KSC M4-MAGPUL エディション
(2.0) GBB レビュー

レビュー

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2015年7月中旬に発売されたKSC製 M4 MAGPUL エディションは、再生産モデルの位置付けですが、1年前に発売されたメガアームズ MKMから採用されたM4ver2モデルに準じた仕様(一体型アッパーフレーム、新型ボルト、実銃サイズのロアフレーム)となっています。今回は旧モデルとの変更点をメインに紹介していこうと思います。

MAGPUL社とMAGPUL PTS社について

MAGPUL社は1999年に創業された実銃用アクセサリーメーカーで、社名は初期の製品「Magazine Assist」と呼ばれるゴムストラップがMagazineをPull(引き抜く)ところから命名されたと言われています。

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M4用のポリマー製マガジン(PMAG、EMAG)やアクセサリー(CTRストック、MOEハンドガード、MBUS)等の開発の他、実銃の設計(MASADA、FPG、)も手掛けているが生産設備までは保有していないので、MASADAも生産はブッシュマスター社が行っています。

2008年頃には企業グループとして、実銃アクセサリー製造の「MAGPUL INDUSTRIES」、火器の訓練を行う「MAGPUL DYNANICS」、エアソフトガン向けアクセサリーの設計・製造を行う「MAGPUL PROFESSIONAL TRAINING SIMULATION(MAGUPUL PTS)」の3社体制が確立し、日本でも「MGPUL PTS」のアクセサリーや公認トイガンが流通していました。

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正式な発表自体ありませんが、2013年にMAGPUL PTS社は解散し、香港にあったMAGPUL PTS社をベースに別会社の「PTS SYNDICATE」となったようです。それを裏づけるようにMAGPUL社のHPには既に「MAGPUL PTS」の文字はありませんし、PTS社のHPには「MAGPUL 」の文字や、過去のMAGPUL PTS製品はありません。

現に「MAGPUL PTS」ブランドの商品は市場では殆ど見られなくなり、PTS社はMAGPUL PTS社時代と似たシルエットの別商品を市場に供給しているので、MAGPUL社と資本関係やライセンス契約が切れているのは確かでしょう。

MAGPUL PTS社の日本正規代理店だったアクセスオーバーシ−ズ社のHPではPTS社は「PTS SYNDICATE」に変わっているものの、一部「MAGPUL PTS」製品も掲載されているのが現状を分かりにくくしていると思いますが、単に「MAGPUL PTS」時代の商品が在庫として残っているものと思われます。

KSC社とPTS社、今回のMAGPULエディションとの関係は推測ですが、MAGPUL PTS社時代のライセンス契約に基づいたものによる再生産と考えるのが妥当でしょう。個々のパーツに仕様変更が一つも無いのは、何らかの縛りがあるからだと思っています。

実際に生産しているKWA社のHPにはMAGPULエディションやの姿は無いので、日本国内に限った特例処置のようなものかもしれません。

KSC M4 MAGPUL エディション(2.0) GBBについて

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新しくなったKSC M4A1 ve2 GBBのバリエーションモデルとして、オリジナルのM4A1にMAGPUL PTS製のMOEハンドガード&グリップ、CTRストック、MBUSを装着し、ロアフレームをMAGPULデザインにしたモデルとなっています。

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パッケージは前作と同様、国内流通していたKWA製と同じデザインながら、KSC専用に印刷されたものになっています。それにしてもMAGPUL社とPTS社同様、KSC社とKWA社の関係もはっきりしないですね。

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「ver2」の表記はシール対応のみなので、前作時に印刷したものを流用していると思われます。位置づけとしてMAGPUL エディションの再生産ということであれば、区別が出来れば良いという事なんでしょうね。

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内容物は前回と同じ、本体、PMAGタイプマガジン、取説、バレル用工具、ローダー、サイドスリングアダプター、取説、ダミーカートなどが付属します。

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ロアフレームはMAGPULオリジナルデザインのものですが、ver2専用に新たに作られています。MAGPULロゴが入っているので、先に書いたMAGPUL社とPTS社の関係を考えると、2013年以降にこのフレームを新規に作ったのが不思議に感じます。

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個人的にはMAGPULフレームのマガジンハウジング前部の滑り止めや、各ラインの角張ったシルエットが好みです。マガジンハウジング部分の形状などMEGAアームズのロアフレームと似ていますが、トリガーガードの形状が異なるので金型は別でしょうね。

