KSC MASADAカービン GBB
レビュー
2015年7月29日に発売された「KSC MASADAカービン GBB」を入手したので紹介します。
実銃がMAGPUL開発で製造販売がブッシュマスター&レミントンと複雑なのと同様に、トイガンでもMAGPUL PTS社、KWA社、PTS社、KSC社がからんでややこしくなっているので、その辺りも推測を踏まえて触れてみます。
実銃についての簡単な説明
MAGPUL社(MAGPUL INDUSTRIES)が2007年4月に発表したのがMASADA(MASADA ADAPTIVE COMBAT WEAPON SYTEM)で、M4の欠点を改善し多様な状況に対応しうる次世代小銃として開発されました。
基本的には既にプルーフされた技術(AR18のガスピストン作動方式、FN SCARのレシーバー構造、H&Kのトリガーアッセンブリー構造など)を参考に手堅く設計されていますが、モジュラー構造を取り入れることで、MAGPUL社得意のアクセサリーをワンタッチで交換することで多目的対応が可能になっています。
翌2008年には、MAGPUL社が銃器の製造設備を持たないため、プロトタイプを製造から関わっていたと思われるブッシュマスター社によってACR(ADAPTIVE COMBAT RIFLE)として再発表されました(この時点でMAGPULはパーツ供給と開発に専念)。
その後、ブッシュマスターと同じ投資会社の傘下にあるレミントン社が開発に加わり、2010年4月にミリタリー用はレミントン社、一般市場向けはブッシュマスター社からそれぞれ発売されています。
発売後5年が経ちますが、高価格とバレル交換システムなどによる重量増によって,売上自体は著しくないようで、レミントン社がバレル交換システムや、ストックの折りたたみを廃止した軽量化モデルも追加しているようです。
KSC MASADA カービン について
実銃においてはACRとして量産化されたMASADAですが(MASADAがユダヤ戦争時の要塞名だった事から名称変更されたと言われています)、KSCのモデルはMAGPUL社時代の最終モデル(2007年のブッシュマスターACRもほぼこの形状)の14.5インチバレルを組み込んだ物をモデルアップしています。
余談ですが、このMASADAカービンは、海外ではPTS社から販売されていて製造はKWA社ということです。これを国内で販売しているのがKSCということになります(設計にKSCが関わっているかは不明です)。
PTS社とMAGPUL社との関係は、2013年にMAGPUL PTS社が解散した以降は資本関係の無い別会社なので、現在はMAGPUL社とのライセンス関係も無いようです。
したがってMAGPUL社のオフィシャルライセンスモデルではなく、PTS社のトイガン・MASADAモデルとして、国内販売のライセンスを得ていると考えるべきなんでしょうね。
パッケージはPTS社ロゴが大きく入ったもので,KSCロゴはシール対応となっています。海外仕様のパッケージそのままですね。当然MAGPULロゴは入っていません。
パッケージ内は本体、マガジン、取説、ローダー他が入っていますが、緩衝材の発泡スチロールの型が微妙に本体と合っていないので、緩衝材自体も海外で作られたもののような気がします。
もしかすると本体ごとこの状態で輸入して、国内で取説だけ入れて販売している可能性もありますね。
ざっと本体を見てみると、フロントサイト部分まであるアッパーレシーバーはアルミ製で、本体の剛性はかなり高く感じられます。
ロアーレシーバーは樹脂製で、H&K G36シリーズ等と同様グリップと一体となっています。同じ要求仕様に従っているにしてもFN社のSCARと非常によく似ています。
ストックは樹脂製のフォールディングタイプでパーツ自体もSCARストックとよく似ています。本体に見える4本のピンを抜けば、ハンドガード、ストック、アッパーレシーバー、ロアーレシーバーの4つのアッセンブリーに分解できます。
アッパーフレーム刻印は「MODEL−MASADA CAL−MULTI」と入っていますが、旧MAGPUL−PTS時代の電動ガンのアッパーフレーム(同じ型だと思っていますが)に入っていた「MAGPUL-MIRITALY INDUSTORIES ERIE CO」の刻印は無くなっています。
マガジンキャッチ、ボルトキャッチ、セレクターレバーはそれぞれアンビ仕様になっていますが、M4系の操作に慣れているとボルトキャッチの位置は戸惑います。
セレクターレバーは各位置できちんと止まってくれるので気持ちが良いです。WEのACRでは、セミオート時にレバーが真っ直ぐにならなかったので尚更です。
