面はヨーロッパとアメリカ用の注意書き等で、分解方法などについては他の海外製トイガン同様触れられていません。
もう一つの付属品がBB弾ローダーで、こちらはWE製品共通のモノ。デザイン的に???と思いますが、一応怪獣をモチーフにしているようです。
M1A1の細部から見ていきます
上下フレームはアルミ製で、全体がパーカーライズドフィニッシュ風の表面仕上げになっています。シャープな作りで良い感じなんですが、上下フレームに前後のガタがあるのは気になりますね。
右側フレームには、M1以降の特徴になっているボルトに直結したコッキングハンドルとスリットがあります。またロアフレームのトリガースプリングは、実銃通りスチールの別パーツになっています。
実銃のトンプソンSMGがオープンボルト形式の発射構造なので、トイガンのGBBには珍しく、ボルトをコッキングしたこのの状態から発射することになります。
実銃とは異なりボルトがシルバーメッキ加工されています。見た目上のアクセントになるのはもちろんですが、フリクション軽減効果を見込んだモノと思われます。
エジェクションポート前部にあるダイヤルが、HOP UP調整ダイヤルです。外見的に多少気になりますが、分解しないで調整できるところは良いですね。
バレルはM1928から放熱フィン加工を省略した形状なので、かなりのブルバレルになっています。そのためフロントヘビーになったので、実銃では反動制御が楽になり、結果的にカッツ・コンペンセイターの省略につながったと言われています。
フォアグリップは樹脂製でチープな感じがしますが、価格を考えると妥当なところでしょう。
フロントサイトは実銃どおりバレルとは別パーツのようです。マズル部にはライフリングがありませんが、これはリアル指向のモデルガン文化がない海外メーカーだからという気がします。
フレーム右側後部には生産者&所在地刻印「AUTO-ORDNANCE CORPORATION WORCESTER,MASSACHUSETTS,U.S.A」が入っていますが、これは現AUTO−ORDNANCE社の所在地でオリジナル刻印とは異なります。
実銃のM1A1には「AUTO-ORDNANCE CORPORATION」はそのままで、所在地は当時のAUTO−ORDNANCE社のあった「BRIDGEPORT,CONNECTICUT,U.S.A.」の刻印が入っています。
現行トイガンとしては正しい刻印ですけれども、レプリカモデルの模型的視点としてはどうなんでしょうね。
リアサイトは左右調整の出来ないプレス製の簡易型でピープサイトが100mm、上の凹部が200mm照準となっています。サイトの反射防止パターンも再現しているところは、こだわりを感じます。
アッパーフレーム上部の「THOMPSON」のトレードマークと「U.S. PROPERTY」刻印は実銃どおり。アッパーフレーム上面は目に付きやすい場所なので、刻印の再現は嬉しいですね。
反面、問題なのがサイト&サイトガードを止めるネジです。実銃ではサイト&サイトガードの固定はスポット溶接のようで、表面にネジの頭は露出していません。再現するに当たって、フレームの裏側からネジ止めするとかできたと思うんですが、何の工夫も無く残念です。
グリップとストックはフォアグリップと同様、樹脂製になっています。ストックの割れ止めは金属製で、実銃同様のパーツ構成になっているのが凄いです。
ストックのバットプレートには開閉式のトラップドアが再現されていて、ちゃんとオイラーが入るスペースも作られています。残念ながらオイラーは付属しません。
ストックの取付用やスイベルリングの固定用に、マイナスネジが使われているのは感心します。海外製品だと真っ先にコストダウンのため、プラスネジに変更されそうな箇所ですからね。
フレーム左側の刻印は実銃風に「THOMPSON SUBMACHIN GUN CALIBER 6mm MIA1」とシリアル「NO 20180300456」となっています。
