HWS ナガンM1895 レビュー
実銃についての簡単な説明
ナガンM1895リボルバーはベルギー人のナガン兄弟(モシン・ナガン ライフルの共同設計者)によって設計〜完成された無煙火薬リボルバーです。当時軍用銃の刷新(黒色火薬仕様から無煙火薬仕様へ)が急務だったロシア帝国に1895年に制式採用されています。
黒色火薬時代のリボルバーは大口径弾の重量弾によって殺傷能力を高めていたのに対し、無煙火薬仕様で設計されたリボルバーは高初速の軽量弾と小型軽量化された本体との組み合わせが設計の主流となりました。その際リボルバーのシリンダーとバレルの間から漏れるガスが初速低下に与える影響が大きいことから、ナガン兄弟はガス・シール・システムを開発したとされています。
※ナガンは1892年にガス・シール・システムのパテントを取得したとされていますが、1886年にベルギー人のアンリ・ピーパー〈ヘンリー・パイパー〉が複合的なガス・シール・システムのパテントを取得しているのでパテント盗用の可能性が高いようです。
初期はベルギーのナガン社で生産されましたが1900年からはロシアの帝国ツーラー造兵廠でライセンス生産され、ロシア革命後もソビエト連邦によって1945年まで200万挺が生産されたとされています。
作動方式はシングル&ダブルアクションのものとダブルアクションオンリーものが作られたようです。口径はオリジナル弾薬の7.62mm×38.5R ナガン弾、装弾数は7発です。アクセサリーとして専用のサイレンサーや、バリエーションとして短銃身型のチェキスト・モデルが少量作られたようです。
HWS ナガンM1895について
HWSがナガンM1895の政策を発表したのは2016年頃、HWS ビンテージモデルガンシリーズの6弾目としてのラインナップでした。当初は白色の粉体試作モデルのみの展示でしたが、前作のHScのデキの良さから かなり期待したのを覚えています。
その後試作モデルの状態が何年も続いていましたが、ようやく今年になって量産一歩手前の試作モデルが発表され、予想よりも早い6月13日に販売が開始されました。
最初にパッケージから見ていきます
パッケージはビンテージモデルガン後期シリーズから共通デザインになった、カッタウェイ イラストにモデル名の入ったもの。ローコストが優先されてメーカーの意匠が反映されているパッケージは少なくなりましたが、やっぱりパッケージデザインは大事です。
パッケージ自体はN式と呼ばれる一枚の紙で組み立てられたローコスト仕様のものですが、内側に緩衝用仕切りが付けられているのがポイント。この緩衝用仕切りも一枚紙を折り込んで作られていますが、トイガン本体の固定とカートリッジ等のオプションスペースを同時に確保しているスグレモノのアイデアです。
他社ではCAWのデリンジャー用パッケージがアイデアを借用してますね。
付属の取説はA5・8P(A4・二つ折り・2枚)の1C印刷のモノ。ナガンM1895の簡単な解説と、分解図(パーツ表)・操作法と組立方法が書かれています。分解方法では無く組立方法として書かれているのは、キットモデル化の予定があるのかも。
解説文は簡単にナガンリボルバーの開発〜生産の歴史、メカニズムについてまとめてありますが、前半部分と後半部分の文章が別に書かれたようで、若干一まとまりに欠けるのが気になります。
次に本体を見ていきます
本体はHW製で表面仕上げのないナチュラルHW仕様。新規製作モデルガンらしく、平面や角もしっかり出ているシャープな造形です。また、金属製インナープレートとサイドプレートによって剛性も高くアクション時にフレームの撓りもありません。
ハンマー・ピンはS&WリボルバーのようにSPが内蔵されていないため上下にカタカタ動きますが、実用上の問題は無いようです。ハンマー・ピンが異常に長いのはガス・シール・システムのためにシリンダーが前方に動いても確実に発火させるためと思われます。
昔の俗説では「安全に持ち運ぶためにハンマー・ピンは折りたたむことが可能」というのがありましたが、構造的にもそのような事実は無いようです。
フレーム右側のローディングゲートは開いてカートリッジも装填排莢をする機能の他に、閉鎖時にローディングゲートの先端がシリンダー後部のノッチに食い込んで、シリンダーの逆回転を防止する機能を持っています。
