KSC ベレッタM9A3 Type F レビュー
KSCから発売された ベレッタM9A3 Type Fは発売まで時間がかかりましたが、バリエーションモデルながらKSC久々の新製品ということで期待の高かったモデルです。ベレッタ M92系の最新モデルのトイガンを、見ていきたいと思います。特に気になるTANカラーの再現についても検証してみました。
実銃についての簡単な説明
1985年にアメリカ軍制式拳銃に採用されたベレッタM9の採用30周年に向けて、2014年にベレッタUSA社がアメリカ陸軍に対して独自に近代化改修案を提出。
その案には改良型最新バリエーション「M9A3」と、既存のM9に改修を施し準じた機能を持たせた「M9A2」が含まれていたとされますが、どちらも陸軍からの関心は得られませんでした。
その1年後にベレッタUSA社から一般市場向けに「M9A3」が出荷されることになります。
「M9A3」は海兵隊に採用された「M9A1」を更に発展させたもので、握りにくいと言われるグリップをヴァーテックタイプのストレートグリップに変更し、前後のストラップにチェッカリング加工を施しました。
ダストカバー部のレイルは拡張性を高めるために3本溝となり、セフティレバーやマガジンキャッチの形状も変更されています。
バレルも若干延長されてサプレッサー対応のスレッド付きになえり、何よりも全体がFDA(フラットダークアース)カラーに仕上げられていることにより、従来のM9とは異なる印象を与えるモデルになっています。
ベースモデルとしてスライド上のレバーがセフティ&デコッキング機能の「Type F」と、デコッキング機能のみでロックされないバリエーションモデルの「Type G」の2種類が生産されています。
KSC ベレッタM9A3 Type F について
11月22日に発売された「M9A3」は、2017年7月に制作が発表されてから市販されるまで1年以上かかりましたが、バリエモデルながら久々の新モデルという事で、発売前から期待の高かったモデルです。
パッケージはおなじみのシステム7以降のM9シリーズ定番のもの。新鮮さは乏しいですが、しっかりしたパッケージなのは救いです。
製品名はパッケージ横のシールのみで対応しています。パッケージのシリアルNO(画像では加工していますが)は連番になっていて、本体のシリアルNOの刻印と連動しています。
パッケージ内には本体の他に、取説、マズルガード、付属BB弾、HOP調整ツールが同梱されています。専用パッケージなのに、フロントサイト部が発泡スチロールの緩衝材に食い込んでいるのが気になります。
本体に貼ってある「MANUFACTURED BY KSC JAPAN」のお馴染みのシールは、キレイに剥がすことができる糊のタイプでした。このシールの違いって何なんですかね。
本体を取り出してみると、M9A3らしいフレームとスライド、バレルとそれぞれ異なるTANカラーに仕上がっていますが、なかなか違和感を覚える色合いにまず驚きました。
今年9月に開催された「爆裂祭」に展示されていたモデルの画像と比べてみると、カラーリングや細部の仕上げ等、市販モデルとほぼ同じ仕様だった事が分かりました。この段階ではあまり違和感を感じなかったんですけどね。
気になる色合いについては後半でまとめて考察してみるとして、細部を見ていくことにします。
スライド左側刻印は実銃通り、生産者名の「BERETTA U.S.A. CORP.」製造者所在地「ACKK.MD(Accokeek, Maryland).-MADE IN USA」が入れられています。
ベレッタロゴのPBマークは商標を避けるためか、似たようなPPマークに変えられています。また、フレームのシリアルNO「XZ012〜」はパッケージのシリアルと同じ、個体ごとに異なる連番となっています。
スライド右側刻印は実銃よりも細めの書体で、「MOD.M9A3-CAL. 9mm Para-PATENTED」と入っています。「モデル名、口径、特許取得済み」程度の意味ですね。
フレーム刻印は「WARNING:READ MANUAL BEFORE USE. RETRACT SLIDE TO SEE IF LOADED.FIRES WITHOUT MAGAZINE」となっていて、これも実銃と同じ。
「使用前にマニュアルを読め」「マガジンが無くてもスライドを引いて相談を確認しろ」といった裁判対策の注意書きです。
最初にスタームルガーが「マニュアル云々」を製品に入れたと聞いたときはかなり違和感がありましたが、最近は見慣れてきましたね。
バレルは新規につくられたパーツで、先端にはサプレッサー用のスレッドとスレッド保護用のカバーが付けられています。
実銃はバレルとカバーの色は同じカラーリングになっていますが、KSCでは何故かバレルカバーが真鍮素材のままの金色。バレルはABSの成形色のままの黄色がかったTANカラーになっています。
スレッドカバーを外すとABSバレルにそのままスレッドが切られているのが分かります。14mm逆ネジ仕様とのことですが、ABS製に直接加工したスレッドなので実際使用するにはネジ山のツブレが心配です。
