KSC STI VIP3.9 イグゾースト スライドHW

レビュー

KSCのSTIシリーズは1998年リリースされた息の長いモデルです。2011年にシステム7化され、シリンダーのボアアップとBLKメカの単純化による作動性の向上と、2点支持HOPアップチャンバー採用による命中精度のアップ。スライドストップノッチの金属片埋め込みによる変形防止など、ニューモデルと言うほどに生まれ変わりました。

その後、バリエーションモデルが続けて発売されましたが、2014年に「VIP3.9」の発売以降は音沙汰無しに。2017年末に突然限定発売されたのが「KSC STI VIP3.9 イグゾースト スライドHW」KSCオリジナルデザインのモデルです。

実銃では既に「VIP」シリーズはカタログ落ちをしていて、ベーシックなキャリータイプは「GUARDIAN DS」のみとなっています。

スライドの軽量化ポートの形状から、恐らくKSCがデザインベースとしたのは「DVC CARRY」と思われます。ゴールドのコーンバレルも同じですが、グリップのテクスチャーやスライドのセレーションが全く異なります。


△STI DVC CARRY(画像 STI HPより転載)

今回の「KSC STI VIP3.9 イグゾースト スライドHW」は想像するに、余った「VIP3.9」のスライドを原稿カスタムモデル風に加工して組み上げたもののように思えます。

そう考えれば不自然な限定販売という販売方法も理解できますけど、もしそうならSTIシリーズはしばらく再生産しないって事にもなりますね。

KSC STI VIP3.9 イグゾースト スライドHWについて

パッケージはあたりませですが、システム7以降のSTIシリーズと共通です。印刷自体は1C印刷なのでコストを抑えていますが、光沢紙を使っているのでデザイン的にもチープ感が無いのが良いですね。

「VIP 3.9 イクゾースト」の識別はパッケージ横のシールのみです。KSCのバリエモデルによく見られる処理ですが、昔の限定モデルに貼られていた、KSC得意の限定シールは残念ながらありません。

パッケージ内はこのような感じです。6インチスライドの収納まで考慮されたサイズなので、3.9インチではさすがに空きが目立ちます。付属品は取説、HOPアップアジャストツール、BB弾のみです。

最初に外見から見ていきます

スライド左側にはベースとなった「V.I.P. 3.9」の刻印と、後から入れられた「EXHAUST(排気)」の刻印が入っています。スライドの軽量化ポートの形状は、モデルとなった実銃の「DVC CARRY」そのものです。

ポートから覗くゴールドのコーンバレルが良いアクセントになっています。またフレームのトリガーガードの丸印の内側部分が後加工によって広げられ、グラブ等をしでも使用しやすくなっています。

スライドを引くと大口径のコーンバレルが姿を現しますが、バレルがチルトアップしないのが残念なところです。もっとも実際にバレルが上を向いても僅かなものなので、作動を優先させれば省略もアリでしょう。

フレームサイド部分にはわざわざ加工跡を残していますが、確かに後加工した部分なのでしょうが多少大げさに見えます。

フレーム下側ダストカバー部には「STI INTERNATIONAL GEORGETOWN.TX USA」の社名・所在地刻印が入っています。

スライド右側には「STI」のロゴマークが入っています。軽量化ポートが2つなのは、このロゴがこの位置にあるからですね。

フレームのXVから始まるシリアルナンバー(画像では一部隠していますが)はトイガンとしての個別シリアルナンバーになっています。この辺りはKSCならではのこだわりですね。

セフティは「VIP3.9」と同じシングルセフティ。コンシールド性を考えれば妥当なチョイスでしょう。ゴールドメッキハンマーとのコントラストを意識したのか、グリップセフティはシルバーメッキ仕様になっています。

リアサイトはヘイニータイプで刻印もしっかり「HEINIE」と入っています。サイトを取り外して別売マウントを取り付ければ、ミニドットサイトをスライドに直接乗せられる発展性のある仕様です。