▼ ナガンM1895のガスシールシステムの作動動画
このモデル唯一の刻印がサイドプレートに入れられたソビエト連邦時代のツーラー造兵廠の刻印と、製造年「1936」のみです。パーツごとに打たれたシリアルNOや検印を省いたのは、ローコスト化か、刻印バリエを予定しているのかな。
グリップは木製グリップでは無く樹脂製で作られています。わざわざ型を作って製作したのはグリップが3ピース構造の上に、表面が曲面構成されているため、木製グリップを作ると、チェッカリング作業が難しく不良率がUPしてコストが非常にかかるからなんだそうです。
グリップエンドは金属製に見えますが、フレームと一体の樹脂製です。ランヤードリングは金属製で、フレーム基部にしっかりと固定されています。軍用リボルバーらしい部分です。
前方から見るとシリンダーの7発装弾の様子や、シリンダー前面に付けられたガス・シール・システム用の溝が良く分かります。見慣れているS&Wやコルトリボルバーとはひと味違う雰囲気です。
フロントサイトは金属製の別パーツ。バレル下のエジェクターロッドの使い方は独特なので、順を追って説明します。まず最初に反時計回りに90℃程回します
するとロックが外れるので、エジェクターロッドを前方に引き出します。
バレルキズにあるエジェクターロッドスリーブを前方から見て8時の方向に回転させます(SAAのエジェクターロッドの位置に近いです)。
シリンダーインサートの関係で、エジェクターロッドが使える位置がシビアになりますが、実銃のようにエジェクターロッドを押し込んでカートリッジを排出させることが楽しめます。
7.62mm×38.5R ナガン弾カートリッジはオーソドックスなインナー発火タイプの5mmキャップ仕様。38SP等のカートリッジを見慣れた目には思っていた以上に小さく感じます。
インナーパーツの前後に、キャップ火薬を込めるとダブルキャップ仕様になるようです。模型的な部分だけで無く発火性能も重視して設計されているのが分かります。
分解して簡単に内部を見てみます
分解は意外と簡単で、エジェクターロッドを排莢の位置に合わせて、バレルピンを抜き出せばシリンダーを外せます。次にフレーム右側のネジを外せば、サイドプレートが外れて内部メカにアクセスできます。
リーフスプリングを外せば、ハンマー、トリガー等の主要パーツを簡単に取り外すことが出来ます。
サイドプレートは金属製で、トリガーやハンマー等の主要メカを金属製のプレートと挟む構造になっているため、アクション部の剛性が高く、作動させてもフレームのシナリは感じられません。またサイドプレートにはグリップの3パーツの内の2つが取り付けられています。
ガス・シール・システムのメカはシンプルで、ハンマーがコック位置になると、後退したトリガーによって、リコイルプレートがフレームから押し出され、カートリッジごとシリンダーを前方に動かします。シリンダーが前進すると、シリンダー前面のリング状の溝がフォーシングコーンに押しつけられてシリンダーとバレルとの隙間が無くなります。
トリガーを引いている限りシリンダーは前進しているので、シリンダーとバレルの間からのガス漏れは防げる事になります。
ナガンM1895には独立したシリンダーストップに該当するパーツがありません。トリガーを引いたときにトリガー後部がシリンダーストップの役割を果たしています。ローディングゲートの逆回転防止機能や、ガス・シール・システムによって独立したシリンダーストップが無くても、発射時のシリンダーはポジティブに定位置に固定されるようになっています。
ハートフォードがモデルアップした26年式拳銃やスタール・リボルバーもシリンダーストップが備わっていないのは、偶然かもしれませんが興味深いですね。
ローディングゲートが開いた状態でハンマーダウン時(トリガーが引かれていない)では、シリンダーの回転はフリーになります。ローディングゲート基部の突起ががあるので逆回転こそしませんがシリンダーストップが無いのが実感できます。
カート装填時にハンマーノーズがカート後部に干渉して、ハンマーを少し起こさないとシリンダーが回転しないのは仕様なのかもしれませんが、少し気になるところです。
シリンダーには側面のシリンダーストップ用の溝の他にシリンダー後部に逆回転防止用の溝、前部にはガスシールド用の溝がそれぞれ7個づつ、計21個付けられています。そのため通常の後加工による溝加工では無く、最初から型で入れる製造法を取ったため、シリンダーには複雑な形状のパーティングラインが残っています。
