Pocket ワルサー・モデル9 レビュー
Pocketさんという個人の型が製作した樹脂製のディスプレイガン ワルサー・モデル9の完成品を入手したのでご紹介します。スライド操作やマガジンの脱着などは可能ですがSP類は入っておらず、飾って楽しむ1/1スケールモデルのような新しいジャンルのトイガンです。
実銃についての簡単な説明
第二次大戦以前のワルサー社は、民間向けの護身用小型セミオート・ピストルの製造からスタートし、最初の製品がが1908年に発表された6.35mm×16口径のモデル1 セミオート・ピストルです。
このモデル1の成功によってワルサー社の基盤は拡大し、第一次大戦終了までに中型モデルを含むモデル7までの6モデルを新たに開発・製造をすることになります。
第一次大戦後の1920年には新型の中型セミオート・ピストル モデル8を発表し、翌21年には、モデル1の近代化モデルとも言える護身用セミオート・ピストル モデル9を発表し第二次大戦終了の1945年まで製造が続けられました。
モデル9はスライド前部がオープンになった直線的デザインが特徴的な6.35mm×16 口径(装弾数6+1発)のな小型オート・ピストルで、全長100mmのコンパクトさと工作精度の高さで世界中に輸出されました。
因みにワルサー社のモデルナンバー・シリーズのピストルはモデル9で終了し、次期モデルのモデルPP・PPKへと発展していきます。
Pocket ワルサー・モデル9について
ワルサー・モデル9はPocketさんという個人が製作販売した樹脂製ディスプレイガンで、2019年9月開催の第91回ビクトリーショーで素組みに近い状態で少数販売されたのが最初と記憶しています。
モデルガンと違って撃発機構やスプリング類は存在しませんが、文鎮モデルと異なりスライドの可動やマガジンの脱着等のアクション的要素も備えた、新しいジャンルのトイガンです。
2020年1月開催の第92回ビクトリーショーでは、塗装済み完成品として「マットブラック仕上げ」「メタリック調ブラック仕上げ」の2種類が販売されました。
Pocket ワルサー・モデル9(メタリック調ブラック仕上げ)について
パッケージは、市販(恐らく)のかぶせタイプの折箱に専用の写真入りラベルを貼ったモノ。光沢紙を使ったパッケージと、少しレトロっぽいラベルデザインがセンス良くまとまっていて、高級感があるのが良いですね。
本体の全長は実銃と同じ100mmサイズ、想像以上の小ささです。スライド側面はキチンと平面が出ていて気泡などは見当たりません。メタリック調の塗装も綺麗で、仕上げに手間をかけている感じです。
スライド左側刻印は実銃に準じて「Walther’s Patent Mod 9.」と入っていますが、その下のワルサーバナーは商標の関係で省略されているのが少し残念。フレーム部にはセフティ用の「S」「F」刻印が入っています。
丸い窪みはセフティレバー固定用のものなので、PP等と異なり赤い塗装は入りません。
セフティレバーは可動しますが、セフティ機能はありません(撃発機構が無いので当然ですが)。クリックが無くてすぐにレバー動いてしまうのが少し残念。
グリップパネルは別パーツで、チェッカリングも綺麗に再現されています。このタイプのグリップ下部にあるワルサーバナーは例によって省略されています。
スライド右側には製造者・所在地名の「Waffenfabrik Walther Zella-Mehlis(Thür.)」刻印が実銃と同様に入っています。スライドとフレームにはドイツ製ハンドガンでお馴染みのニトロプルーフマイクがしっかり再現されています。
フレーム後部の「537483」はシリアルNOで、この位置に打刻されたモデルと左側フレームのセフティレバー前に打刻されたモデルがあるようです。
スライド後部にあるのが別パーツになっているテイクダウンラッチ。上部にある穴に付属の分解用ツールを差し込んでから下のラッチレバーを上げながらスライドを引くとテイクダウンラッチが外れて分解ができます。
スライド前方から見るとバレルとスライドがタイトに組み合わさっているのが分かります。このタイトさは量産モデルでは味わえませんね。バレル下側がかまぼこ状に凹んでいるのは、バレル下にあるリコイルスプリングと干渉しない為みたいです。
バレルはマズル奥5mmほどで完全に塞がっています。画像では分かりませんがライフリングもしっかり再現されています。