「CALIBER.45」が「CALIBER.6MM」になっているのは我慢するとしても、製造年か何かにかこつけた結果、異常に多い桁数にしたシリアルNOは違和感ありすぎです。
グリップ上部の円形のボルトとピンによる簡易化された2個のレバーもM1A1の特徴で、機械加工された感じが良く再現されています。
マガジンキャッチレバー上部にあるの前方のレバーがセミ・フルを切り替えるセレクターレバー、後方にあるのがセフティレバーです。最初は動きが渋かったですが、何度か回しているうちにスムーズになりました。
気になるのは、セレクターレバーを回転させるとマガジンキャッチレバーのチェッカリング部に接触してしまいます。実銃でもマガジンキャッチレバーのチェッカリング上部が接触防止のために削られているようです。
マガジンはトリガー前方の溝にマガジン後部の凸部を通しながら装着します。
一部でボルトをロッキングした後にマガジンを装着するよう言われていますが、取説の図にも書かれているようにボルトクローズ時でも問題なくマガジンを装着できます。
マガジンの装着時に注意する点は、マガジンキャッチを押しながらゆっくりとマガジンを装着することと、最後にマガジンキャッチのロックを確認することです。
マガジンを最も押し込んだ位置よりもマガジンキャッチがロックする位置が、一段下がっている事に注意してください。フレームとの間若干隙間が空くぐらいの位置でマガジンキャッチを完全に押し込むようにすると上手くロックがかかります。
付属のマガジンは、M1以降に制式化された30連マガジンをモデルアップしています。BB弾の装弾数50発で、重量は約420gとGBBのマガジンとしては平均的な重さです。
マガジン上部左側のセレクターを前方にすると、BB弾を入れずにブローバックを楽しめる「空撃ちモード」。後ろにするとBB弾を撃ち終わるとボルトストップがかかる「実射モード」になります。
マガジンにBB弾が入っていない状態でセレクターを「実射モード」にすると、マガジン後部のエンプティレバー(仮称)が上に上がった状態になるので、エンプティレバー(仮称)の位置でモードを判断することも可能です。
※ボルトストップがかかる仕組みについては、後半で説明します。
次に分解して簡単に内部を見ていきます。
分解は実銃同様マガジンを外して、ロアフレーム後端のフレームラッチを押しながらアッパーフレームを前方に抜き取ります。その際トリガーを引きながら行わないとボルトが引っかかるので、注意が必要です。
上下フレームが分解できたら、アッパーフレーム後部から棒などでリコイルSPをガイドごと圧縮して、フレームの開口部から取り外します。
リコイルSPを外したボルトをフレームの切り欠き部分まで動かして、ボルトノブを抜き取ります。これでボルトをフレームから外すことが出来るようになります。
ここまでの分解は工具無しで行えるはずですが、フレームラッチや、リコイルSPガイドを押すのに棒状のツールがあった方が簡単に分解できます。
ボルト形状はシリンダー部分が前方に突き出たトンプソン独特のボルト形状に準じています。ボルト下部に突き出た金属パーツがマガジンのバルブを叩くハンマー代わりのインパクトロッド(仮称)です。
このインパクトロッド(仮称)は、ボルト閉鎖時にマガジンを入れてもバルブと干渉しないように、上方に逃げられるよう可動する仕組みになっています。
ボルト重量は単体で約200g(実際はこれにボルトノブの重量がプラスされます)と長モノGBBとしては軽い方です。表面にメッキがかかっている分レシーバーないとボルトのフリクションは軽減されると思われます。
シリンダーの可動距離は約40mmもあるので、かなりのブローバックパワーがありそうです。ボルトをフルストロークで動かすために必要な構造だと思われます。
リコイルSPとSPガイドは実銃と異なり、ユニット化されているので分解・組み立ては簡単になっています。しかもSPガイドがテレスコピックタイプになっているので、バッファー機能もあるようです。
フレーム内後端には樹脂製のバッファーも再現されて、アルミ製のボルトとフレーム後部が直接ぶつかるのを防いでいます。