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ロアレシーバーはMAGPULオリジナルデザインですが、実銃用に設計されたものの銃器パーツのリスクを考慮し、トイガン用としてしか市販されなかったので、フレーム右側には「FOR TRAINING USE ONLY」の文字が入っています。

ロゴは「MAGPUL PTS」のものなので、厳密に言うとPTS社になる以前のものということですね。KSCシールの下には、連番のシリアルNOが旧モデルと同様シルバー文字で入っています。

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フレーム右側にもアイコンで「セーフ」「セミ」「フル」の表示が付いていますが、KSCでアンビセレクターをパーツとして作っているのに旧モデル同様アンビにしていません。

パーツ在庫が無かったのか、仕様が変更できない縛りがあるのかもしれませんが、個人的には残念な部分です。

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旧モデル同様チャンバー内にはKSCロゴが入っています。隠しロゴを始めたのは確かKSCが最初で、こういう部分が残っているのは好きですね。

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MOEハンドガードとグリップ、CRTストックには「MAGPUL PTS」のロゴがそれぞれ入っているMAGPULPTS社の純正パーツでPTS社になる2013年以前に生産されたもの。

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新会社になって2年も経つPTS社から新たに供給されたとは考えにくいので、予めパーツとして大量に購入していたと考えるのが自然でしょうね。

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KSCの取説には旧モデルと同様ロアフレームとともに限定輸入品となっているので、KSCからパーツ供給出来ない事になっています。

2015年現在ではこれらの単品パーツの流通自体がほぼ無くなっているので、ある意味貴重なパーツと言えます。最もNBの中華製パーツなら幾らでもありますが。

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KSCの電動ガンM4-ERG MAGPUL CQB では、ハンドガードリングのスプリングが強すぎてハンドガードの着脱が超面倒だったのが、何故かバッテリー交換の無いGBBでは普通に取り外せる弱さになっています。

MOEハンドガードの溝には専用レイルが取り付けられますが、KSCからのオプション発売はありません。個人的にはレイルがない方がFALぽくて好きですけどね。

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▲ 手前:M4-ERG MAGPUL CQB、奥:M4 MAGPULエディション(2.0)

リアサイトは旧作同様、MAGPUL PTS社製のMBUSが使われていますが、2013年末に発売された M4-ERG MAGPUL CQBではMBUS2が使われているので、ちょっと不自然。いろんな大人の事情がありそうですね。

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マガジンは旧モデル同様、見た目の良いPMAGタイプのものが付属しますが、このマガジン軽量ぽい雰囲気なのに重量的には約750gもあって、M4オリジナル(スタング)マガジンよりも150g近く重いものになっています。

「MAGPUL PTS」の刻印が入っている関係上今後も継続的に再生産されるか不明なので、つい予備として購入してしまいがちですが、マガジンを複数持つのならM4オリジナルマガジンの方が実用的ですね。

新モデル(2.0) ※M4 MAGPULエディション(2.0)と旧モデルを比べてみました

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▲ 上:M4 MAGPULエディション(2.0)、下:旧モデル

ロアフレームのストック基部の厚みが旧モデルでは約12mmなのに対し、新モデル(2.0)では約17mmと5mm厚くなっています。

この辺りのサイズの違いが実銃と同じと言われているようですが、実際の寸法が分からないので「へぇ〜」って感じです。実銃写真を見る限りは近い感じがしますけど、MGCのモデルガンに慣れていると旧モデルでも違和感がありません。

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▲ 上:M4 MAGPULエディション(2.0)、下:旧モデル

新モデル(2.0)のアッパーレシーバーは旧モデルのモナカ構造と違い一体成形になっているのが最大の相違で、強度的にかなり強くなっていると思われますが、フレーム前部のピボットピンが入る部分を見ると。旧モデルの接合部分がよく分かります。

新規に製作されたフレームなのでロアフレーム同様サイズ変更が行われていて、フレーム後部が新モデル(2.0)は約24mm、旧モデルが約30mmとなっています。ロアフレーム後部の長さが増えた分アッパーフレーム部分を減らして、フレーム全体長を調整しているのが分かります。

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▲ 上:M4 MAGPULエディション(2.0)、下:旧モデル

ボルト長もアッパーフレームのサイズ変更に伴って新モデル(2.0)ではボルトの全長が約176mmと旧モデルの182mmから6mm短縮されているので、旧モデルとのボルトの互換性は無くなっています。

アッパーフレームのモナカ構造をリアルな一体成形に変更する過程でフレームサイズを見直した結果が、上下フレームとボルトの変更に繋がったんでしょうね。個人的には金型変更するだけの価値があるのか疑問ですが、メインの海外市場では対競合上必要な改良だったんでしょうね。