また実銃ではバレルのTANカラーが塗装で、スレッド部分は地色のブラックなので印象がかなり異なっています。
M9A3に新たに採用されたレバーが10°上向きになったオーバーセンターセフティが、しっかりと新規パーツで再現されています。見た目は大して変わりませんが、セフティの操作が驚く程使いやすくなっています。
Type Fをモデルアップしているので、セフティをONにするとハンマーがでコッキングすると同時に、トリガーとシアーの連結が外れて発射ができなくなります。
実銃ではマガジンキャッチも新型のエスクテンドタイプの大型のものになっていますが、KSCのものは新規パーツにもかかわらず、高さと幅が不足しているようです。最近のモデルにしては、考えられない形状の違いです。
フロントストラップ部には、新たに横溝9本が追加され、チェッカリング仕様になり、滑り止め効果がUPしたいます。
バックストラップ部も横溝22本が追加されチェッカリング仕様になっていますが、実銃よりも溝が1本少ないようです。
ダストカバー部のレイルを比べると、バーテック用のものに新たに2本の溝を加えて、アタッチメントの取付位置の自由度を高めています。
M9A3の最もトリガー寄りのレイル部を見てみると、バーテック用のレイル跡が残っているのが分かります。
これを見るまでは、M9A3用に新たにフレームを作ったと思っていたのですが、どうやらバーテック用フレームに新たに加工を追加してM9A3用にしたようです。
グリップはTANカラーの成形色で新規に作られています。M92バーテックと同じ型なので、ベレッタロゴは省略されています。
フロント&リアサイトはホワイトドットが入ったタイプで、これもM92バーテックに使われているものと同じ。若干ドットが大きすぎる気もしますが、サイティングした時のドットサイズのバランスは悪くはありません。
次に簡単に分解してみます。
分解の手順はベレッタM9シリーズと同じで、最初にマガジンを抜いてフレーム右のディスアッセンブリーボタンを押しながら、フレーム左のディスアッセンブリーレバーを時計回りに90°回転させれば通常分解は完了です。
リコイルSPとガイドがユニット化されていないのは実銃通り。このため組み立てには少々こつが必要です。
スライド内側を見てみると、HW素材にTANからーの塗装仕上げとなっているのが分かります、塗装は厚めに塗られているようですが、バレルがショートリコイルする傾斜部分の剥げを見ると、耐久性に少々疑問が残ります。
フレーム部分もグリップの中心部分に塗り残しがあるので、塗装仕上げなのが分かります。確かにTANカラーのHW素材なんて無さそうですものね。その他の金属パーツはベレッタM9シリーズと共通パーツのようです。
バレルはABS製でTANカラーの成形色で作られています。サプレッサースレッド部分が長くなっているので、新規で作られたパーツのようです。
マガジンはマガジンバンパー以外はM9シリーズと共用でフォロアーがロックできるKSC独特の機能が付いたもの。BB弾の装弾がやりやすいものの一つです。
実銃ではマガジン自体を延長して装弾数を増やしマガジンボトムでカバーするような形状になっていますが、KSCでは従来マガジンに無垢のマガジンボトムを付ける構造になっています。
気になるのがマガジンの縁にマガジンボトムの溝を通して固定するような構造になっているため、樹脂パーツがかなり薄くなっている部分ができていること。重量のあるGBBマガジンなので破損が心配です。
TANカラーの色合いの再現について
KSC M9A3のパッケージを開けて最初に感じる違和感が、そのカラーリングです。正直、想定していた色合いとはかなり異なっています。ここでは異なっている色合いについて3つのポイントに分けて考えてみます。
(1)正しいM9A3のTANカラーの色合いはどのようなものか
実銃のM9A3のカラーリングは、スライド&バレルがセラコート塗装。アルミ合金フレームがアノダイズ(アルマイト)処理、グリップは樹脂の成形色となっています。
ということはバレル&スライドは同色で、グリップとフレームはそれぞれ色合いが異なっていると言うことになります。
実銃の画像で比較してみると
(A) ベレッタM9A3実銃画像(BERETTA U.S.A HPより)
画像が暗めなのでわかりにくい部分がありますが、バレルとフレームがアース調が強い同じトーンのカラーで、スライドとマガジンボトムがサンドカラーに近い色。グリップがそれよりも薄めのサンドカラーのように見えます。
(B) 実銃M9A3の印刷物(月刊Gun Professionals2016年6月号より)
こちらは全体的に赤みが強いですが、やはりバレルとフレームは同系のトーンで、フレームはアナダイズ処理なのでアルミの皮膜がラメのような光沢になって見えます。スライド、グリップ、マガジンボトムは同じトーンの色目に見えます。
ここで注意すべきは筆者の方が、「サンドカラーの銃は室内撮影で色合いを再現することが難しい」とわざわざ注釈を付けている点です。同じ特集内の屋外写真を見ると、BERETTA U.S.A.社のHP画像と似た色合いになっています。
カーキーやサンドカラーは撮影だけでなく印刷する際にも元の色を出すのが難しい色と言われているので、実際の印刷では現物を手元に置いて調整するぐらいです。