グリップは98年のシリーズ発売時から、実銃の「STI」社からの供給とされています。STI社との独占契約が終了した跡も供給は続いているようです。他社よりもグリップ周りが細く感じるのはこれが実物サイズだからなのでしょう。

△ 左:エントリーA1、右:VIP3.9イクゾースト

グリップはノーマルサイズのものを、後から切断してコンパクトサイズ用を作っているようです。9mm程度の短縮ですが、実サイズ以上に小さく感じます。

グリップを底面から見ると、メインSPハウジング共々後からカットされた後が窺えます。この辺の加工跡はきれいに消して欲しいところです。

次に簡単に分解して内部を見てみます

分解はガバメントと同様、スライドを引いてノッチに合わせてスライドストップレバーを抜けば、スライド&バレルを前方に引く抜けます。

後は、リコイルスプリングユニット外して、バレルを前方に引き抜けば終了です。日常のメンテレベルの分解はここまでで充分です。

分解時にリコイルスプリングユニットを外す際にプラグごと抜く必要がありますが、その際リコイルスプリングガイドの穴に、画像のようなL地型の針金を差し込んでスプリングを圧縮した状態で外すと外しやすくなります。

ゴールドのバレルはメッキではなく塗装仕上げのようです。今のところダメージはありませんが、塗装被膜の耐久性が気になります。

スライドストップノッチには従来のSTIシリーズ同様スチール板によるノッチ削れ対策がなされています。

この方式は問題があって、そのまま使用しているとスチール板の外側が削れて、ノッチ周りが膨らんできます(画像はエントリーA1)。

対策として、スライドストップレバーのスライドノッチにかかる部分の外側(スライドの樹脂部分に触れるところ)を削って、スチール板の補強部分にだけかかるようにします。

スライドストップがかかった状態で若干隙間が出来るぐらいが目安です。さらに、このままだとダイレクトにスチール板に衝撃が加わってノッチ周りが膨らむ可能性があるので、スチール板がはめ込まれているスライドの溝に瞬間接着剤を流し込んでスチール板の固定を確実なものとします。

この加工は、まだ長期間使用して効果を確認できていないので、あくまで精神的に安心するための加工と割り切ってください。スライドに補強のスチール板を入れる際の構造的な問題なので、なるべくホールドオープンさせないのが一番の対策なのは変わりありません。

△ 上:エントリーA1用マガジン、下:VIP3.9イクゾースト用マガジン

マガジンはグリップに合わせてショート化されています。弾数は2発マイナスの24発となっていますが、このサイズなら充分ですね。

マガジンフォロアーは一番下まで下げると、フォロアーのロックができるKSC独自の構造です。この形式でマルイのようにレイルの下側から給弾出来れば最高に使いやすくなるんですけど、この辺りは全然改良されないですね。

試射後の簡単なコメント

室内の試射だけですが、冬場にもかかわらず1マガジン24発発射後、問題なくスライドオープンすることができます。スライドがHWになっても作動性は問題ありません。弾道はフラットな感じで、集弾性も悪くなさそうです。

初速は66m/s前後で、KSCのガスガンとしては低めです。もう少し気温が上がれば高くなる可能性はありますね。(室温20℃、東京マルイ0.2gBB弾使用)

試射動画については後ほどUPする予定です。

サマリー(最後に)

久しぶりのSTIバリエーションで、しかも限定モデル。かつての「シューマッハ イグゾースト」を彷彿させるデザインということもあって、かなり惹かれたモデルでした。

時委細に手にしてみると、限定モデルらしくスライドの加工も良い感じなのですが、VIPモデルが既にカタログ落ちしていたのが残念ですね。最近の実銃はモデルチェンジが早いので、メーカーとしては対応し辛い部分でしょうけど、最新モデルに準じて欲しかったところです。

また、スライドがHW素材に変更されても、問題のあったスライドのノッチ削れ対策もそのままだったのが気になりました。見えない部分で改良れていれば良いんですけど。

その2点以外はプルーフされたメカと言うこともあって、安心して楽しめるトイガンに仕上がっていますが、オリジナルの「VIP3.9」を持っている人にとっては、新鮮味が無いのは確かでしょうね。

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