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▲ M4 MAGPULエディション(2.0)のボルトキャッチ

作動に関わる改良としては、ボルトキャッチレバーにスプリングが追加されています。恐らくマガジンに残弾がある状態で、発射のリコイルでボルトキャッチが勝手に作動することを防止が目的だと思います。

実際に撃ってみると、フルオート射撃の間にボルトキャッチがかかってしまうことが数回あったので、起こりにくくなった程度は効果があるようです。

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▲ 左:旧モデル、右:M4 MAGPULエディション(2.0)

マイナスの変更点だと思うのは、アッパーフレーム上部のレイルに付いていたレイルナンバーが新モデル(2.0)では省略されていることです。

新モデル(2.0)ではレイルがフレームと一体成形になったので、旧モデルのようにプリントできなくなったのが原因と思われますが、旧モデルの発売時に売りの一つだっただけに残念です。

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▲ 上下画像とも 左:旧モデル、右:M4 MAGPULエディション(2.0)

他にも新モデル(2.0)になって、一部金属パーツが旧モデルの光沢仕上げからマット仕上げに変更されたり、フロントのスイベルリングが再度スリングとは別に付属していたりしますが、フレーム周りの違いほど大きなものはないようです。

次に分解して新設計のボルトを簡単に見てみます

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KSCのM4シリーズは上下レシーバーの精度が高いのでテイクダウンピン・ピボットピン共に抜きやすく、ここまでの通常分解は非常に簡単に行えます。

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新設計のボルトは240g弱と、旧モデルのボルトよりも全長が短い分10g程軽くなっていますが、作動面を考えると重すぎの気がします。

旧モデルはで重量約190gのオプションのスチール軽量ボルト使用時が最も調子が良かったので、200g前後にして欲しかったところです。

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ボルト前面左下側のボルトキャッチに当たる部分には、前作同様スチールパーツで補強されているので,削れの心配は無さそうです。最終弾発射後のボルトオープンはGBBの醍醐味の一つなので、大事なところですよね。

 

実射についての簡単なコメント

箱出し状態で旧モデル(スチール製軽量ボルト仕様)と撃ち比べると、あきらかに新モデル(2.0)のブローバックスピード・連射速度共に遅く、フルで1トリガー1マガジンを撃ちきるのが難しいのが正直なところでした。

ブローバックメカは前モデルのままということなんでしょうね。基本設計が5年前とはいえ、老舗の国産メーカーGBBとして期待していた分、残念な感じです。

▼KSC M4 MAGPULエディション(2.0)と旧モデルの比較動画はこちら▼

箱出し状態では満足できなかったので、応急的に手持ちの海外M4GBB用リコイルスプリング(ストライクアームズ製ソフトスプリング)に交換してみました。

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▲ 上:ストライクアームズ製ソフトスプリング、下:KSCオリジナルスプリング

抜本的には、旧モデルのブローバックを劇的に改善させた軽量スチールボルトのようにボルトを軽量化するほうが発射速度も上がって作動全体が改善すると思いますが、無い以上仕方ありません。

スプリング交換の結果、ブローバックの作動は相変わらずモッサリした感じですが、マガジンのガス容量にかかわらずフルで1トリガー1マガジンを撃ちきれるようになりました。当面はこれで妥協する事にします。

 

▼ リコイルSP交換後のKSC M4 MAGPULエディション(2.0)実射動画はこちら ▼

気になる初速はリコイススプリングの交換には関係なく、毎回80m/s前後と、旧モデルと違いはありませんでした。本来は発射速度の比較をしたかったのですが、相変わらず上手く測定できませんでした。

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最後に(サマリー)

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GBBに最適な7月にKSCがM4 MAGPULエディションの再発売、新製品紹介MASADAを投入してきたのは、マルイのM4GBB対策の意味もあると思います。

レイル付きモデルが多数を占める中、MAGPULエディションは軽量M4A1カスタムとして存在価値は高いと思いますが、作動面を比較するとマルイ製のM4A1(試射した程度ですが)に見劣りする気がします。

これは所持モデルだけのことと思いたいのですが、ノーマルの旧モデルも同じような作動性なので全般的な傾向でしょうね。

素人のリコイルスプリング交換で調子が改善するぐらいなので、国内でもう少し調整すれば作動性が飛躍的に良くなると思えるだけに残念です。

せめて旧モデルにあった軽量ボルトのオプションがあれば、もっと評価できるのですが。