分解したついでに、ボルトストップのメカニズムを見てみます。
「実射モード」にしたマガジンからBB弾が無くなると、マガジン後方のエンプティレバー(仮称)が上方に動き、M1A1本体のトリップレバー前部を上方に押し上げます。
実銃ではエンプティレバーの代わりにマガジンフォロアーがトリップレバーを作動させますが。作動のメカニズム自体は同じモノです。
マガジンにBB弾が入っている(またはマガジンが装着されていない)状態でトリガーを引くと。
(1)マガジンのエンプティレバーが下がった状態なので、トリップレバーは前方が下がって後方が上がった状態です。
(2)トリップレバーの後方が上がることによって、ディスコネクターが後方に傾いてシアレバーと常に連結した状態になっています。
(3)この状態でトリガーを引くと、トリガーと連動したディスコネクターがシアバー前部を上に動かし、シアバーと連動したシア後部のツメがボルトから離れて前進しBB弾を発射します。
次にマガジンにBB弾が入っていない状態でトリガーを引くと。
(1)マガジンのエンプティレバーが上がったことにより、トリップレバーの前方が上がって後方が下がった状態になります。
(2)トリップレバーの後方が下がることによって、ディスコネクターが前方に傾きます。それによってシアレバーとディスコネクターとの連結が外れます。
(3)この状態でトリガーを引くと、トリガーと連動したディスコネクターが動いてもシアバートの連結が外れているため、シアバーと連動したシアを動かすことが出来ずボルトはシアの爪から解放されずホールドオープン状態のままとなります。
簡単に言えば、通常のコッキング状態でトリガーを引いてもシアが動かない状態になる事が、トンプソンのボルトストップ状態ということになります。
Cybergun(WE)トンプソンM1A1のオプションパーツについて
RA-TECH製 Cybergun トンプソンM1A1対応木製ストックセット
純正では無くサードパーティ製のパーツですが、トンプソンに欠かせない別売の木製ストックセットです。NBとして入手しましたがパッケージを見ると台湾のカスタムパーツメーカー「RA-TECH」社製のようです。
木質は、それ程良いモノではありませんが、ウォールナット風のオイル仕上げで着色しているようです。見た目的には良い仕上がりで、加工精度もそれほど悪くはない感じです。
トンプソンM1A1本体から樹脂製ストックを外し、スイベルリングやバットプレート等をばらして、木製ストックに付け替えます。パーツの付け替えもジャストフィットで、ポン付け作業です。
ストックとグリップのフレームへの取付も、無加工ポン付けでできました。嬉しいことに、ストック内にはオイラー用の穴も加工されています。
グリップの角が気持ち角張っている気もしますが、握りにくいと言うほどではありません。木製ストック全体を軽く蜜蝋で仕上げたら、ほど良い艶になりました。
唯一問題だったのがフォアストックの取付で、取付用のネジ穴の角度が完全に違っていました。本来はもっと後方に寝かせなければならないネジ穴が、画像のように起きた角度に加工されていたのが原因です、
ネジ穴を電動ツールで加工して無事取付が完了しましたが、製品として納得できない仕上げですね。所持パーツのみの不具合かもしれませんが、イージーな加工ミスだけに残念です。
それでもトンプソンには木製ストックは欠かせないですね。ストックを変えるだけでリアルさが全く違ってきます。
レプリカスリング
トンプソン専用のコットン製スリング。軍装品点で扱っているドイツSTURM社製のレプリカスリングを付けてみました。
対象機種が決まっていない実銃用のレプリカスリングでも、問題なく装着可能でした。スリングの長さが短いのは実銃と同じで、実際はシチュエーションによって取付方法を変えていたようです。
Cybergun 純正20連スペアマガジン
トンプソンの初期モデル(M1921)から使用されている20連マガジンをモデルアップしたもの。スペアマガジンとして供給されていて、全長の短縮に伴い、BB弾装弾数が50発から30発に減少しています。