KSCがどのように色合いを決定したのかは分かりませんが、実銃との比較では無く印刷物や写真と比べて判断した可能性は高いと思われます。
撮影条件が異なる場合の比較
(A) 室内撮影でブルーのバックで撮影したもの(このページのスタンダード撮影)
(B) 同条件で白バックにしたもの
(C) ブルーのバックで屋外で撮影したもの
比較するためにカメラ自体はオートで撮影したので、シャッター速度や絞りは異なりますが、画像の色合いがバックや光によってかなり異なって見えるのが分かります。
ブルーをバックにした他の画像と同じ条件で白バックにすると、赤みが増してスライドとフレームの色目がGun Professionalsに掲載されているものに近い感じになります。
屋外で撮影すると。異なっているはずのバレルとスライドの色合いの差が無くなり、黄色が増してサンドに寄った色合いに見えてきます。
素人的な考察ですが、これらの事例だけでも写真では本当の色合いが分からないという事はご理解頂けたと思います。正直、実銃を実際に見てみないと本当の色合いは分からないというのが現状での結論です。
あえてM9A3のフレーム&バレルの色合いに近いものを想定するならば、東京マルイ製のM&P 9Vカスタムのスライドや、実際にアノダイズ処理されているWE SCAR Lのフレームカラーの色合いということになると思います。
これらはHPやYouTubeにUPされている屋外で撮影されたの実銃画像や動画から受けた個人的なイメージです。
(2)KSC M9A3の色合いが違和感を感じるもう一つの理由
実銃の画像を幾つかを見ると、色合いこそ違えどバレルとフレームは同じトーンでスライドとマガジンボトムも同じトーン。グリップはスライドよりやや薄い色合いように思えます。
それに対してKSCのM9A3はバレル、スライド、フレーム、グリップ、マガジンボトムの色合いがそれぞれ微妙に異なっているので、余計アンバランス感が増して違和感を増幅させていると思われます。
特にバレルとマガジンボトムのイエローの強い色合いであることが、余計に全体のバランスを崩し、マズルカバーの真鍮色が更にそれを増幅していると思われます。
(3)KSCのM9A3の色合いの違和感を無くすためには
色合いに対しての感覚は実銃を見たことが無いので、前述したアースカラーを正しい色合いだと個人的には想定しています。
また、KSC HPにあるような「鮮やかなデザートペイントの初期バージョン云々」の説明は、2015年のNRA展示会での写真(GunPro誌2016年6月号25P)を見る限り、かなり一般的では無いモデルを指している用に思われるので、あまり違和感の解消にはならないですね。
手間を考えなければ、フレーム部分をアース色の強いメタル系のTANカラーで塗り直し、バレルとマズルカバーを同系色でメタル無しのTANカラーに。さらにマガジンボトムをスライドと同色に塗り直せば、イメージしているM9A3に近づけられると思います。
簡単に済ますのなら、バレルとマズルカバーだけでも塗り直すべきですね。どちらにしても市販のTANカラーの塗料の選択が大事ですね。
そう考えるとバレルの色が全体の色バランスを狂わせて違和感を生み出している、最大の要因のような気がします。
実射についての簡単なコメント
長年にわたってプルーフされたメカなので、ブローバックやBB弾の発射に問題はありません。室内の試射ではフラットな弾道で近距離での命中精度も悪くは無いと思います。
室温20°では、速射は厳しいものの装弾数24発を問題なく撃ち切ることができました。初速は0.2g BB弾使用で80m/s前後と、やや高め。ブローバックエンジンの効率が良いのか、マズル側にウェイトを置いたガス調整をしているようです。
最後に(サマリー)
ベレッタM92シリーズの最新モデルということもあって、アメリカ軍の制式から漏れた市販モデルであっても注目度が高かったKSC M9A3でしたが、KSCらしくない詰めの甘さが垣間見えるモデルです。
メカ的な部分はプルーフされているので不満はありませんが、バリエモデルとして重要な見た目部分のカラーリングに問題がある上に、わざわざ新造したパーツ形状にも違いがあるのは残念過ぎます。
フレームのような大型パーツが後加工を加えて上手く流用できているのを考えると、取材不足ということになるんでしょうか。
それでもパーツの問題以外は塗料を替えれば解決するので、次回以降のロットでの「市販カラー」とか名付けた改良版を期待したいところです(ブラックモデルのバリエは、やって欲しくないですけど)。
実銃のベレッタM9A3はオリジナルのコンテナBOXやラップアラウンドタイプのラバーグリップなどの安価なオプションパーツも豊富なので、合わせて揃えたいですね。
KSCが昔のようにオプションとして輸入販売してくれるとトイガン的にも魅力が増すと思うんですけど。
参考資料
月刊Gun Professionals 2016年6月号
BERETTA U.S.A.HP
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