このセレクターは、実銃でもトイガンでも使い易いという評価ですが、個人的にはグリップを握った手で回すことができないので正直使いにくいです。レバー自体がが短すぎると思うんですけど。
後期型MASADAの特徴の一つが、前方に移ったチャージングハンドル。確かに上面レイルに光学機器を付けても干渉しづらくなくなっています。
ハンドガード付け根にある丸いパーツはクイック・デタッチャブル・スリング・カプラーで、市販のトイガン用スリング・スイベルを取り付けられます。ハンドガード後部の位置を固定を兼ねているところが良いですね。
上面レイルの凹部をピン等で押し込むことでチャージングハンドルを外して、左右に付け替えることが可能。ハンドルの向きも下向きから上向きに変更することが出来ます。
ちなみにチャージングハンドルは前進位置ではボルトの動きと連動しませんが、それ以外の位置では連動するので、実銃どおりボルトを強制前進させることが可能になっています。
MASADAだけの特徴がレイル一体型のフロントサイト。光学サイト使用時は倒すことでレイル面とフラットになるこだわりの設計。ACRとして製品化された時点では廃止されMBUS等の補助サイトを取り付けるようになっています。
リアサイトはMAGPUL−PTS社製のMBUS2。MAGPUL社と切れたはずのPTS社が未だにこれを供給できるのか不思議。
PTS社設立時にMAGPUL社と在庫製品について何らかの取り決めがあるんでしょうけどね(単品での販売は不可で、製品に付随するパーツとしては可とか)。
フラッシュハイダーはM4タイプのバードゲージ型。ACRではサプレッサー装着可能なAAC製の方が有名ですね。ガスレギュレーターの形状も2007年から2008年にブッシュマスターACRになった初期の頃までの形状のようです。
フォールディングタイプストックは長さを6段階に調節可能でチークピースが稼動。可動部分が多いにもかかわらずガタが殆ど無いのは資金のトイガンの精度の高さですね。
ストック内側には実銃同様コンパートメントスペースがあります。個人的に気になるのはストックロック部分の強度。特にロックが入るストック基部が破損しそうで怖いんですが、こればかりは使い続けてみないと分からないですね。
グリップ内部にも実銃同様コンパートメントが再現されてあります。トイガンではここに電池を入れることもありませんが、再現されている方が嬉しいのは確か。これがコストアップに繋がってはいるんですけどね。
WEのACRでは断面が丸すぎて違和感を憶えていたグリップは、通常の平べったい形状になっていて一安心。ガスブロでグリップが電動ガン仕様の太いものだと興ざめします。
アッパーフレーム右側はPTSマークがプリントで入れられていますが、電動ガンは刻印だったので少々安っぽく見えます。KSCシールの下は連番のシリアルNOになっています。
実銃(ACR)と同じく、ボルト側面には「MULTI-CAL」の文字が入っていますが、実銃の段がある形状と異なりフラットで、後方にあるピン状のファイアリングピン リテイナーも省略されているので、ノッペリした感じになっているのは残念。
KSCマークはM4シリーズと同じくエジェクションポートの内側。目立たなくいけど印象に残るので良い位置だと思います。フレームのPTSロゴがプリントで小さめになっているのは、国内ではKSCブランドで販売する事への配慮かな。
マガジンは新しいEPMタイプマガジンが付属します。これはMAGPULとの関係が切れたPTS社オリジナルデザインのマガジンで、MAGPUL社のEMAG(EXPORT MAGAZINE)をベースにしていると思われます。
重量は約727gと、KSCのPMAGより25g程軽量化されていますが、KSCのM4オリジナルマガジンは約590gなので、かなり重い仕様です。
このEPMマガジンはPMAG、M4オリジナルマガジンと互換性があるとされていますが、EPM>PMAG>M4オリジナルの順に微妙に太くなっているので、MASADAで使う分には3マガジンに互換性があります。
MAGPULフレームではEPMがキツいので、残り2つが互換。M4フレームではEPM、PMAGはキツいのでM4オリジナルだけ互換かな。勿論無理すれば3つとも使えますけど。
次は簡単に分解して内部を見ていきます
MASADAの一番の特徴であるクイックバレル交換システムは、工具を使わず簡単にバレル交換が行えます。トイガンの場合もワンタッチでインナーバレルを含めてバレルアッセンブリーの取り外しが出来ます。
最初にピボットピンを外してハンドガードを前方に抜き去るとバレル基部に着いたU字型のバレルバレルナットハンドルが表れます。
これを時計方向に90度ほど回すと、バレル基部とのロックが外れて、バレル全体を前方に抜き出せます。