イメージ的には20連マガジンを装着したシルエットの方が、トンプソンらしいかもしれないですね。
試射後の簡単なコメント
作動性には定評があるWE製GBBであり、ボルト重量も平均的だったことから作動面の不安は少なかったのが正直なところ。撃つ前に唯一気になったのが、オープンボルトブローバックだったことぐらいです。
室温25.4℃、東京マルイ0.2gBB弾を使用して試射を開始しました。最初はセミオートから撃ってみましたが、作動には特に問題はありません。
オープンボルト方式なので、トリガーを引いてからボルトが動いて発射するまでに若干のタイムラグがあるのが新鮮です。精密射撃には向かないと思いますが、ボルト重量も軽いのでブレると言うほどではありません。
気になる初速は80〜83m/s程度で、比較的安定していました。
フルオートで撃ってみると1マガジン50発を問題なく撃ちきって、ホールドオープンしました。ホールドオープン状態からマガジンを入れ替えるだけで、ボルトをクローズしないで撃ち続けられるのは新鮮な楽しさがあります。
ガスの消費とマガジンの冷えについてですが、フルで撃ちきったマガジンに直ぐにBB弾を入れて撃っても、バーストなら1マガジン撃ちきることができる感じです。
フルオート時の初速は75m/s前後とセミよりも低くなる傾向があります。連射速度は計測上640rpm(毎秒約10発)と出ましたが、体感的にそこまで速いイメージはありません。
室内のみの試射なのでHOPの程度は分かりませんが、弾道自体はフラットで素直な感じで命中精度も悪くは無さそうです。
最後に(サマリー)
第2次大戦中のオープンボルトサブマシンガンのガスブローバックモデルと言うこともあって、新鮮度は抜群です。サードパーティー製の木製ストックを付けると、よりリアルになってクラシカルな雰囲気が引き立ちます。
過去の旧式モデルなのでより趣味性が高くなりますが、フルメタルで仕上げも作動面も優秀な長モノGBBとしては正直バーゲン価格のトイガンでしょう。
流通ルートによって本体価格のばらつきもありますし、木製ストックに交換すると別途価格が上乗せされますが、それでもコスパは悪くないと思います。
海外製品なので、雑な仕上げの部分や細かいキズ等も当然ありますが、個人的には許容範囲です。モデルガン代わりに室内で空撃ちするのにも最適です。
電動ガンに続き、GBBに関しても海外メーカーは国産メーカーに引けを取らなくなりましたね。一部仕上げの点で劣るところがあっても、新規モデルの開発力やモデルアップのスピードでは国産メーカーを完全に上回っています。
できればこのレベルでMP40やSTEN、UZI等のクラシカルなGBBの発売が続くと、新しいジャンルとして盛り上がるかもしれませんね。
・Cybergun(WE)トンプソン M1A1・・希望小売価格42,000円(税抜き)
・30連スペアマガジン・・・・・・・・・・ 希望小売価格 7,400円(税抜き)
・20連スペアマガジン・・・・・・・・・・希望小売価格 3,500円(税抜き)
・RA−TECH製木製ストックセット・・・・ 希望小売価格31,000円(税抜き)
参考資料
・月刊GUN誌 1996年2月号
・月刊GUN誌 1996年3月号
・月刊GUN誌 2011年9月号
・月刊GUN誌 2011年10月号
関連サイト
AUTO-ORDNANCE HP
MMULE (CAW)トンプソンM1A1レビュー
WE/CYBERGUN トンフ゜ソンGBB用 50連マカ゛シ゛ン 価格:5,967円 |
WE/CYBERGUN トンフ゜ソンGBB用 30連ショートマカ゛シ゛ン 価格:5,967円 |
RA-TECH 木製ストックセット Cybergun / WE Thompson トンプソン M1A1 31000-WONE 価格:30,132円 |
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