スライドを引くと、フレームと一体化された独特なバレルの形状が良く分かります。リコイルスプリングが無いので、少ない力でスライドを引くことは出来ますけど、素材の強度があまりので気を遣う部分です。
スライドオープンの状態を見ると、作動方式こそ違いますけど後のP38を彷彿させるデザインです。
エジェクションポート内にはエキストラクターの他にエジェクターも別パーツで再現されていて、モールドながらファイアリングピンまで再現されているのに驚かされます。
マガジンは外見だけの再現ですがマガジンリップやマガジンフォロアーもそれらしく再現されているので、かなりリアルです。内部に重りが入っているので、マガジン単体でも約40gの重量があります。
マガジン込みの重量は約80g。マガジン重量で半分を稼いでることになります。本体自体が小さいのとグリップ位置に重心があるので、この重量でもスカスカした感じはありません。
付属品
付属品は上から、分解用ツール、専用ドライバー、予備グリップスクリューです。専用ドライバーと予備のグリップスクリューが付属するのはスクリュー自体がレジン製のためですね。
取説はA4サイズのカラーコピー版。作動箇所と分解方法、パーツ表が画像入りで詳しく書かれています。唯一気になったのが、分解方法①の画像で分解ツールの向きが良く分からない事。
2つ折りにした太い方を差し込むようですけど、一旦差し込むとテイクダウンラッチがフレームから外れるまで、分解用ツールが抜けなくなるので焦りました。
簡単に分解してみました
取説を元に分解してみました。一部のパーツ(トリガーやマガジンキャッチ等)はそのままですが、大まかには分解できました。
分解自体に難しいところはありませんが、グリップスクリューがレジン製だったり樹脂のテンションで弾性を持たせているパーツがあるので、力の入れ加減が難しいです。慎重に丁寧にって事です。
フレームパーツもスライド同様平面がキチンと出ていて、気泡跡なども見当たりません。レジン自体も進歩しているとは聞きますが、仕上げ加工に手間をかけていると考えるべきなのでしょう。
スライドの内側ブリーチ部分にはファイアリングピンが入る溝やエジェクターをよける溝が入っていて、リアルな形状です。ヒケ防止など別の意味があるのかもしれませんが、こだわりを感じさせる部分です。
グリップはチェッカリングの山も綺麗に再現されているし別パーツのスクリューカラーも一体に見えるほど精密に作られています。グリップスクリューもレジン製とは思えない精度です。
最後に(サマリー)
最初は全長10cmのレジン製ディスプレイモデルの割には高価だと思っていましたが、実際に手にしてみると仕上げの良さと再現性&精度の高さに驚くと共に価格に対しても納得感が得られました。
レジン製というと一昔前のガレキのイメージしかなかったので、余計仕上げの良さに関心したのかもしれませんが、製作に手間がかかっているのは確かでしょう。このレベルの製品を個人で量産できるのは凄いことです。
ワルサー・モデル9なんて、モデルガンブームの時でも製品化されないようなマニアックなモデルですけれど、ワルサー好きにとってはPP〜PPKに繋がる重要なモデルで、一部の層には認知されているモデルです。
その意味ではモデルアップする機種のチョイス自体が絶妙だったんですね。
「メーカーが作らないモデルを個人が高いレベルで製作販売する」このような新しいトイガンの流れは、今後も増えていくと思われます。今まで立体化されなかったモデルが、新規に作られていくのは喜ばしいことです。
Pocketさんの次回作は年内発売を予定しているようなので、そちらも期待したいところです。このような流れを受けて、元気のない国内メーカーさんも活性化してくれれば良いのですが。
・Pocket ワルサー・モデル9完成品(マットブラック仕上げ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13,000円
・Pocket ワルサー・モデル9完成品(メタリック調ブラック仕上げ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18,000円
参考資料
・ワルサー ストーリー(徳間文庫)
・ pocketによるガンスミスと、猫に関するブログ(https://pocketsgunsmithing.militaryblog.jp)
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