発火について
現在のところ、まだ発火はしていませんので発火性能については分かりません。HWSの動画を見る限り発火性能バレルカラノガス抜けは良さそうです。
▼ナガンM1895のHWS公式Youtube動画(1分11秒頃から分解方法、4分05秒頃から発火動画が始まります)
ナガン M1895用 実銃用オプションパーツ
大量生産のソ連軍らしく、現在もナガンM1895関連の実銃用パーツが流通しています。その中で比較的入手しやすい木製グリップとホルスターを紹介します。
オリジナルなのかリプロ製品なのかは不明ですが、ナガンM1895用木製グリップが流通しています。内容物はグリップ3ピースと固定スクリュー3点です。HWS製ナガンM1895は実銃用グリップの最大公約数的に〈手加工品なのでバラツキが激しいとのこと)グリプサイズを合わせたと言うことなので、入手してみました。
グリップの木質は、大量生産品という感じでウォールナット等の質感の高い木材では無さそうです。チェッカリングも粗く、市販を目的としたグリップではない仕上がりです。
さすがにポン付けは出来なかったので、グリップを多少加工して何とか取り付けました。入手したグリップはフレームのラインに近い形状でしたが、バックストラップを構成する中央のグリップだけが長さも短かくラインも微妙に合わないものでした。
グリップ固定用のスクリューは運良くネジピッチが同じだったので、HWS製のスクリューをそのまま使用しました。結論として、全ての実銃用グリップが同じ傾向かどうかは不明ですが、実銃そのものにバラツキがあるので無加工で取り付ける事はできないと思われます。
多少本体に合わなくても、この時代のモデルは木製グリップの方が似合います。握り心地は多少角張った感じはありますが、グリップ自体が細身なので、手にはフィットします。HWS純正の木製グリップが出たら比較してみたいです。
ホルスターも実銃用のサープラス品かリプロ貧家は不明ですが、表面のキズや内側のプリントを見る限り第二次大戦中のサープラス品のような気がします。表面はザラザラしたレザー製(鮫皮?)で、カバーの裏地はキャンパス地です。
付属品としてランヤードと組み立て式の分解用ドライバー、クリーニングロッドが付いてきます。ドライバーはホルスターのマズル部に入っていましたけど、ナガンM1895をホルスターに入れた場合は、収納スペースがないのが不思議。
HWSのナガンM1895をホルスターに入れると少しキツメで、フラップのストラップを留めることができません。革を馴染ませれば何とかなりそうなレベルですけど、チョット残念です。
最後に(サマリー)
HWSナガンM1895は100年以上前に設計されたビンテージガンでありながら、トイガンとしての魅力は最近のポリマーオートを遙かにしのぐものがあります。それは初の立体模型としての新鮮さであり、完全に再現されたガス・シール・システムという独自のメカニズムに対する好奇心によるものと思われます。
帝政ロシア時代に軍用拳銃として制式採用され、ソビエト連邦軍においても使用されてきた知名度の高さもさることながら、HWSによる拘りの設計と最新の技術による立体模型としての完成度の高さがあってこその魅力ですね。
今後は、純正木製グリップや7.62mm×38.5R ナガン弾の弾頭付きダミーカート、専用サイレンサーなどがメーカーオプションとして予定されているそうです。個人的には刻印バリエーションや、ショートバレルモデルなんかも期待したいところです。
参考資料
・月刊GUN 1981年7月号(Russian Nagant &Tokarev by Jack)
・月刊GUN 1991年1月号(Smallarms of WW2 (39) ソビエト編〈ナガン リボルバー〉 by M.T. & T.J.)
・月刊Gun Professionals 2021年 8月号(ナガン M1895 by Terry Yano)
・月刊Gun Professionals 2021年 8月号(ハートフォード ナガン M1895 by くろがねゆう)
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