バレル基部とレシーバー基部には溝が刻まれていて回転して咬み合うようになっています。実銃ではこの部分を強度的な問題でスチール製としたため、重量増になったといわれています。
トイガンのギミック的に非常に楽しめるバレル交換システムですが、バレル長の異なる予備バレルがオプションに無いという根本的な問題以外に、若干気になる点がありますがあります。
一つはバレルの向きを決めるバレルピンというパーツが、バレル基部の穴に緩く入っているだけなので、逆さにすると簡単に落ちてしまう点です。
バレル交換時に落とす可能性が大なので、ロックタイトなどで固定する必要があります。
もう一つはバレルアッセンブリーを一回外した後、どうやってもバレルを定位置(バレルナットハンドルが真下にくるまで)まで回せません。バレル交換システムを試す前がどのようだったかを正確に憶えていませんが、画像のような状態では無かったと思います。
実際の機能に影響がないのでそのままですが、近いうちによく調べて再調整してみます。
ハンドガード、バレルを外した後は、フレームにある3本のピボットピンを外すだけで,ここまで分解できます。モジュラー構造というだけのことはありますが、実際のメンテはレシーバーからボルトを外すぐらいまでで良いでしょう。
ロアーレシーバーとストックはピボットピンを抜いた後にストックを上方に抜くだけで外せる簡単構造。かなりタイトに取り付けてあるので、この部分のガタは皆無です。
マガジン内のBB弾数がゼロになるとボルトストップが作動しますが、M4シリーズのようにボルトを片側保持するのとは異なり、MASADAの場合は面全体でボルトを受ける形式です。
そのためボルトの削れ防止策として、ボルトの前面にスチールプレートが取り付けられています。
アッパーレシーバーは厚めのアルミ合金製で、恐らく一体型。剛性感はかなりあります。内部には実銃に似たボルトキャリアーガイドのスチールプレートが組み込まれていますが、フレームと同色なので目立ちません。
ボルトの形状は実銃のボルトにかなり似せていますが、上部には摩擦軽減のためにローラーが組み込まれています。また軽量化の穴も開けられていて重量も約210gに押さえられています。3作目のGBBだけあって、かなり作動に気を配っているようです。
実射についての簡単なコメント
箱出しのまま撃ってみると、KSCのM4シリーズに比べてボルトが軽いので、セミオート時の作動感にキレがあります。フルオート時の発射サイクルもかなり高めで、夏場なら1マガジンを1トリガーで撃ち切ることも容易です。
発射サイクルが高めのためかBB弾をチャンバーに2弾同時に送って縦に詰まるジャムが何度かありましたが、それ以外は特に気になるところはありませんでした。室内だけの試射ですが、フラットな弾道で近距離では狙ったところに弾がいく感じです。遠距離での命中精度も期待できそうです。
初速は平均78m/sとKSCとしては若干低め。もしかすると作動重視のセッティングかもしれません。
室温24℃ 東京マルイ0.2gBB弾・HFC134a使用時
▼KSC MASADA カービンの実射動画はこちら▼
最後に(サマリー)
国内メーカーの長ものGBBは、このMASADAがM4、AKシリーズに続く3機種目で待望の新機種となります。最もフルオートができる長ものGBBを出しているメーカーがKSCとWAしかないので、驚くべき事ではないかもしれません。最近の海外メーカーの勢いに比べると国内メーカーは停滞してますね(2015年9月の段階でマルイのM4GBBは未だ発売されていません)。
実銃のMASADA(ACR)は既に最新モデルというわけでもなく、ACRとして市販されてから5年も経っているので最新モデルでも無くなっています。
それを補うように、実銃では過剰とされるバレル交換システムや、オミットされたレイル一体型のフロントサイト等トイガンとしては魅力的なギミック満載。何よりも当初のMAGPULブランドのイメージがあるので、個人的には大変気に入ったモデルです。
今後バレル交換システムを生かした予備バレルのオプションや、レイルシステム、固定ストック等のアクセサリーが発売されれば、かなり面白くなりそうです。KSCに余力があるかは微妙ですが、海外のサードパーティがPTS社用に作れば可能性はありそうです。
国内メーカー製(KSC製品はどこまで国内で見ているか分かりませんが)のGBBは「フロン作動する」「マガジンのガス漏れがない」「パーツ供給が滞らない」という安心感があるので、さらに頑張って欲しいものです。
参考資料
月刊GUN誌 2007年4月号
月刊GUN誌 2008年5月号
月刊GUN誌 2010年4月号・10月号
KSC MASADA 取説
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